早期退職を機に「没落する人・幸せ掴む人」の差

早期退職が「間違った選択になってしまう人」の特徴とは?(写真:CORA/PIXTA)

一昨年から昨年にかけて、富士通・NECといった大手メーカーが早期退職を募集しました。今年はコロナ禍で、旅行会社が大規模な人員削減を発表するなど、多くの業界でリストラが加速しています。

リストラが当たり前の時代。もし勤務先が早期退職を募集したら、応じるべきなのでしょうか。それとも会社にとどまるべきでしょうか。

今回は、早期退職に応募した2人の事例を紹介したうえで、早期退職に応じるべきかどうかの「10のチェックポイント」を紹介します。

早期退職が仇となった52歳男性

大手電機メーカーA社で営業部門の課長をしていた勝俣康文さん(仮名・52歳)は、昨年6月、早期退職の募集に応募し、退職しました。

A社では54歳で役職定年が設定されており、それまでに部長に上がっていなければ、平社員に降格して65歳の定年まで働く仕組みです。すでに部長に上がる目はないと判断していた勝俣さんは、A社が45歳以上を対象に早期退職を募集したとき、ITコンサルティング会社への転職を考えました。

社内結婚でA社の内情をよく知る奥さんは、「あなたの好きなようにすれば。年下の部下にアゴで使われて愚痴を聞かされるのは、真っ平ごめんだわ」という返事でした。1人息子は大学4年ですでに就職が決まっていたことや退職金で住宅ローンをほぼ完済できることも、勝俣さんの早期退職の決断を後押ししました。

勝俣さんは、小売業のソリューション営業で数多くの実績を残してきました。そのため転職市場での評価は高く、転職エージェントに登録したところ、すぐに数社を紹介されました。この中から、その時点のA社での年収とほぼ同等の好条件を提示したITコンサルティング会社・B社に転職しました。

ところが、ここから勝俣さんの仕事と暮らしが暗転します。

勝俣さんは、B社で営業担当として新規開拓を任されました(肩書は営業部長)。製品力もブランド力もあるA社と違って、B社では見込みクライアントと商談のアポを取るだけでも一苦労。なかなか満足な成果を出せません。

退職前には「勝俣さんとは、転職先でもぜひお仕事よろしくお願いします!」と言っていたA社時代のある取引先にアプローチしたところ、「もう連絡してこないでください」と冷たくあしらわれました。

焦った勝俣さんは、さらにA社時代の他の取引先や学生時代の知り合いなど幅広くアプローチしました。すると今年1月に勝俣さんは、営業担当から営業支援部門への配置転換を命じられました。古巣のA社からB社に、「勝俣氏は当社の顧客情報を無断で使用している。場合によっては法的措置を取る」という警告文書が届いたとのことです。

そうこうしているうちに、今年に入ってB社は、コロナの影響での経営が悪化し、勝俣さんが所属する事業部門を大幅に縮小することになりました。

勝俣さんの年俸は、1年目は保証されていましたが、2年目は一気に4割減。人事部長からは「これでも君の成果からしたら大盤振る舞いだよ。本当はゼロにしたいんだけどね」と言われました。その後、事業部門長や人事部から「君がいたらまわりが迷惑なんだよ」「君のA社での実績があれば、十分に転職できるでしょ」などと露骨に退職勧奨を受けるようになりました。

悪いことに、昨年までは黙っていた奥さんも頼りにならない勝俣さんに愛想を尽かし、「離婚」を口にするようになりました。勝俣さんは、ノイローゼで睡眠障害に陥り、今では会社の業務に支障をきたす状態に追い込まれています。