日本企業の大問題は「上司が褒めないこと」だ

日本の「ほめ力の“貧困”」は深刻だ(写真:tkc-taka / PIXTA)

「働き方改革」の掛け声の下、長時間労働の是正や女性の活躍などを巡り議論が盛んだ。拙稿「日本人は世界一、自分の会社を嫌っている」でも触れたように、日本人は会社への愛着度、満足度が世界一低い。これには雇用制度などさまざまな要因があるが、職場におけるコミュニケーション不全も大きく影響しているのではないだろうか。

何より、「ダメだし」「自分語り」がデフォルトの俺様系上司が跋扈し、部下の働きを認めることも、ほめることもないという、深刻な「ほめ力の"貧困"」が社員の士気を阻害している。制度面の改善だけではなく、職場のコミュ力改革も働きやすさ向上のカギとなるはずだ。

日本企業の上司は「ダメだし」ばかり

大手広告会社の電通において入社1年目の女性社員が過労自殺した問題では、長時間労働ばかり問題視されることが多い。しかし、あの問題の根幹にあるのは上司の部下に対するコミュハラではないかと感じる。「女子力がない」「残業時間はムダ」「髪ぼさぼさで出勤するな」。彼女のツィッターから垣間見える上司の言葉は、ねぎらいや励ましではなく、典型的な「ダメだし」コメントばかりだ。

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日本の職場は基本「ネガティブコミュニケーション」が主力であるが、特にスポ根的なテストステロン(男性ホルモン)カルチャーの企業はその傾向が強いように感じる。そういう会社で厳しい競争に勝ち抜き、出世するのは、厳しい「ダメだし」に耐え抜く「鉄の精神力」を持った企業戦士であり、部下の身のうえを心配するような「共感力」の高い人であることは少ない。

部下を叱咤し、統率するそうした上司は成果を出しやすいので、幹部の覚えもいい。残業も厭わないし、権力欲は強いので、猪突猛進だ。自分自身が「ダメだし」で鍛えられてきたから、それが部下へのコミュニケーションの基本形だと思っている節もある。そして、とにかく人(部下)の話を聞かない。アドバイスを求めようとすれば、必ず「自分の話」にすり替わっていたりする。自分をアピールし、自分の手柄をなぜか話にすりこんでくる「オレ語り」系の上司、皆さんの周りにもいないだろうか。

そんな「オレ様上司」がデフォルトである日本企業に圧倒的に不足しているもの。それが「褒め力(ほめりょく)」である。BBCのコラムニスト、エリック・バートン氏は、2016年8月23日、「なんで日本では褒めないのか」という記事の中で「伝統的な日本の階層的な職場社会においては、ポジティブなフィードバックはほぼ、ありえない」と書いている。まさに「西洋の国々とも、ほかのアジアの国々ともまったく異なるビジネスルール」(同記事)の下の特殊なコミュニケーションカルチャーといえるだろう。

日本の「褒め力」不足は、海外で暮らしてみると特に強く感じるものだ。アメリカやイギリスでは、職場でも、プライベートの場でも、学校でも、さまざまな場面で小さなことでもほめられる。そもそも、「褒め言葉」そのものが英語には圧倒的に多く、「子供を褒める100の言葉」リストがあるように、とにかく人を称賛する形容詞の数が無限にある。Super, Fabulous, Amazing, Great, Fantastic, Terrific, Awesome, Marvelous, Brilliantなどなど、日本語にしたら、全部「すごいね!」にしかならないことを考えると、そもそも日本語には褒める語彙が少ないのかもしれない。

会社員の8割以上が褒められたいと思っている

「日本は褒めない文化なのだから仕方ない」とか、「欧米流の褒め育てが挫折に弱い日本の若者を生み出している」といった声もあるが、筆者に言わせれば、日本の褒め力GDPは世界水準よりダントツに低く、絶望的な「飢餓」状態にあるといってもいい。