日本人が直面する働き方・学び方の大きな変化

東京大学の柳川範之教授に聞きました(撮影:間部 百合)
グローバルの舞台で、かつてあったはずの輝きとプレゼンスが日本から失われているのはなぜなのか。そして、そこから脱却するためには何が必要なのか。
政府、企業、市民社会、専門家との連携を通じ、テクノロジーを最大限に活用して社会課題を解決するための必要なルールづくりと実証を推進する「世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター」。その初代センター長を務める須賀千鶴氏が、日本を代表する各界の知識人に真正面から問いかけて議論していく対談シリーズ第4回。

未曾有の人口減少社会に突入する日本経済に希望の光を見出すなら、ぜひこの方にお話をお伺いしたかった。エスタブリッシュメントの経済学者でありながら、分野横断的にさまざまな方と交流を持ち、「フィンテック」や「働き方改革」など、現在進行形で起こりつつある社会の地殻変動に対しても独自の視点から積極的に発言を続けてきた、東京大学の柳川範之教授だ。さまざまな問題が山積し、「失われた30年」とも言われる日本経済に残された希望、人口減少社会に突入した日本への処方箋について聞いた。

「グローバル」の意味合いが変わる

須賀 千鶴(以下、須賀):現在のコロナウイルスのパンデミックについて、柳川さんが感じていらっしゃることをお聞かせください。

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柳川 範之(以下、柳川):最も大きな変化として感じていることは、コロナウイルスのパンデミックを経て、私たちが当たり前としていた、「グローバル」という言葉の意味がまったく違ったものに変わっていくのではないかということです。今はその変化について強い関心を持っています。

須賀:どういったことでしょうか?

柳川:現在はコロナウイルスの影響により、物理的に海外へ行くことが非常に難しい状況にあります。しかし、オンライン会議はグローバルで頻繁に行われるようになり、海外の人たちと会話する機会がむしろ増えている人もいるのではないでしょうか。以前であれば、会いに行くことが難しかった人たちともオンラインで繋がり、会話をすることが可能になっています。物理的に国を移動することが困難になり、世界が遠ざかっているように感じる一方で、オンライン上では、世界との距離が近づいている状況にあるのではないかと思います。

デジタル空間では、世界の国境などはほとんど意味を持ちませんし、国家の意味合いや地域間の物理的な距離も違った意味を持つでしょう。今後、人々の移動に関する制約がなくなったとしても、私たちのグローバルに対する考え方は、デジタル空間における考え方や感じ方に引っ張られていく構図になると思います。これからは、そのような考え方のうえで、今までとはまったく異なるグローバル化が起こるのではないかと感じています。

須賀:興味深いですね。

柳川:このことは、ある意味日本にとって大きなプラスになると思います。ヨーロッパやアメリカといった国からすれば、日本はなんといってもファーイーストの国です。ですが、デジタル空間においては、物理的な距離の制約がないので、これらの国に対しても、これまでとは異なる方法で近づいていけるチャンスがあります。気になることは、日本人の側に、近づいていこうというマインドがあまりないことでしょうか。グローバルに近づいていけるチャンスを日本人がどのように活かしていくかということが課題になります。

ファーイーストだったがゆえに、日本には、まだまだ知られていない姿やアピールできるポイントがあるはずですし、輸送手段が確立されたことによってヨーロッパに浮世絵が輸出され、ヨーロッパで日本文化が知られるようになったような動きが、デジタルがデフォルトになった世界でもう一度起こるのではないか、起こせるのではないかと考えています。デジタル空間だからこそ世界にアピールできたり、知ってもらえたりするものがあるはずです。