目標達成しない人が軽視する「基本中の基本」

目標を達成させるためのポイントとは(撮影:尾形文繁)
「部下に仕事を任せても目標達成まで至らない」「後輩に指示を出しても、思うように動いてくれない」――こんな悩みを抱える上司・先輩は多いのではないでしょうか。ANAでは目標達成できる人材を育てるために、「教え方」を工夫しているといいます。『人もチームもすぐ動く ANAの教え方』の著者であるANAビジネスソリューションに、目標を達成させるためのポイントを聞きました。

「指示をしたらすぐやってほしいのに、後輩の動きが遅い」「毎朝のミーティングで、会社からの目標を伝えているのに、現場が実践してくれない」

ANAビジネスソリューションでは、研修先企業のマネジャーたちから、このような悩みを聞くことがあります。そのようなとき、必ず確認するのが「教える側が、会社の方針や上司からの業務指示を、そのままチームのメンバー、後輩に伝えてしまっていないでしょうか?」ということです。

「早急に売り上げを立て直そう!」「トラブルをゼロにしよう!」「メンバー一人ひとりが成長しよう!」

このような声かけは一見正しいようですが、受け手側の後輩からすると、自分が何をやったらいいのかがわからないため、行動に移せないことが多いのです。

一人ひとりの目標は「具体的に」

ANAのCAは、「自分の目標を立てる」習慣を、一便一便のフライトごとに繰り返しています。20年以上客室センターに在籍するCAで、ANAビジネスソリューション接遇マナー講師の申紅徳は言います。

「私たちの強みは、『このフライトをもっとよくしよう』という考え方を、全員が『自分ごと』としてとらえていることだと思います。新人からベテランまで『他の人がやってくれるだろう』などと考える人はいません。なぜなら、便ごとに『自分の目標』が明確に決まっているからです」

ANAでは、チーフパーサーがフライト1便ごとに「フライト方針」と呼ばれる目標を決めています。

【 10 月 10 日、成田‐ニューヨーク線の品質(サービス)の方針】
「日本らしさ」をお客様にお伝えしましょう。

これを、1便ごとに各CAの目標にまで落とします。「日本らしさ」と聞いても、若手は具体的に何をしたらいいのかわかりません。そこで、この方針を具体的な行動に落とし込んだ目標をパーサー(先輩)が考え、後輩一人ひとりに伝えます。

【パーサーから伝えられる目標(一部)】
・ビジネスクラスでは、折り紙をディスプレイしたり、日本酒をおすすめしてみましょう。
・エコノミークラスでは、化粧室をきれいに保ちましょう。

ここから先、たとえば折り紙を誰が折るのか、ディスプレーを誰が行うのか、どのような声かけで日本酒をお勧めするのか、毛布をお持ちするのか、しないのか……といった細かいことについてパーサーは指示を出さず、後輩一人ひとりが考え、自分の目標を立てます。

そしてフライトが終わった後に、仕事の進め方がよかったかどうか、課題はなかったかなど振り返り、仕事の改善に役立てます(これをANAでは「デブリーフィング」と呼びます)。一人ひとりが1便ごとに目標を持つことで、振り返りも効果的になると、CAの申は言います。

「日本らしさをお客様にお伝えできましたか?」と振り返っても、○だったのか×だったのかがわかりません。でも、一人ひとりが自分の目標を具体的にすることで、「私はお客様に温かい日本茶をおすすめしたところ、喜んでいただけました」「私は外国人のお客様に日本酒をお勧めしましたが、味や原料などについて、より具体的な英語表現を身に付けたほうがよいと気づきました」といったように、達成できたかどうかが明確になるのです。