職場の雑談なくなった人を襲うモヤモヤの正体

距離を保つため職場内での雑談が減り、心を病む人が増えています(写真:xiangtao/PIXTA)

こんにちは。生きやすい人間関係を創る「メンタルアップマネージャ®」の大野萌子です。

オンライン化で在宅ワークが中心になり、身近な人とのやり取りが減った今。実際に会っても、マスク越しに話をすることにエネルギーが必要だったり、相手との距離を考えると、職場でも、ちょっと耳打ちするなんてこともはばかられて、いわゆる雑談の場が減っています。

先日、相談があったケースでは、感染予防のために昼食などをとる休憩室での会話が禁止され、職員同士のコミュニケーションが取りづらくなり、孤独を感じるのと同時に、仕事にも支障が出ているとのことでした。

孤独感が悪循環を引き起こす

確かに、食事やお茶などで、マスクを取ることが多い休憩室で、会話を禁止することは、予防対策としては決して間違っていないのですが、申し送りや議事録で確認できることには限界があり、微妙なニュアンスや周辺情報がまったく入ってこないと不安になることは否めません。それにより、業務がスムーズに運ばず、それを埋めるためのやり取りさえしにくいとなると、悪循環に陥っていきます。

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さらには、一部の喫煙者が、喫煙所でやり取りをしていて、その人たちだけが知っている情報などを後から耳にしようものなら、取り残された感じになると訴えられていました。飲みに行くことも自粛していて、職場以外でのコミュニケーションが不足している中で、どんどん孤独になっていき、やる気が保てず限界を感じているとのことでした。

職場においての平等感覚はとても大切で、情報共有だけでなく、やり取りの頻度や密度によって自分の精神的な居場所が保てるかが、大きな問題につながります。ソーシャルディスタンスが仲間外しにつながることは避けなければなりません。

6月に施行されたパワハラ防止法の中でも人間関係の切り離しはパワハラにあたると類型化されています。もちろん、職種や担当など、それぞれの立場があり、ひとくくりにできるものではありません。ですが、いまこそちょっとした声掛けや雑談が重要視されると思います。

コロナ禍以前も、たわいもない会話が少ない事務所にメンタル不調が多い傾向は歴然としてありました。私語を推奨するわけではありませんが、天気の話と業務の話だけでは、なかなか関係性が深まらず、ちょっとしたことでもトラブルの引き金になることが多いのです。

しかし、よけいな言動でハラスメントと言われたくないし、個人的なことを聞いたりするとプライバシーの侵害などと言われてしまうのではという懸念があると思います。確かに個の侵害は、パワハラの類型の1つとして挙がっています。しかし、少し間違って伝わっていることも否めません。

過度な個の侵害をうたっているのであって、必要以上に立ち入ることはよろしくないですが、例えば「休みに何をしているのか」「家族のこと」を話題に出すことが悪いことでは決してありません。

相手が話に乗ってこなければやめればいいことで、しつこく問い詰めたり、アドバイスを押し付けたりしなければ、通常のやり取りをすることに神経質になることはないのです。まじめに取り組めば取り組むほど、周りとの距離ができてしまうことは避けたいところです。

また、在宅ワーク中心になった方からのご相談では、孤立感から実際に治療が必要な深刻なうつ状態になったケースも多々見受けられます。

1人暮らしなどでは、ほかに話す人がいないことも多く、このご時世で人と会うことに制限がかかってしまうと、社交的な方でさえも引きこもる傾向にあります。業務上、頻繁に他者とのやり取りがあるものの、チャットやスラックなどの文字ツールで済ませてしまう頻度も高く、誰とも話さずに1日を過ごしてしまうなんてケースも散見されます。