「会議をまとめるのが下手な人」に欠けている視点

先ほどの例で言えば、サービスの価格を素案では月額300円としていたところ、価格についての意見は割れ、さらに年額やオプションといった異なる情報が次々と入ってきてしまい、リーダーやサブリーダーの思考は停止状態に陥ってしまいました。

そこで、私がバトンを受け、メンバーに価格や年額、オプションを考える理由を尋ねると、それぞれイメージしている顧客が異なることがわかりました。価格が高いと言った人は個人ユーザーを対象に、逆に価格が安すぎると言った人は大手企業を対象に考えていました。

また、年額は導入時に必ず予算化が必要な総務担当者を、オプションはエンドユーザーを顧客にした意見だということがわかりました。メンバーは、サービス企画という観点だけでなく、事業成長の観点から意見をしていることに気がつきました。

私は「スタート段階では、中小企業経営者を対象に必要最小限の機能に絞ったシンプルかつ安価なプランが受け入れられると考え、月額300円に設定しています。これなら赤字になりません。導入先の社内利用が広がれば、みなさんの意見からオプションや年額プランなどを提案し、そして中堅~大手企業への導入を図り、収益を伸ばすイメージではないでしょうか」と話を整理。

「この考えに違和感がないようなら、リーダー、サブリーダーと事業展開イメージをまとめようと思いますが、いかがでしょうか」と伝え、参加者全員納得して会議を終えました。

とはいえ、意見が割れる中で「こうではないでしょうか」とまとめるのは、とても勇気のいることです。しかし、誰かが「こうではないか」と言わなければ、メンバーの思考は先へと進んで行きません。

その役目を負うのが推進役なのです。たとえ自分が考える方向性に自信がなくても「私たちが進む方向はこちらではないでしょうか」と理由を添えて伝えます。

そうすることで、メンバーは「本当にそれでいいのだろうか」や「その方向へ進んだときに何が起こりそうか」と、より一歩先へと思考を進めることができるのです。

実現したい世界観のイメージを伝える

『メンバーの頭を動かし顧客を創造する 会議の強化書』(あさ出版)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

そのためにも、推進役を担う人は、メンバーの話に耳を傾け、感情的な言葉や些細な話にとらわれず、「私たちが顧客にすべきはこういう人で、提供価値はこれで、実現する世界観はこんなイメージではないか」と虚心坦懐(きょしんたんかい)に言えるようにしなくてはならないのです。

また、自分のイメージを伝えた後に、メンバーから「それは違う」と言われたとしても、決して感情的になったり落ち込んだりせず、「どこが違うのか聞かせてください」とイメージを引き出す方向へ頭を切り替える気持ちの強さも必要です。

こうしたことを何度か経験し、頭の中でイメージする力がついてくると、相手から「そのとおりです」「さらにこういうイメージを付け加えたいです」とポジティブな反応を得られるようになっていき、より精度の上がったアウトプットが得られるようになっていくでしょう。

『メンバーの頭を動かし顧客を創造する 会議の強化書』より