文科省局長汚職、大学補助金と官僚の息子の裏口入学の「闇」

文部科学省科学技術・学術政策局長だった佐野太容疑者(写真:読売新聞/アフロ)

 文部科学省の私立大学支援事業をめぐり、同省科学技術・学術政策局長だった佐野太容疑者(4日付で大臣官房付)が、東京地検特捜部に受託収賄の疑いで逮捕された。佐野容疑者は、東京医科大学(東京都新宿区)から「私立大学研究ブランディング事業」の支援対象選定で便宜を図るよう依頼された見返りに、今年2月、息子を同大に不正合格させてもらったとされる。

 特捜部の任意の事情聴取に対し、東京医科大の臼井正彦理事長と鈴木衛学長はこうした経緯を認めているが、10日付の新聞報道によれば、佐野容疑者は容疑を否認しているという。

 大学関連の著作を多く持つ評論家の島野清志氏は、「大学を長年取材してきて、こんな露骨な話は聞いたことがない」と語る。

「医大では昔から、多額の寄付金を出せば入学させてもらえる裏口入学の話はあった。恐らく今でもあるかもしれない。医大はとにかくお金がかかるので、開業医の二代目などにはそんな話があった。ただ、大学側は箸にも棒にもかからない学生を受け入れたりはしない。合否のボーダー線上にある学生について、寄付金次第で入学させるという話だ」

 今回の事件はそうした寄付金絡みのものではなく、国の補助金とエリート官僚の職務権限が絡んでいる点で前代未聞だ。

「大学が国の補助金を受けるバーターとして、文部官僚の天下りの面倒をみるという話なら、一般的に行われていることだ。つまり、佐野容疑者自身の退官後の天下りを約束していたというなら、事件にならないし大きな問題にもならない。しかし、自分の息子の不正入学を頼んでいたなら、もしかするとその息子はかなり成績が悪かったのかもしれない。東京医科大は医大として、比較的難易度が高い大学で、合格した学生たちの出身高校を見ると、レベルの高い進学校ばかりだ」(同)

●資金調達力のない規模の小さな大学

 報道によれば、大学側から佐野容疑者に話を持ちかけたようだが、大学側の「経営」はどうなっていたのか。

「東京医科大は現在の病院棟と隣接する土地に新しい大学病院を建設中で、来年7月1日開院予定だ。その新病院のために195億円の借り入れをしたといわれている。もともと、日本医科大から分裂して創設された経緯を持つ大学で、医学部に医学科と看護学科があるだけの小さな大学だ(学生数約1130人)。大学院と附属病院はあるものの、資金調達力も強いとはいえない。わずかな額でも補助金が必要だったのかもしれない。また、大学の補助金は一旦助成が決まれば継続して受けられることが多く、他の名目の補助金も受けやすくなる」(同)

 今回の補助金は「私立大学研究ブランディング事業」だが、大学の特色ある研究を基軸として、全学的な独自色を大きく打ち出す取り組みを行う私立大・私立短大に対し、経常費・設備費・施設費を一体として支援するものだ。16年度に始まり、17年度は188校から申請があり、東京医科大を含む60大学が選ばれた。同大へは5年間の支援で、17年度は3500万円が助成されている。

 195億円の借り入れからみれば大きな額ではないが、文科省との関係強化で将来的にも補助金頼みの経営を計画していたなら合点がいく。とはいえ、島野氏は「わからないことが多い事件」だと首をかしげる。

「キャリア官僚は狡猾だから、通常、こういうことでバレるようなことはしない。佐野容疑者のほかに、受託収賄のほう助容疑で元医療コンサルティング会社役員が仲介者として逮捕されているが、こういうブローカーみたいな人を信じてしまうのもどうか。そこらへんの筋から情報が漏れたとも考えられる。大学側も直接、政治家に頼んだほうが早かったのではないか」(同)

 文科省といえば、首相官邸が目の敵にしている前川喜平・前事務次官がすぐに思い浮かぶが、特捜部を使った文科省への嫌がらせということはないだろうか。東京地検特捜部は、これはこれでしっかり捜査すべきだが、安倍首相と加計孝太郎氏の関係から生まれた加計学園問題もやはり調べるべきではないのか。そうじゃないと国民は納得しない。
(文=横山渉/ジャーナリスト)

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