部下がシラける「面倒見がよい」だけの二流リーダー

2016.12.21 公式 mybookfactory

「信用」と「結果」がなければ部下からの信頼はない

リーダーとは、人を動かし結果を出す人である。自分ひとりで何でもやってしまう人は、周りにとっては便利な人であるが、リーダーとしては失格、ビジネスパーソンとしても二流の人といえる。自分で何でもできる人というのは、有能ではあるかもしれない。しかし、こういう人がビジネスパーソンとして二流なのは、次の原理原則をわかっていないからだ。

仕事はチームでやるものである。そもそもひとりでやるのであれば、会社も組織も必要ない。
では、人を動かすために必要なものは何か。複数社の外資系トップを歴任した新将命氏の著書『他人力のリーダーシップ論』によれば、それは尊敬と信用、それに信頼であるという。尊敬と信用とは、その人の人格や人柄が尊敬できる、信用できるということである。信頼とは、その人の言動、仕事が信頼できるということだ。尊敬と信用はその人の現状に対して、信頼はその人の結果に対して抱くということになる。

自分ひとりで何でもやってしまう人は、自分だけを信じ、周りを信用していないため、周囲からも信用されることはない。信用のないリーダーには、人はついて行かないので、チームとしての結果が出ない。結果を出せないリーダーは、実績がないから信頼も薄いものとなる。よって、何でも自分ひとりでやってしまう人は、リーダーとして失格なのである。

一方、自分を犠牲にして周囲を助ける人は有徳の人だといってよい。こういう人は尊敬され、信用される。人々にも慕われるだろう。有徳の人は、利他の人である。しかし、大事なのは利己と利他の両立だ。自分の利益を顧みない、利己のない人は実績に乏しい。ビジネスとは結果である。実績のないビジネスパーソンは、どんなに有徳の人であったとしても、やはり信頼されることはない。高く尊敬され、篤く信用された人であっても、信頼のないリーダーの後ろには、だれも安心してついて行くことができないのである。人を動かすためには、人の面倒ばかり見ていてもダメなのだ。まず自ら身を立てた後、周囲の面倒を見るというのが順序なのである。

忍耐力のないリーダーが二流な理由

日露戦争のとき、陸軍の現地トップは大山巌だった。当時の日本陸軍には、大山巌と山県有朋という二大巨頭がいたのだが、実質、現地の実戦部隊を率いる参謀長である児玉源太郎は、山県は何かと口出しをしてくるのでやりづらい、茫洋として口出しをしない大山がよいということで、そのように働きかけた。事実、大山は砲弾の飛び交う戦場のただ中にあっても「今日はどこかで戦がおわすか」と、まったく児玉たちの仕事には介入してこなかった。

しかし、日露戦争後の対談で、大山はその時のことを振り返り、言いたいことは山ほどあり、のど元まで上がってきていたのだが、辛抱して飲み込んでいたのだと述懐している。戦況よりも、むしろ、言いたいことを我慢することのほうが大変だったらしい。

英国海軍では、「船長は血が出るまで唇をかむ」という格言がある。部下の士官たちのやっていることを黙って見ているのは、血が出るまで唇をかむほどの忍耐が求められるということだ。
一流のリーダーになるためのワンピースとは、忍耐力であると言ってもよい。試みに部下に仕事を任せてみたとしても、その進捗が気にならないリーダーはいないだろう。部下を案じる親心から気をもむ人もいれば、部下が失敗したらそのリカバリーを自分がしなければならないと気が気でない人もいるはずだ。

大山のように国の興廃をかけた戦争で、黙って部下のやることを見ていることのできる胆力(たんりょく)の持ち主はそうはいない。しかし、リーダーがことあるごとに口出しをしていては、部下の士気が粗相する。部下の意欲が低くなれば、自ずと結果も悪くなる。人を動かして結果を出すためには、動く人が嫌々ではなく、自ら進んで動く、よろこんで動くことが必要だ。先ほど紹介した新将命氏の著書『他人力のリーダーシップ論』では、これを「イヤイヤ感ではなく、ヤリタイ感のある仕事」といっている。

人は、命令で動くことより、自分の意思で動くことによろこびを覚える。部下の意思を尊重するとは、任せるということである。部下に任せるというのは、部下に最高のパフォーマンスを発揮してもらうためのマネージメントであり、それを実行するのがリーダーシップなのである。
リーダー自らが孤軍奮闘していては、たいした結果は得られない。チームの力を発揮させるためには、思い切って任せることが大事なのである。

大山巌も、英国海軍の船長も、この大原則を守って、最善の結果を求めるべく自らに我慢を強いたのだ。リーダーの忍耐力は、人を動かし、チームに最善の結果をもたらすだけではない。
一流のリーダーは、部下を育てることも一流でなければならない。

ちなみに外資系では、リーダーの評価は仕事ができて50点、部下を育てることができて50点という。仕事ができるだけのリーダーでは、合格点には届かないのである。つまり、部下を育てられないリーダーは二流ということだ。新将命氏の著書『他人力のリーダーシップ論』では、部下を育てるには仕事を任せることが一番だとある。仕事を任せるうえで最も肝心なことは、先述したとおりリーダーの忍耐力なのである。