スーツ需要蒸発…支出額4割減、イオンが約1万円スーツ販売の価格破壊で業界にトドメ?

AOKIの店舗(「Wikipedia」より)

 ベンチャー企業やIT系企業を中心に、スーツを着用しないビジネスパーソンが増え、昨今はスーツ離れが叫ばれる。そのあおりを受けて、紳士服専門店の苦境が鮮明になっている。

「洋服の青山」を展開する青山商事、「AOKI」を展開するAOKIホールディングス、「はるやま」を展開するはるやまホールディングス、「紳士服コナカ」を展開するコナカの、大手4社の2017年度決算(18年3月期、コナカのみ17年9月期)が出そろった。

・青山商事:売上高2548億円(前年比0.8%増)
・AOKI:同1984億円(同2.3%増)
・はるやま:同570億円(同2.0%増)
・コナカ:同681億円(同2.2%減)

 4社中3社が増収なので悪くないように思えるが、詳細を見てみると、スーツ市場を取り巻く環境は厳しい状況にあることがわかる。

 青山商事とAOKIは、飲食店やカラオケ店など紳士服店以外の業態店も多く保有しており、それらが全体の業績を押し上げた一方、スーツを主力とする事業に関しては伸び悩みを見せている。青山商事のスーツを主力とするビジネスウェア事業の売上高は前年から横ばいの1887億円、AOKIのスーツを主力とするファッション事業の売上高も横ばいの1184億円と、それぞれ伸びていない。

 各社の既存店売上高は伸び悩んでいる。17年度は、青山商事のビジネスウェア事業が前年度比0.2%増、AOKIのファッション事業が0.2%増、コナカが4.0%減、はるやまが1.1%減だった。はるやま以外は客単価が増加したものの、それでも客数の大幅な減少を補えなかった。客離れが深刻な状況にある。

 団塊世代の大量退職やクールビズの普及、カジュアルな装いで仕事をする人が増えたことなどで、スーツ市場は縮小している。

 総務省の家計調査によると、1世帯当たりの背広服への年間支出額は16年が4262円で、近年はおおむね横ばいで推移しているが、08年の6807円と比較すると4割弱減った。00年の8782円からすると半分以下になっている。ワイシャツとネクタイも大幅に減っており、16年のワイシャツへの支出額は1480円と00年から4割以上減り、ネクタイは455円と同3分の1ほどに減った。

 青山商事など紳士服専門店大手は、かつて高価なイメージがあったスーツを3万~4万円程度の手頃な価格で販売し、順調に店舗を増やしていった。さらに、青山商事が「ザ・スーツカンパニー」、AOKIが「オリヒカ」(旧スーツダイレクト)、コナカが「スーツセレクト」、はるやまが「パーフェクトスーツファクトリー」を00年ごろに立ち上げ、2万~3万円程度でスーツを販売するようになった。「1万9000円と2万9000円」といった「ツープライス」と呼ばれるわかりやすい価格設定や手頃な価格が受け、若者を中心に支持を集めた。

●紳士服市場が縮小するなか、競合も乱立

 そんななか、紳士服専門店以外でも低価格を売りにしたスーツを販売する企業が出現し、頭角を現している。

 大型スーパーがその筆頭格だろう。イオンはプライベートブランド(PB)「トップバリュ」でスーツを販売。価格は安いもので1万3000円(税別、以下同)程度だ。イトーヨーカ堂は紳士服のPB「ビジネスエキスパート」でスーツを販売。価格は安いもので1万円程度となっている。価格だけ見れば、どちらも紳士服専門店に勝るとも劣らない。

 また、ユニクロはセットアップとしても着用できる「感動ジャケット」と「感動パンツ」を販売している。上下合計でも1万円以下と低価格だ。また、色柄やシルエットなどをセミオーダー感覚で選べるジャケットを1万4900円、セットアップできるパンツを5990円で販売している。合計で2万890円と、こちらも手ごろな価格となっている。