夢=無王吽

夢=無王吽

『むもん』と読みます。

情報過多なのに濃霧は濃霧。

空腹は最高の調味料という言葉があります。

いいかたを変えれば、
腹が減ってりゃなんでもウマイと。

千と千尋のオムスビみたいに、
食べると泣いちゃうくらい、
腹が減って、心が飢えていた。

やさしくされるだけでも、
空腹を満たすだけでもなく、
両方同時だから、涙が止まらなくなった。

でも、
満腹でも、
うまいものはウマイですよね。

ぼくはいつも飢えています。

渇いて、怯えて、うずくまっています。

幼い頃、迷子になったときのまま、
もしかしたらまだ、
泣きつかれてどこかで眠っているのかな。

安心したくて、
家に帰れたと思い込んでいるだけなのかも。

夢は長いようで短く、
あるようでなにもない。

得たものは指の隙間からこぼれ、
なにものこらない。

目がさめたら、
何も持っていない、
あの幼い頃に戻ってしまうのか?

秋から冬になると、
ぼくはいつも、
これは夢じゃないかと時間を疑います。

ぼくが自分をだましているのか。

時間がぼくを迷子にするのか。

ぼくはまだ、
向こう岸を知らない。

深い霧は、
ぐるりと回ってまた同じところへと、
ぼくを戻らせようとする。

漕ぐちからが抜けないよう、
季節が変わる前に歯を食いしばるんだ。

翻弄されないよう、
心を保つために。

眠る迷子の耳に、
歯ぎしりが他人事のように伝わる。

起きたらそこが、
知らない場所だったとして、
ぼくは立ち上がり、
将来の自分と今の自分が同じだと知っても、
ちゃんと前を向けるだろうか?

いつか安心できると信じて、
足や櫂を動かし続けられるだろうか?

季節が変わると、
前の季節は過去になってしまいます。

そうならないでほしいけど、
どうしても、そうなります。

だからぼくは、
ここにいる証として、
なにかをのこそうとするのかもしれません。

のこしても、のこしても、
いつまでも安心できないまま、
まどろみの向こう岸へと目を凝らします。

起きたら、
全部がなしになってしまいそうで、
でもエルフのように、
そのくらいの時間がほしいと願う。

ぼくは過ぎていく時間に追いつけない。

ぼくは、
季節の変化に慣れない。

今も、きっと、
ずっと先も、変わらないままで。

オムスビの夢を見て泣く、
迷子のままで。
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登録日 2021.12.01 21:14

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