「なぜかいい決断ができる人」がしていること

関連性のある感情は「心のナビ」

大原則は「関連性のある感情は無視しない、無関連の感情には振り回されない」です。何かを決めるとき、「私はどう感じているか」と問いかけてみましょう。自分の感情を把握したら、目の前の選択と関連があるかないかで分けて考えます。「いま自分は不安を感じているな」と思ったら、いまから下す決断について不安なのか、あるいは大事なプレゼンを明日に控えて不安になっているのか、よく考えてみることです。この違いをしっかり区別できれば、上手に決定を下せるようになります。

関連性のある感情はあなたを導く「心のナビ」ととらえてみてください。2つの選択肢から1つを選んだ場合にどうなるかを考えたとき、プラスかマイナスどちらかの感情がわいてくるはずです。

関連性のある感情は、リンゴかオレンジかのように違うものを比較検討するときに使える共通通貨です。人生には、なかなかうまく比較できないような選択肢から1つを選ばなければいけない場面があります(例えば「ロースクールへ行くか、それともヨガのインストラクターになるか?」など)。そんなとき、それぞれの選択肢のメリットとデメリットを並べても答えが出ないようなら、それぞれを選んだ場合にどう感じるかを考えてみるのはヒントになります。

選択肢と直接関連性のある感情は、無関係な感情より長く持続する傾向にあります。数時間か数日たっても同じ気持ちが消えないのなら、おそらく関連する感情と判断してよさそうです。関連性のある感情として一般的なものを以下に挙げてみるので、こうした感情をどう解釈すればいいのかを考えていきましょう(時と場合によって、関連性があったりなかったりする感情もあります。ここでは代表的な例を挙げています)。

期待

これを選ぶと考えると、ほかの選択肢よりもわくわくしてエネルギーがわいてくる――。そんなふうに感じたら、その選択肢は重視すべきサインかもしれません。といっても、その期待が本当に取るべき選択を意味するのかはしっかり確かめることです。

認知心理学者のダニエル・カーネマンは、決断の記録を取ることを勧めています。何かの選択を迫られたら、その選択によって何が起きると思うか、そのシナリオに心ひかれるのはなぜかを書いておきます。そうすると、自分の期待が正しかったか評価できますし、この先何かを決めるときに自分の感情をどう扱えばいいかのフィードバックにもなります。

不安をうまく利用するには

不安

実は、不安は悪いものではありません。どの選択肢もいいときほど、人は不安になるようです。心理学ではこれをウィンウィンのパラドックスと呼んだりします(神経科学では「第一世界問題に相関する神経活動」、すなわち先進国特有のぜいたくな悩みとも)。あなたが抱えているストレスを軽んじるわけではありません。難しい選択はやはり難しい選択ですが、プラスの側面もあるのです。

不安をうまく利用するには、不安がどこからきているかを理解する必要があります。「不安というのはさらなる恐怖への恐怖心です。身のまわりの世界を自分の管理下におき、現実を把握して安心したいという要求が根っこにあります」と、エグゼクティブ・コーチのジャスティン・ミラノはいいます。不安と恐怖心を区別するポイントのひとつが、恐怖心は一時的なもの、不安は数日か場合によっては数カ月続くことです。

(イラスト:リズ・フォスリエン)

まず、手に入れたい、掌握したいものは何かを明確にするところから始めます。ミラノは次のような問いかけを勧めています。「思い入れを抱いているのはどんな期待、考え、結果でしょうか? あの投資家からの支援?特定のクライアント? 特定のプロダクトでしょうか?」。思い入れの対象が何か明確になれば、不安を生産的に利用できるわけです。