「わずか8カ月」で出戻り転職した30歳男性の結末

日本ではあまりイメージがよくない「出戻り転職」。しかし、労働力不足が深刻化する今、向き合うことは重要だ(写真:Yagi-Studio/iStock)
日本企業で人手不足が深刻化して久しい。売り手市場が長く続き、「いい人材」は年々高嶺の花に。人事部は採用コストに頭を抱え、現場は人手不足による長時間労働の沼に沈んだままだ。
人がいない、それならばいっそ「辞めたあいつは……?」。こうして脚光を浴びるのが、かつての同僚、「辞めた人材」だ。会社の表も裏も、酸いも甘いも知って辞めた彼らが、もし戻ってきてくれたならば、即戦力どころか、会社を動かす突き抜けた力になる可能性すらある。
「出戻り人材」の可能性とはいかに。この連載では実際に出戻った人と、受け入れた企業、それぞれに話を聞き、その可能性を探っていく。

30歳エンジニアの場合

ゲーム業界でWebエンジニアとして働く三島和宏さん(30歳/仮名)は、8カ月の期間を経て、2020年冬に、もともと在籍していたA社に戻った。

私立の文系学部を卒業し、ITシステム販売企業に経理職として入社。その後、スクール通いを通じてエンジニアとなり、約2年おきのペースで転職してきた、「自他共に認めるジョブホッパー」である。

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A社に入ったのは2019年のこと。新しくリリースされるゲームの開発に関わり、年収は650万円となかなかの額だったが、2020年春頃に退職することになる。

「辞めた理由は主に2つ。1つは、自分にばかり難しい業務が割り振られたこと。同じチームの人にあまり仕事ができない人が多くて……和やかな社風なのでそういう人が詰められたりすることはないんですが、結果的に周囲の社員の負担が多くなってしまうんです。僕も、まさにそのひとりでした。

もう1つは、コロナ禍で忙しくなったこと。ゲーム業界は、結果的にコロナの恩恵を受けた業界です。上ももちろん言葉にしたりはしないけど、かき入れ時と判断したのか、どんどん施策を打ったんです。でも、コロナ禍なのもあってか採用は増えず、現場の負担は増えていきました」

多くの人が仕事を失っている今、仕事が多いことで不満を言うのはダメだ……そう自分に言い聞かせた和宏さんだったが、在宅勤務で家にこもり、「朝9時から深夜2時まで働き詰め」の生活が3カ月ほど過ぎる頃には「自然と涙が出る」ように。程なく精神的に限界を迎え、退職を決めた。

「上司には『体を壊した』と伝えました。本当のことを言えば体はまだ壊れてなくて、むしろメンタルのほうが限界でした。でも、本当のことを言っても仕方ないので……上司からは引き止められましたが、最終的に退職できました」

職種を変えるか悩むまで追い込まれる

「体を壊した」と伝えて退職した和宏さんだったが、離れて2週間が経った頃には、実際に体に異変が起こった。原因不明の微熱が続き、倦怠感で起き上がれなくなったのだ。その結果、「すぐに転職活動をしよう」という当初の考えを捨て、体と心を休める日々に入る。

しかし、自他ともに認める真面目な性格な和宏さんは、休んでいる間も、常に仕事のことを考えてしまっていたという。しかも、マイナスの方向にだった。

「考えれば考えるほど、エンジニアは自分にとってハードルの高い、難しい仕事なんじゃないかと思うようになりました。自分はもともと理系出身ではなく、一念発起してスクールに通ってエンジニアになったタイプ。デザイナー的な要素も求められる業務もあるため、『自分にそのセンスがあるのかな……』って、ずっとコンプレックスがあったんです。休みながら、この仕事を続けるべきか、思いきって他の職種にシフトするか悩んでいました」