就活「人材サービス会社頼りきり」が危険な理由

エージェント会社は、いくら学生と接点をもって仲良くなって、親身になって就活の支援をしても、自分たちが紹介した先の企業への入社承諾がなければ、すべての労力が無駄になってしまうのです。

エージェント会社で働く人たちからもよく話を聞くのですが、すごく親身になって相談にのって支援した結果、その支援をしたことで力を得た学生が、自分たちが紹介した先とはまったく関係ない企業に入社を決め、「とてもお世話になりました。いい就活ができたのは、〇〇さんのおかげです」という言葉をかけられたりするときは、とても心境が複雑だと言います。

いいことができたと思う反面、会社で働くビジネスパーソンとしては、結果を出せていないことになります。よくあることながら、その葛藤に慣れることはないと言います。

そのように悩んでいるような良心的なエージェント会社の担当がついた学生にとっては、悪くない就活ができると思います。しかし、中には、ビジネスパーソンとしての結果にこだわりすぎるあまりに、紹介した企業に入社承諾をさせようと、「積極的に介入」するエージェント会社の担当者もいます。

わかりやすい誘導をしてしまったら、さすがに学生もわかって、「逆にこの人信用できないな」と、警戒されてしまいます。だから「君には、この会社があっていると思うよ!」と直球で言う担当者はそれほどいません。

学生と相談に乗る中で、ふとした言葉をしっかり拾い、例えば「確か△△さんは、前に、成長したいみたいなこと言ってたよね。それって、どういったところだったら実現できるんだろう」というように、まるで学生自身の考えを整理させるかのように誘導していくことがあるのです。

つまり、エージェント会社が「行かせたい企業(=クライアント企業)」の特徴を捉えて、その特徴にあった学生の発言を拾い、学生が自らそのエージェント会社が行かせたい企業を意識するように誘導しているのです。

例えば、厳しいノルマがあり、日々数字に追いかけられるような環境がある企業に入社させたいと考えていれば、学生の「成長したい」という言葉をキーにします。

一方、自由な風土が売りの企業に入社させたいのであれば、学生の「自分らしく」という言葉をキーにします。

そして、仕事そのものには大した魅力はないけど、職場仲間との関係性に強みを持つ企業であれば、学生の「仲間を大事に」と言う言葉をキーにします。

学生自らが考えたように促していく

エージェント会社は、紹介先企業とは当然しっかり打ち合わせをしているので、その企業が何をアピールして、どんな学生を獲得しようとしているかはわかりきっています。ですから、その企業と学生のマッチしている部分を切りとることは、たやすくできるはずです。

ただ、そのことを紹介会社が直接学生に言うのではなく、「学生に自ら気づき、考えたように促す」というのが、エージェント会社の担当者の属人的なスキルになるのです。

このやり方が絶対悪いという訳ではなく、このことで自身の考え、気持ちが本当に整理できる効果もあるとは思うので完全否定はしません。しかし、悪質だなと思うのは、迷っている学生に対して、その発言、考え、想いの一部分だけを切り取って、誘導しようとする場合です。

もし本当に考え、想いを整理させるのであれば、今ある考え、想いをすべて並べ、その中で学生本人が優先順位をつけ、それらが実現できる会社がどこか、改めて学生に考えてもらうことのほうが効果的だと思われます。しかし、そこに第三者が一方的にある部分を切り取って、さもそれが重要事項かのように意識させ誘導していくことは、どうなのか?と思ってしまうのです。

就職するにあたり自分にとって何が大切なことなのか、冷静に考えられる学生は、そんな誘導も見抜くことができるかもしれません。しかし、とてもまじめで、いろいろな企業の話を熱心によく聞いて調べるような学生は、どこもよく見えて決めきれずに悩んで、自分の優先事項や本当に大事にしたい軸もぶれることがあります。