「読書感想文」が若手社員の力をグンと伸ばす

「自らの知識の幅を広げてほしい」と西村正彦会長が始めたのが、会社内に図書室を作ることだった(写真:ファインフーズ提供)

社員は平均月3冊の読書と感想レポートを提出

この連載の一覧はこちら

若者が本を読まない、とよくいわれます。大学生でも、1日の読書時間がゼロという割合は45.2%という調査があります(「全国大学生活協同組合連合会」2015年調査)。5年前の調査では34.5%だったので、5年間で約1割も増えました。

高校生でも同じで、1カ月に1冊も読まない、という生徒は、57.1%と半分以上を占めるそうです(「全国学校図書館協議会」2016年調査)。要するに、大学・高校という最も本に親しむはずの時期に、ほぼ半分の生徒は本を読まないのです。

ファインフーズの西村正彦会長(筆者撮影)

そんな本離れ時代の社員たちにユニークな人材教育をしているのが、堺市にある調味料の製造販売会社・ファインフーズです。年間300種類の商品を製造、つねに新商品の開発に努めている従業員65人の会社です。

「自らの知識の幅を広げてほしい」と西村正彦会長が始めたのが、会社内に図書室を作ることでした。蔵書は、ビジネス書と食品関連が多いですが、グルメ漫画『美味しんぼ』なども全巻そろっています。社員さんは思い思いの本を手に取って、読書コーナーや自宅で本を読みます。平均読書量は、10カ月で28.3冊。トップの社員は105冊を読破したと言います。そして読み終わったら、所定の用紙に感想を書きます。「読んだらスグ書くレポート」です。提出されたレポートを上司がコメントし、社長の了解を得ることで一連の流れが完結します。

「以前はすべて私自身がコメントしていましたが、腱鞘炎になってしまいました」と西川会長。レポートを提出すると、1000円の報奨金がもらえる他、ボーナスの査定にも反映されます。社員も張り切らざるをえません。

でも、おカネや評価だけがインセンティブではないと社員の方は言います。

「書く力が身に付きました。レポートはほぼ30分で書けるようになりました。会議の発表でのコメントもすらすら書けます」

最初はおカネ目当てだった感想レポートも、自らの変化が実感でき、楽しみに変わってきたようです。社員全員に、読解力、文章表現力がついてきました。

1日ひとつのアイデア提出が研究員の義務

この業界は、つねに新商品を開発することが求められます。そうした天然調味料、香辛料の新商品を開発している「研究部」にお邪魔しました。

天然調味料、香辛料の新商品を開発している「研究部」にて(写真:ファインフーズ提供)

女性研究員の1人が、なにやらびっしりと書き込まれた大学ノートを手に、上司の方と面談しています。いろいろな新商品のアイデアを書き留めた「アイデアノート」です。研究開発スタッフは、毎日ひとつアイデアを出すことが求められているのです。名付けて「アイデア千本ノック」。ノートには、カレーライス用ふりかけ、豆腐味のドレッシングなど、聞いたこともない名前が並んでいます。これも報奨金の対象で、1アイデア300円です。1年間続ければ、@300円×365日で11万円ほどになり、けっこうな副収入です。

調味料商品(写真:ファインフーズ提供)

でも1日1本は大変ですね、と同情すると、その女性研究員はこう答えました。「最初は大変でした。でもコツコツ重ねていると、日頃からいろいろと考えるようになって、アイデアもコンスタントに出るようになりました」。

なんと、2年間で900個、ノート3冊分のアイデアを書いたそうです。その中で「青花椒(あおかしょう)」を原料とした調味料が商品化されました。普通の胡椒(こしょう)に比べ刺激が強いのですが独特の清涼感もあり、辛さを求める消費者向けの新商品につながりました。