「ストレスが消えても続く」不調の正体と対処法

ストレスが去っても体の不調が長引いたり症状がよくならない場合は、「心身症」の可能性があります(写真:プラナ/PIXTA)
感染不安、外出自粛、在宅勤務、ソーシャルディスタンスなど、急激に変化している社会では、知らず知らずのうちにストレスを抱えることも多いのではないでしょうか。本稿では、『心療内科医が教える 家庭でできるセルフメンタルケア』から一部を抜粋し、心の疲弊から守るための対処法を紹介します。

毎日の生活のなかで、誰もが多かれ少なかれストレスを感じています。問題なのは、そのストレスが過剰になると心や体に不調をもたらすことです。

実は、ストレスによって体に不調が現れることはよくあることです。

例えば、学生時代にテストの前にお腹が痛くなった経験はありませんか? あるいは大事な面接やプレゼンテーションの前に胃が痛くなる、下痢をするなど、そんな経験はないでしょうか?

たいていは、テストが終われば痛みもなくなり、面接やプレゼンテーションが無事に済めば、かえってお腹がすくほど元気になったりするものです。つまり、原因であったストレスがなくなれば、体の不調も治まるといった一過性の場合が多いものなのです。

ところが、ストレスが去っても体の不調が残って長引いたり、ある程度の期間通院を続けているのにもかかわらず症状がよくならない、といったケースがあります。そうした場合は、「心身症」の可能性があります。

心療内科は体も心も両方の面から診察する

心身症とは、ストレスなどなんらかの心理的要素が原因で引き起こされる体の病気の総称です。例えば頭痛や腹痛などの不調があるのに、病院で検査をしても身体的な異常が見つからないといった「不定愁訴」も心身症である場合が多く見られます。

心身症は、体と心の両面から診察する必要があり、心身症を診てもらえるのが心療内科です。

一般内科は、病気の原因を「体」という1つの側面から診るのに対して、心療内科は「体」はもちろん「心」に抱えたストレスにも原因を探します。

つまり、体も心も両方の面から診察し、両方の面にアプローチをしながら治療をするのが心療内科なのです。

長引く不調に悩んだり、不定愁訴に悩んでいるといった場合は、心療内科を受診すると解決の糸口が見つかるかもしれません。

そもそも心身症はなぜ発症するのでしょうか? そこには、「体」「心」「ストレス」の3つが複雑に絡からみ合っています。

心身症になる3つの原因は「体」「心」「ストレス」

「体」は、文字どおりわたしたちの肉体を指し、人によって、もともとその病気になりやすい体質的要因や遺伝的要因の有無などが異なります。

「心」は、性格やものごとの捉え方を指し、同じストレスでも影響されやすい人とそうでない人の違いなどがあります。

「ストレス」は、体や心に変化をもたらす外からの刺激を指します。

ストレスの原因には、天候・騒音などの物理的、薬物などの化学的、過労や睡眠不足などの生理的、人間関係からくる不安・緊張・怒りなどの心理的、そして周囲や環境など社会的なものなどがあります。なかでもいちばんやっかいなのが心理的ストレスと社会的ストレスです。

わたしたちの体は、ストレスという衝撃を心に感じても、脳から自律神経系や内分泌系、免疫系などに情報を出して、安定した心身のバランスを保っています。

ところが、ストレスが強くかかりすぎたり長期にわたると、それらの働きが過度になってバランスが崩れてしまい、体に不調が現れます。この不調を心身症と呼びます。

このように心身症は、体、心、ストレスの3つが複雑に絡み合って発症しますが、体に不調として現れるかは人によって個人差があります。