「無能な上司」ばかりと感じる人に欠けた視点

(写真:takeuchi masato/PIXTA)
会社には「明文化されている制度や仕組み」と「明文化されていない暗黙のルール」があります。その違いを理解しないまま働いていると、「説明しても相手がその通りに動いてくれない」「他部門の協力が得られない」といったトラブルにつながってしまいます。
 
本稿では、下地寛也さんの著者『結局、会社は思うように動かない。上手に働く人の社内コミュニケーション』を一部抜粋・再構成して、人や組織にストレスなく動いてもらうためのヒントをお届けします。
 

嫌いな上司の特徴

会社の上司にはどのようなことを期待しますか?

「自分の意見に耳を傾けてほしい」

「公平な評価をしてほしい」

「合理的な判断をしてほしい」

そういった意見が多いのではないでしょうか。

しかし、実際の上司を見てみるとその期待に応えられていないことも多いようです。2023年に実施された求人情報会社の調査によると、「職場に嫌いな上司がいる」と回答した人が73%もいるそうです。つまり、4人に3人は嫌いな上司がいるということですね。

嫌いな上司の特徴として、

「相手によって態度を変える」「仕事を押しつける、仕事をしない」

「高圧的、偉そう」「気分屋」「自分が全て正しいと思っている」

「嫌味を言う、説教が長い」

といった意見が上位に挙がっています。

なぜ上司はこのような非合理な行動をとってしまうのか。上司本人は、まさか自分が非合理な行動をしているとは思っていないはずです。熟慮し、臨機応変に判断していると自覚していることでしょう。それでも、部下からはそう見えていないのです。

このような悲しいすれ違いが起こってしまうのには理由があります。

上司は、メンバーには言えないさまざまなジレンマを抱えています。

「短期的なチーム目標の達成と、中長期的な経営から見た改革の実現」

「残業制限があるのにやることが多い」

「組織変更、異動、人的トラブルなどの公開できない人事情報を抱えながら、部下にとっては望ましくない配置換えの指示をする必要がある」

「環境変化の激しい時代に、答えのない判断をしなければいけない」

「ハラスメントに注意しながら、気づかせるようにアドバイスしなければいけない」

上司だって感情を持った一人の人間

これはほんの一例ですが、このようなジレンマを抱えているのですから、上司も一人の人間として感情が揺れ動くのは当然のことでしょう。

しかし、部下からそのような葛藤は見えにくいものです。ゆえに、配置換えをしたら「どうして私がそこに異動なんですか?」と言われてしまい、ハラスメントにならないよう配慮を重ねた形でアドバイスをしたら、「何が言いたいのかわかりません」と言われてしまう。それが今を生きる上司の実情です。

社会人になってから実感した人もいるかもしれませんが、大人といっても心は思っていたほど大人ではありません。年齢や立場に対して中身が追いつかないことがあるのは当然です。これは20~30代だけの話でなく、40~50代、もっと上の年代でも同じです。

できるだけ怒りや失望などの感情には蓋をして、「こうあるべき上司」を演じているつもりであっても、完全に蓋ができずに気持ちが透けてしまっている人も多いのです。

ふとした瞬間に、上司が家族とやりとりしている光景を見ると、「ああ、上司も感情を持った一人の人間なんだな」と思うものでしょう。結局、自分の年齢や立場にふさわしいと思えるような「仕事の仮面」を被っているだけなのです。

なぜ「無能な上司」が多いのか

「なんでこんな人が管理職をやっているんだろう……」

「よくこの仕事ぶりで出世できたよな……」

会社の上司を見ていてこのように思ったことはありませんか?