かえってブラックな働き方になる危険も…「在宅勤務」の現実とデメリットと克服法

「Thinkstock」より

 働き方改革の一環で、リモートワーク(在宅勤務など)を幅広く認める企業が増えている。長い通勤時間や取引先からの移動を削減できるなどの点で、生産性向上に一役買う可能性は高い。実際にリクルートグループの一部などがリモートワークの試行後、生産性が高まる効果があるとしてサテライトオフィスなどに投資している。

 一方で、働く場所を好きなように選び、地方や海外からほとんど出社せずに遠隔で働く「完全リモートワーク」は、成立するのだろうか。著者自身、シンガポールに拠点を移して日本についての記事を書くというリモートワークをはじめた。

 同時に、海外で働きながら子育てをする女性たち向けに「海外×キャリア×ママサロン」というオンラインサロンを運営している。配偶者の転勤などで海外にいながら仕事を続けようとする女性のなかには、会社との交渉次第で当初勤めていた企業に所属しながら遠隔で仕事を続けているケースもある。

 ただ、彼女たちとの情報交換からは、やはり「完全リモートワーク」にはまだ課題が多く、それなりの工夫が必要であることも見えてきた。3つの課題(海外は4つ)、その克服方法とは――。

(1)世の中・社内の空気が読めない

 完全リモートワーカーが一番困るのは、気候の話から始まり、政治経済の話題、職場の雰囲気まで、とにかく「空気が読めない」ことだ。

 私自身、日本での服装についての記事を書くときに、冒頭の入りで非常に迷ったことがある。「今年の夏も暑かった」なのか、「今年は冷夏だった」なのか。気温を見て書いても常夏のシンガポールから書くとどこか嘘めいてしまう。

「最近、話題の……」という書き出しが、本当に話題なのかということもSNS等だけでは不安になる。本当にタクシーの運転手さんや居酒屋談義、職場の雑談でそれは話題になっているのか、ということが遠隔ではわからない。

 私が逆の立場で以前、ここ数年海外に拠点を置いているというライターにスカイプ取材をされたときも同様のことを感じた。待機児童のことなどかなり基本的なことから説明したつもりだったが、大量の赤字修正が必要で、日本にいればもう少し知識が入ってくるのではと感じた。

「世の中の空気が読めない」ことだけではなく、職場の空気がわからないこともリモートワーカーにとっては不安要素だ。コピーライターとして前職の会社などとリモートワークをしているある女性は「社内のテンションが不明ですね。こちらから連絡をとるときに、この雰囲気は新たな提案が通りそうとか、いまこの話はタイミングじゃないなぁというところが読みにくいです」と言う。

 たまにでも出社していれば、今は少し張り詰めた空気だからこの話はあとにしよう、といったことがわかるが、遠隔ツールではとんでもないタイミングに社内SNSを投げてしまったり、スカイプで発言を割り込ませたりしてしまうことがある。

「日本だと、テレカン(テレフォン・カンファレンス:電話会議)では相手の表情を読みながら、テレカンの前後にちょこちょこ話して合意形成されたりするので、テレカンで遠隔から会議の方向性を左右することが難しく感じます」という声もあった。

 対策としては、年に数回でもできるだけ対面の機会をつくる、一対一ではなくできるだけ大人数の会議の様子も聞けるようにさせてもらうなどの工夫をしている人が多いようだ。次のような経験談があった。

「細かな話ですがカメラ位置とか、マイク付きイヤホンを使うか使わないかとかでも変わってくる。社内の状況が不明な一方、向こうもこちらの状況が不明なようなので、リモートの最初の頃はかなり密に連絡をとってこちらの状況を伝えるようにしていました」