仕事のできない人は根拠が何かをわかってない

推測や思い込みではなく事実、根拠が必要だ(写真:tkc-taka/PIXTA)

ビジネスパーソンにとっての重要な思考法として、ロジカル・シンキングが注目されるようになって久しい。直訳するまでもなく「論理的に物事を考える」ことだ。しかし実際のところ、その段階で理解が止まっていて、「けれど、いまさら聞くに聞けない」という状態にある人も決して少なくはないだろう(実は私もその部類だった)。

言葉が一人歩きしているのも事実なので、仕方がない話だ。とはいえ、今後のビジネスのために、必要最低限の知識は得ておきたいところ。そこで参考になりそうなのが、『入社1年目から差がつく ロジカル・シンキング練習帳』(グロービス著、東洋経済新報社)だ。

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グロービスの「思考領域トップ」が、ロジカル・シンキングの基礎を解説した入門書。「まえがき」には、「『ロジカル・シンキング』に初めて触れる人、これから社会人生活をスタートさせる人へ向けての入門書」とある。

だが「当たり前のことではあるものの、意外に難しく、そして実は重要……そんなポイントを20個、ピックアップしました」という説明からも明らかなとおり、若手のポテンシャルを高めなければならない管理職世代にも役立ちそうだ。

つまりは世代に関係なく、「ロジカル・シンキングについてもっと知りたい」という方のニーズを叶えてくれそうな構成になっているのである。

なお、グロービスは冒頭で、本書に書かれていることすべてに共通する頭の使い方を紹介している。重要なポイントだと思われるので、引用しておこう。

「自分自身の考え」を客観視する

それは、「自分自身の考え」に対して、客観視して捉えなおすことができるということです。いわば、もう1人の自分を出現させて、自分の思考に対して、きちんと評価をさせるというイメージです。「メタ(高次の)認知」という言い方などもされます。普通に思考をしているレベルから、次元をあげて、俯瞰的に物事を捉えることと理解してください。(「まえがき」より)

メタ的に頭を使えれば、自身の思考を客観視できるようになり、おのずと自身の思考の質を高められるということだ。そればかりか相手がいる場合においても、「その場」で議論している自分と、“その場でなにが起こっているのかを客観的に理解しようとするもうひとりの自分”を置くことが可能になる。そのため、議論の背景や、そもそも論じなければならないことについて考えやすくなるのである。

ところでグロービスは、「ロジカル」に考えるためにいちばん重要なことは「根拠」をしっかり考えられることだと主張している。確かに、どれだけ伝えたいことがあったとしても、「根拠」を示すことができなければ伝わるはずもない。そこで、「根拠」について、なにを意識すべきなのかということに目を向けてみたい。

根拠を具体化する

根拠には具体性を持たせるべきだが、そのためにはどうしたらいいのだろうか?

例えば、新設された部署に配属されたとしよう。課長から早速、「キックオフのための合宿を企画してほしい」と依頼された。どこへ行くかを決めなければならないため、箱根を候補とし、その根拠を2つ考えてみた。さて、どちらの説得力が高いだろう?

A:多くの社員が行きたいに違いないので、部門合宿は、箱根がよい
B:多くの社員が行きたいと言っていたので、部門合宿は、箱根がよい
(8ページより)

Aの「行きたいに違いない」は、自分の推測なので主観である。一方、Bの「行きたいと言っていた」は客観的事実。根拠が主観によって支えられているか、客観的な事実で支えられているかの違いがあるということだ。