頭のいい人が「図を使って考える」3つの理由

図で考えると考えが整理されて、いいアイデアが思い浮かぶのはなぜでしょうか? (写真:tkc-taka/PIXTA)
優秀なプロジェクトリーダーやコンサルタントが、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を、ホワイトボード上で図を描いて整理し、鮮やかな解決策を導き出していく。ビジネスパーソンなら、こうした光景に一度は遭遇したことがあるはずだ。なぜ頭のいい人は、図を描いて考えるのか。外資系の事業会社やコンサルティングファームを経て、いまはビジネススクールで教鞭をとり、『武器としての図で考える習慣:「抽象化思考」のレッスン』を上梓した筆者が、なぜ図で考えると考えが整理されて、いいアイデアが思い浮かぶのかを解説する。

考える武器としての「図」

誰でも、せっかく何かを「考える」のであれば、よりすばらしいアイデアを出したり、より効果的な問題解決策を導き出したいと思うはずですよね。本質的な解に、できれば短時間でたどり着きたい。そのために、「よく考えよう」「深く考えよう」とするはずです。

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でも「よく考える」「深く考える」とは、具体的にどうすればいいのでしょうか。この問いに答えることは、意外に難しいものです。

どうすれば「よく考える」「深く考える」ことができるのか。そのヒントは、「よく考えている人」「深く考えている人」の習慣の共通点にあります。

私はコンサルティングファームで、たくさんの優秀なコンサルタントに接してきました。また、若い頃にはアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)にMBA留学したこともあり、そこには私なんかより何倍も頭のいい人たちがたくさんいました。

そして、私から見て「あの人はよく考えている」「思考がシャープだ」と思うような人、つまり、頭のいい人たちは、よくホワイトボードの前に立ち、「図」を描いていました。そして、「図」を使って大事なことをうまく表現し、巧みに議論を整理しながら本質的な答えを導き出していました。ホワイトボード全体を思考のキャンバスにしていたのです。

図で考えることは、ビジネスで大きな武器を手に入れることにもなります。頭のいい人たち、仕事のできる人たちの多くが、図を使って考え、決断しているのです。実際、何億、何十億円のビジネスジャッジが、図で整理された考えに基づいてなされた現場を、私は何度も見てきました。

ところで、なぜ図を使うと、より深く、正しく考えることができるのでしょうか。

①枝葉末節がそぎ落とされ本質がクリアになる

まずは情報の渦に溺れることがなくなります。図を描くのはホワイトボードの範囲内、あるいは紙1枚の中です。しかも、文章も基本使わないので情報量はかなり限られます。

実は情報が多すぎると、思考の低下を引き起こすものです。情報を整理するだけで手いっぱいになるからです。確かに最初のうちは、新しい情報を得るたびに問題の理解は深まっていくものです。新たな情報が新しい視点を提供し、思考を刺激してくれるからです。しかし、ある時点を境に情報量と思考量は反比例し始めます。

航空写真では目的地にたどり着けない

図にすると本当に大事なものが見えてきます。枝葉末節が削られ、本当に大事なものだけが浮き彫りになるのです。

例えば、航空写真。確かに現実であり、正確ですよね。でもそこから何かを読み取ることはとても難しいと言わざるをえません。情報量が多すぎるのです。あなたが、あるお店に行きたいとき、その店の写った航空写真を渡されても困るはずです(笑)。航空写真では、店への道順もわかりません。グーグルの地図か、目印となる何かが書かれた案内図があって初めてそのお店にたどり着けます。