コロナ直撃が深刻な「エンタメ」に希望はあるか

前述したように人々の在宅率が高いうえに、行動を制限されてストレスがたまりがちなだけに、無観客開催は既存ファンへのサービスにとどまらず、ファン層拡大のチャンス。中止や延期ではなく無観客でも開催したことを評価されやすいうえに、休校の子どもやテレワーク中の大人に見てもらいやすい状況とも言えます。

また、無観客開催は普段の華やかさがない一方、静寂の中で集中力が問われ、プロフェッショナルならではの凄さや技を見せるチャンス。選手やアーティストの声や息遣いを聞くこともできるなど、さまざまな魅力を伝えられるチャンスです。

その意味で重要性が増しているのは、オンラインでの配信。例えば、これまでライブ配信を行ったことのないアーティストはチャレンジするいい機会であり、各スポーツ団体も有料配信での収益化を軌道に乗せるきっかけになるかもしれません。「無観客のオンライン配信だからグッズが売れない」という物販の心配はなく、むしろチケット販売、会場整理、警備・清掃スタッフの費用をカットできるなどのメリットもあり、すべては主催者の戦略次第でしょう。

のちに、「今思えば2020年は、会場イベントとネット配信の両輪でやっていくうえでのターニングポイントだった」と思えればいいのです。

現在はロミオとジュリエットの状態

心理学の中に「障害があったほうが、それを乗り越えようという気持ちが高まる」という意味の“ロミオとジュリエット効果”と言われる法則があります。現在のエンタメ界とそれぞれのファンは、まさにこのロミオとジュリエット。「見せたいものを見せられない」「見たいものを見られない」という両者がその障害を乗り越えたとき、強固な信頼関係が育まれていることに気づくでしょう。

エンターテインメントを発信する側はあふれんばかりのエネルギーを発揮し、受け取る側は高まったニーズを満たすべく心の底から楽しむ。とかく「エンターテインメントの楽しみ方がヘタ」と言われがちな日本人が心身を解放して楽しめるように変わっていく、きっかけになるかもしれないのです。

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3月10日、安倍晋三首相は大規模なイベントの自粛について、「今後10日間程度は継続するようにお願いしたい」とコメントしました。政府から「10日間程度の継続」というあいまいな方針が示されているように、エンターテインメントの現場でも手探り状態の対応が続くばかりで、まだまだ明るい兆しは見えていません。

しかし、あなたが賢明なビジネスパーソンなら、そんな政府やエンタメ界に不満をぶつけるのではなく、「無観客開催や過去の映像を楽しみながら来たる希望の日を待つ」というスタンスを取れるのではないでしょうか。