オープンな組織が「無能な社員」を駆逐する

リーダーになるには「面と向かって間違っていると言えるかどうかが重要」と話すジム・ホワイトハーストCEO (撮影:今井康一)
米国にRed Hat(レッドハット)という上場企業がある。オープンソース・ソフトウェアの提供会社だ。無料で公開されているプログラム(=オープンソフト)を認証し、セキュリティを保証、プログラマーを訓練するなど開発を支援することを主な事業としている。同業他社が伸び悩む中、2012年には年商10億ドルを超える初のオープンソース・ソフトウェア会社に成長。2003年度から連続増収を続け、現在も記録を更新している。
その特徴は従来型の大企業と異なる、超オープンな組織。2007年から同社を率いるジム・ホワイトハーストCEOは入社時まもなく、自分の指示どおりに動かない部下に「やる意味がないと思ったからやりませんでした」と言われたエピソードを著書で明かしている。オープンな組織の強みは何か、ホワイトハーストCEOに聞いた。

――そもそも、レッドハットはどんな会社なのか。

たとえば、個人がインターネットで航空券を買ったり、ATMでお金をおろしたりするとき、意識せずともコンピューターのリソースを使っている。それを技術面でサポートしている会社だ。

レッドハットはオープンソース・ソフトウェアを提供している世界最大の企業で、オープンソースとは、個人のプログラマーやグーグル、フェイスブックなどの大手企業が提供している無料のプログラムのことだ。それを使いやすく、より安全に使えるようにしている。

水道の蛇口をひねればどこでも水が飲めるが、みなさんはわざわざお金を出して、ボトルに入ったミネラルウォーターを買う。水道水では安全性が心配だからだ。これと同じで、無料で使えるソフトウェアは多いが、ウイルスが潜んでいるかもしれない。それをレッドハットが認証して「暗号化もされていて安全に使える」などとお墨付きを与えている。

面接で味わった、驚異の社風とは?

――ホワイトハーストCEOは2007年に入社する前はデルタ航空のCOOだった。レッドハットのオープンな社風をどう感じたか?

デルタ航空も含めて、従来型の大手企業は階層構造になっている。これは上の役職ほど情報を持っているということだ。上の役職に就く者は重要な案件の決定権を持ち、その地位に敬意を表されている。そのため、プライベートジェットに乗ってどこかに行く、いいホテルが用意されるということに慣れてしまっている。

レッドハットはそうした会社とは異なる。リクルーターを経て当時のCEOと面接が決まったとき、面接場所の住所だけをポンと渡された。「自力で来いということだな」と思い、タクシーに乗って行った。指定されたコーヒーショップは日曜日で鍵がかかっていた。雨が降り始めたが中に入れない。CEOがやってきて、ようやく中に入ることができた。ところがCEOは財布を忘れて、私がコーヒー代を払わなくてはならなかった。

その後、法務担当の弁護士と一緒にランチを取ったが、彼も現金を持っておらず、ランチ代を私が払った。しかも車のガソリンがほとんど切れかかっているということで、ガソリン代まで私が払うことになった。これは本当に面接なのか、ある種の詐欺ではないかとすら思った。

振り返ると、彼らは単にオープンなだけだった。普段誰かとコーヒーを飲み、ランチを共にするように接しただけだったのだ。2人とも現金を持っていなかったのは間抜けで苦笑せざるを得ないが、オープンソースの世界がそうであるように、誰かを手厚くもてなすとか、リーダーを特別扱いする、といったことに重きを置いていなかったのだ。