起業は「スモールメリット」の働く事業がいい訳

「スモールメリット」の働く事業がいい訳とは?(写真:xiangtao/PIXTA)
東大を中退後起業し、年商10億円以上に成長させ、twitterでのフォロワー数は3万を超す事業家bot氏。
その事業家bot氏の新著『金儲けのレシピ』では、ビジネスモデルや経済学、人間の本質などの考察によって導き出された「商売で必要な15の原理原則」が紹介されています。本稿では同書より一部を抜粋しお届けします。

集めて売るか、分けて売るか

この世界に存在する財は、「集めると高くなるもの」と「分けると高くなるもの」が存在している。

例えば、集めると高くなるものの典型は「土地」である。日本を代表するデベロッパーである森ビルのビジネスモデルは、10年以上の時間をかけて、細かい民家が密集したエリアの土地を買い集めていき、再開発を行い、巨大ビルを建てるというものである。

なぜ土地を集めると高くなるか、それは、狭い土地であれば2階建ての民家しか建てられないところ、まとまったエリアがあれば50階建てのビルを建てられる、即ち48階分は生み出されるキャッシュフローが増大することになるからである(土地の行政区分等については捨象し単純化しているが、ご容赦いただきたい)。

一方、分けると高くなるもの、の代表例は、例えば肉や魚である。

肉や魚は、塊やサクの状態よりも、切り身になっているほうが値段が高い。実際のところカットする工数というのは大したことがないのだが、一手間かかっているという認知が働き、高い支払いを消費者が許容するわけである。

これに限らず、世の中の大半の財は、「まとめると高くなる」「切り分けると高くなる」に分割できるので、目の前の財に対してもその分類ができないか、思考実験してみることが肝要なのである。

注1)森ビル
横浜市立大学の経営史学者であった森泰吉郎およびその息子である森稔を中心として「港区の大家」とも言われ、六本木ヒルズなどを保有する数少ない非財閥系大手不動産会社である。森稔の弟の森章が率いた森ビル開発は後に森トラストとして独立した。
注2)10年以上の~
森ビルのビジネスモデルは、低層密集地域を高層ビルに変えることで、圧倒的なレバレッジがかかるが、その分再開発を取りまとめるのに時間がかかる。森ビルが非上場である理由の1つに、再開発事業はタイムスパンの長い事業であるため、短期での資本収益性が求められる上場はそぐわないと経営陣が考えているであろうことも、大きな要因であると思われる。

ビジネスを行うときに見逃せないのが、当然、種銭の大きさの効果である。

種銭がデカいことの効果は非常にシンプルで、例えば自動車会社を作ろうと思うと、工場から含めて数千億円という巨額の資金が必要で、結果としてグローバルで見ても数十社というオーダーに競争相手が限定される。

つまり、資本が大きければ大きいほど、参入できるプレイヤーが限定され、結果として競争相手の数が減るわけである。

また、製造業においては多くの場合、投下資本量によって工場がどの程度効率化できるかが決まる。すなわち、資本の量が決定的な競争優位の要因になることが多いのである。

単純に説明すると、これがスケールメリットである。

その反対もある

一方、スモールメリットというのも存在する。

例えば人材紹介エージェントは、1人の凄腕エージェントが成約報酬200万円×20人で年間4000万円の売り上げを立てることは可能である。このエージェントが、本社機能を作らずに、自宅マンションを本社としてビジネスを行っていけば、4000万円がほぼまるまる自分のポケットに入るわけである。

しかし、この会社を組織化し、本社機能を作るとする。たいてい、雇い入れるエージェントは本人よりもかなりランクが落ちるエージェントである。当然、人件費のほかに、指導にかかる時間、オフィス費用、PCなどの備品費用などが増大し、基本的に利益率は逓減するモメンタムが働く。