ポケモンGOの世界観は「任天堂らしさ」の塊だ

「とてもムリ」だからいい。自分だけじゃムリだからみんなが集まってきて勝てる
わたくし、TKO木本武宏が、複雑な現代の世の中についてその道のエキスパートに教えを乞う対談。第6タームは、瀧本哲史さんにお越し頂きました。京都大学で「意思決定論」や「起業論」の授業を行うなど、日本のこれからを担う若者たちの教育に携わりながら、個人投資家として将来性のある企業への投資活動もしている瀧本先生。三回目は、世界中を巻き込んだ大ヒットになった「ポケモンGO」が世界をどうやって変えていくのかを伺いました。
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木本:世界的大ヒット「ポケモンGO」について伺います。今、この時代に「ポケモン」という言葉に老若男女が夢中になるとは想像もできませんでした。瀧本先生は2011年に書かれたご著書(僕は君たちに武器を配りたい)で、任天堂は復活すると書かれていますが、なぜそう思われたんでしょうか?

原点はつねに「ファミリー」

瀧本:そういう体質の会社だからです。過去に何回もピンチがありました。彼らは最先端は得意じゃないけれど、枯れた技術、みんなが使うようになった技術を面白く使うのは得意です。

たとえば加速度センサーというのは昔からありましたが、「Wii」で初めて使いました。先行する動き系のゲーム、「ダンスダンスレボリューション」などが流行っていて、「いまさら、任天堂って遅いね」とバカにされていても、「誰もが使えるようになったから」と出すのです。

木本:最新技術で「どうだ!」ではなく、みんなが使えるのを待って出すと。

ARの時代が来るといわれてから数年経ちますが、「拡張現実というのはこういうことだったのか」と、「ポケモンGO」を始めてみて理解したという人も多かったと思います。

瀧本:大きな会社だからできることでもあるんですが、ARという言葉を聞いたことがない人も使えるものを出す。そこが任天堂なんです。

「ポケモンGO」は2013年にリリースされた「イングレス」というゲームがベースです。これまではマニアしかやらないアプリで、「こういうのもあるよねえ」と上から目線でみんながバカにしていたゲーム。昔からあったポケモンと、新しいイングレスが組み合わさって、本当に新しいモノができたわけです。

木本:瀧本先生が再三おっしゃっている、「みんなが使い方わからないもの」を現実のものにして、ヒットしたと。

瀧本 哲史(たきもと てつふみ)/京都大学産官学連携本部イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門客員准教授。東京大学法学部卒業、同大学院法学政治学科研究科助手を経て、マッキンゼー&カンパニー勤務。独立後、エンジェル投資家として活動しながら、京都大学で教鞭をとる。著書に『僕は君たちに武器を配りたい』『君に友だちはいらない』『武器としての決断思考』『武器としての交渉思考』『ミライの授業』などがある

瀧本:任天堂が偉いのは、ゲームをシンプルに戻そうという意図があったこと。ゲームが複雑になって、それぞれの部屋に引きこもってやるようになった。ファミリーコンピュータでスタートしたのに、おじいさんやおばあさんができるゲームが無くなった深い反省を込めて、ファミリーでやるWiiを出した。もう一回、お茶の間にみんなが集まる「鍋のようなゲーム」というのだけ決まっていて、ほかは何も決まっていなかった。

たぶん「ポケモンGO」を開発した背景には「ゲームばかりやって、外に行かない引きこもりを増やしている」という批判があったと思うんです。そこで「外遊びに行くゲーム」を作ろうと。

任天堂は、おそらくそういう発想をする人たち集団。京都の会社ですが、わりと真面目なんです。「昔の子どもたちの外遊び」が理想で、その世界とずれるのはよくないと考えている。

木本:ヒットするものとか、大きくなる事業は、「お金を稼ぎたいから」「会社を大きくしたいから」がスタートになることは少ないんでしょうか。