カゴメのトマトジュースがバカ売れする理由

機能性表示を施したトマトジュースが、売れに売れている(記者撮影)

トマトジュースで国内シェア約5割を握るカゴメ――。同社の「トマトジュース」が、全国のスーパーやコンビニで飛ぶように売れている。

2月2日、カゴメは前2016年12月期決算を発表した。 売上高2025億円(前期比3.5%増)、営業利益109億円(同62.8%増)と、いずれも過去最高を更新した。

円高傾向による原料安などの追い風もあったが、主力のトマトジュースが前年比3割増の売り上げを記録するなど、飲料事業が絶好調だった。

リニューアルで販売急拡大

飲料事業は同社の売上高の4割を占める屋台骨。2016年2月に実施したトマトジュースのリニューアルが一大転機となる。機能性表示食品制度を利用し、ラベルに「血中コレステロールが気になる方に」と記載して再発売するやいなや、低迷していた売り上げが急回復した。

カゴメの推計によれば、トマトジュースの市場規模は2016年に198億円と前年比2割増え、4年ぶりに好転。同社のトマトジュースの出荷量はリニューアル直後、一時的に前年の3倍にまで伸びた。

機能性表示食品制度は2015年4月から始まり、メーカーは科学的根拠を消費者庁に届け出れば、国による審査を経ることなく、健康効果をラベルやパッケージに記載できるようになった。

トマトに含まれるリコピンには、血管内壁にたまったコレステロールを取り除く、善玉コレステロールを増やす働きがある。「もともと『トマトジュースは体によさそうだ』と思っていた消費者が、機能性表示によってより健康効果を確信し、手を伸ばしやすくなった」と会社側はヒットの要因を分析する。

トマトジュースの復活で業績好調のカゴメは、2018年12月期までの中期経営計画を見直した。売上高2200億円の目標は据え置く一方、営業利益は110億円から132億円に上方修正した。

同中計の2年目に当たる今2017年12月期の見通しは売上高2100億円(前期比3.7%増)、営業利益115億円(同5.1%増)と、飲料事業に支えられた好調路線の維持を計画する。

同社の寺田直行社長は、「2017年は、持続的に成長できる強い企業になるための、試金石となる年だ」と決算説明会で語った。カゴメは過去10年間に2度、営業利益が100億円に近づいた直後の大幅減益を経験している。

特に2012年、「トマトジュースが中性脂肪の改善に効く」という研究成果が発表されると、トマトジュース市場が1年で2倍に拡大するほどのブームが発生。カゴメの営業利益も2013年3月期に92億円をたたき出した。

だが、その後はブームの反動で市場が縮小。「野菜生活」などの野菜ジュースの販売不振も重なり、カゴメの営業利益は2014年3月期には27%減の67億円にまで落ち込んだ。以来、同社の飲料事業は低空飛行が続いていた。

今回、トマトジュースのリニューアルが成功を収めたとはいえ、飲料業界の競争激化による販売減少、トマトの相場高や円安による原料高騰といったリスクは変わらない。そこでカゴメは、1年前の2016年初から「トマトの会社から野菜の会社に。」を合言葉に掲げ、トマトに頼りすぎない経営体制への転換を模索している。

トマトの100年企業は変われるのか

ベビーリーフは熊本で栽培していたが、新たに山梨・北杜市の菜園からの出荷開始に向けて準備中だ(写真:カゴメ)

祖業である農事業では、「高リコピントマト」などの生鮮トマトだけでなく、健康志向や時短・簡便ニーズをとらえるべく、ベビーリーフやパックサラダの拡販を目指す。

ベビーリーフは今年から栽培拠点を増やし、パックサラダの販売地域も現状の関東、近畿の一部から徐々に拡大する予定だ。

他にも独自の栽培技術を生かした農業コンサルティングや、農業体験施設の事業化も検討しているという。

カゴメは1899年にトマトなど西洋野菜の栽培で創業、1903年にトマトソースの生産を開始。トマトを事業の核としながら野菜ジュースやスープなど、徐々に事業領域を広げてきた。はたして、100年以上もトマトを中心に据えてきたカゴメが、野菜の会社として認知される日は来るのか。

(文=中山 一貴:東洋経済 記者)