オフィスレス会社の進化形は「社員レス会社」だ

コロナ禍が長引くにつれ、固定費削減を目的にオフィスを解約・縮小する企業が増えている(写真:Greyscale/PIXTA)

リモートワークを前提とした働き方の変化が、会社の経営や組織づくりにも大きな影響をおよぼしている。以前からシェアリングエコノミーの流れはあったが、会社経営についても「持つ」ことが以前ほど重要ではない時代が来ているのかもしれない。

これを読んでいる人の中にも家でリモートワークをしている人は多いと思う。そうした方は新型コロナウイルスの感染拡大以降、どれくらいオフィスに出社しただろうか。たまに出社するだけだったり、中にはもう4カ月は出社していない人もいるかもしれない。

コロナ禍を契機にオフィスを解約

そんな中、経営者の立場からどうしてももったいないと感じてしまうのが「オフィス賃料」だ。まったく使っていないという場合もあれば、一部メンバーは出社しているものの床面積すべては使っていないという会社もあるのではないだろうか。

とあるインターネット大手ベンチャー企業は、港区の著名なオフィスビルに複数フロア借りているが、もう年内は全員フルリモートワークと意思決定したという噂も聞いた。

サンフランシスコにあるTwitter社は希望者は今後永久に在宅勤務にすると発表した。サンフランシスコ在住の友人によると、Twitter以外の会社もその姿勢に追随していっているという。また先日、富士通がオフィススペースを約3年かけて半減させることを正式発表していた。

こうした話を聞くとひとつの問いに達する。これからの時代、オフィスは本当に必要なのだろうか。

実は私が経営している会社も4月末にオフィスの解約申請を出した。オフィスは解約するためには3カ月から半年前の告知が必要なので、まだ完全にオフィスがなくなったという会社は少ないが、知人の経営者からも「解約した」という話は最近本当によく聞くし、経営者同士での話題はもっぱらオフィスをどうするかになっている。

使っていないオフィスの一部を知人の会社に貸している会社があったり、曜日を分けてオフィスをシェアしないか、という提案も聞く。

外国語学習者向けQ&Aサービス「HiNative」を運営するLang-8社もオフィスを解約すると公表していた。コストメリットだけではなく、過去の常識にとらわれない迅速な意思決定もこれからを生き残る経営者には必須のスキルなのかもしれない。

オフィスを解約することの賛否

わが社も結果的にオフィスの解約をしたが、もちろんデメリットもあるので、すぐに意思決定できたわけではない。

個人差はあるが、筆者自身リモートワークによって仕事の作業効率は格段にあがった。作業中に誰かに話しかけられたり、背後で気になる雑談が始まったりしないからだ。ミーティングと作業時間が完全に分断されるのでミーティングはミーティング、作業時間は作業時間とパキッと境界ができ、それぞれに集中できるようになった。

経営者にとって利益にそのままヒットする固定費は削減できるものなら削減したいものである。固定費は今の時代、リスクなのかもしれない。だから毎月ただただ出ていくオフィス賃料は無視できなかった。

その分マーケティングや採用にお金を回せるじゃないか、とやきもきする日々が続いた。家賃の固定費を削減した分を、インターネットや在宅勤務の環境を整えるという手当の名目で一定部分を従業員に還元すれば満足度も得られる。

ただ、すぐにオフィスを解約すればいいじゃないかというとそこまで簡単な話ではない。オフィスがあったことで生まれていた価値やそこで生まれる文化のことは忘れてはいけない。