ホワイトカラーよりブルーカラーが重視される社会へ…アメリカで起きている変化は日本でも起こるのか?

2025.12.04 Wedge ONLINE

 2022年11月に対話型AI(人工知能)サービスのChatGPT(チャットGPT)が、一般向けのサービスを開始した。当初は高校生や大学生が、宿題を自分でやらずにAIに依存するのが問題だとか、主として教育の分野に影響が広がった。

 その後、23年後半からはビジネスの世界でのAIの利用が爆発的に広がっている。多くのコンサルタントが企業におけるAIの導入をサポートし始めており、Z世代など若者層の間には「仕事をAIに奪われる」という不安感が広がった。

AIなどの技術の浸透で求められる仕事は変わりつつある(bernardbodo/gettyimages)

 24年のトランプ大統領の再選、25年のニューヨーク市長選における左派候補マムダニ氏の当選には、このような若者の将来不安が要因の一つとなったと言われている。そんなアメリカでは、25年5月に大学を卒業した世代が厳しい就職難に直面している。

 景気悪化の兆候が少ないのに雇用統計だけが低迷しているのも、AIの影響だという見方が多い。そんな中で、アマゾンは人間の仕事をロボットやAIに転換する大規模なリストラを開始して社会に衝撃が走った。

アメリカで起きている「逆転」現象

 そんな中で、アメリカでは従来型のホワイトカラーの雇用には将来はなく、むしろブルーカラーの方が可能性はあるという、「逆転」現象が進んでいるという議論がある。

 まず、アメリカにおけるホワイトカラーというのは、つい数年前までは「勝ち組」であった。例えば、コンピューター・サイエンスを大学で学んだ初級のプログラマーは、GAFAMなどの大手テック企業から高給で雇われていた。また、ファイナンスを学んだ若者はファイナンシャル・プランナー(FP)や、公認会計士(CPA)の見習いから実務のキャリアをスタートするケースが多かった。また、法務の関係では仮に弁護士資格(バー・サーティフィケイト)を得る前であっても、パラリーガル(法務助手職)という職種に就くケースもあった。

 けれども、現在はこの種の「エントリー(初級)」レベルの知的労働へのニーズは冷え込んでいる。AIを駆使することで、プログラミングも初級のFPやパラリーガルの職も、新規雇用をせずに効率よく進めることができるようになったからだ。そんな中で、これからのアメリカではホワイトカラーには将来はなく、むしろ現場労働であるブルーカラーの方が稼げるという言い方が広まっている。

 具体的に注目されているのは、工場労働、配管工、電気工事士、建築士などの職種である。例えばテスラがパナソニックとの協業で展開している電気自動車(EV)用の巨大な電池プラントなど、新世代のハイテク工場では自動化が進んで、要員数は非常に少なくなっている。けれども、数は少なくても人間の仕事はかなり高度であり、自動化された生産ラインにおける「トラブルシューティング」がその主要な職務となる。

 製造機械のオペレーションマニュアルを深く理解したうえで、不良品が発生したりエラーメッセージが出たりした場合に、その問題解決を図る仕事だ。場合によっては、電池の背後にある物理学や化学の理解や、外部の専門家とのディスカッションを通じて解決策を探るなど、理系大卒のレベルが要求される。

 配管工や電気工事士にしても、このようなハイテク工場向けのものであれば、使用する水や空気に異物の混入が許されないなど、工事の精度や使用する配管や電線に高品質のものが求められる。施工の水準は高く、納期は厳しい一方で、そうした要求を満たすレベルの仕事には高報酬が期待できる。建築士にしても、環境基準への適合や、木材など自然素材の高度利用など高付加価値の仕事への評価は高い。