東大卒「頭のいい」リーダー人材の致命的な欠点

また、インテグリティはつねに定期的なバージョンアップが必要なところも、コンピューターのOSとよく似ています。

インテグリティを磨いていくと、後悔しない意思決定ができるようになります。少なくとも本人にとっては正しい意思決定をしていく。それが社会の中で釣り合っていれば、正しい意思決定とか、美しい意思決定ということになるのでしょう。

2020年から地球規模で感染拡大した新型コロナウイルスは、世界のあり方を一変させてしまいました。コロナウイルスの影響で売り上げが減った企業は、従業員の解雇や工場の閉鎖を迫られるかもしれない。在宅勤務に切り替えたことで、さまざまな混乱が生じているかもしれない。いったい何を頼りに意思決定をすればいいのかわからないまま、重い決断を迫られる事態となってしまったのです。

このコロナ禍について、ネスレの元CEOで取締役会会長のポール・ブルケ氏がカーニーのシンクタンク部門であるグローバル・ビジネス・ポリシー・カウンシルのポール・ローデシナとの対談でこんなことを言っていました。

「これからは"こっちのほうが儲かる"とか、"こうすれば成功する"とか、そういうことではなく、自分が正しいと思ったことをするしかないのだ」と。私もまったくそのとおりだと思います。

しかし、そんなとき何をもって正しいというのか、指針になるものがないという人も多いのではないでしょうか。インテグリティは、判断に迷ったとき、どうすればいいかわからないときの指針になってくれるものです。

「どうすれば儲かるか」だけでは立ち行かない

これからの時代は、いろいろなことがより不確実になると言われています。

人類の歴史を振り返ってみても、不確実な期間は不定期に訪れるものです。そのような時代にこれから仕事をしていくということを考えたら、何が正しいかという判断を自分でできるようになることは非常に重要です。リーダーと呼ばれる立場にある人ならば、なおのことでしょう。

この新型コロナウイルスは、経済にも大きな影響を与えました。それ以前からESG、SDGsの流れも強くなっています。このような状況では、リーダーは非常に難しい意思決定を迫られます。

ミルトン・フリードマンの唱えた「企業は経済的責任以外のことを考慮すべきでなく、ただ株主の利益のために行動すべき」という考えが主流となった過去の40年は、「どうすれば儲かるか」ということを考えればいいと思っていた。しかしこれからの時代はそれだけでは立ち行かなくなります。

何を頼りにすればいいのか、何を目的として意思決定をしていくのがいいのか、今は単純ではない時期だと思います。

新しい製品を出すとか、価格設定をどうするかとか、従業員をどのように扱うのかとか。

コロナによって売り上げが大幅に減るような企業であれば、従業員を削減するとか、工場や店舗を閉鎖しないといけないとか、そういう意思決定をしなければならないかもしれない。

ネスレ会長が言っていたのは、「儲かるとか成功するとか、そういう判断基準ではなく、自分が正しいと思ったことをするしかない」ということです。そのとおりだと思いました。

しかし自分が正しいと思ったことをするとしても、それが誰にとっての正しさなのかが問題です。従業員に対して、社会に対して、もちろん株主に対してなど、立場によって何が正しいのかは変わってきます。

英語では「Do the right thing(正しいことをする)」という言い方をよくします。その一方にあるのが、「Do the things right(前例どおり正しくやる)」という言い方です。この2つは、よく似ているけれど語順が違う。