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第2章 バリガンガルド編
60 街にはたどり着いたけど
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リビングアーマーの俺。
犬耳っ娘のロロコ。
エルフのクラクラ。
三人は森の中を抜ける街道に出た。
ロロコが馬車の音を聞きつけたのだ。
その音のとおり街道を走ってくる馬車があった。
馬車の音を鳴らして人をおびき寄せるモンスターとかではないようだ。
よかった……。
馭者が、手を振る俺たちを見て、止まってくれた。
〈バリガンガルドまで行きたいんですが〉
「なんだ、お前ら、冒険者か?」
〈え、ええ。さっきまでダンジョンに潜ってたんですが……〉
「出るとこでも間違えたか?」
〈まあ、そんなところです〉
馭者は笑いながら後ろを指す。
「最低料金は一人5ヴォルフォンだが、2ヴォルフォンでいいよ。あとすぐだからな」
ヴォ、ヴォルフォン……?
「ヴォルフォニア帝国の通貨単位だ。1ヴォルフォンは銅貨1枚だが……」
クラクラが小声で教えてくれた。
銅貨……銅貨!
俺、銅貨は30枚持ってるんだよな。
洞窟ダンジョンに入ったばっかりのころ、冒険書と一緒に、白骨死体から頂戴した。
まったく使う機会がないから忘れてたぜ。
ってわけで、馭者に乗車賃を支払って、幌馬車に乗せてもらう。
馬車には木箱がたくさん積んであった。
客はいないみたいだな。
「悪いな。帰りは乗客がいなかったもんで、荷物を積めるだけ積んだんだ」
なるほど。
ただ戻るだけより、荷物を運んで送料を稼いだ方がいいもんな。
「壊れものはねえから、箱の上に適当に座ってくれ」
言われて、座ろうとしたら、メキッ……と音がした。
「リビタンは、やめた方がいい」
〈そうみたいだな……〉
仕方がないので、俺だけは木箱をずらして、床に直接座った。
◆◇◆◇◆
数時間、馬車に揺られた。
途中、ロロコとクラクラは仮眠を取っていた。
馭者が絶対安全な人とは限らないけど、俺が寝る必要がないからね。
しかし、この揺れでよく寝られるよな。
俺、身体が人間だったら絶対酔ってたぞ……。
ってわけで、森を抜けると、城壁が見えてきた。
おお!
俺、この世界に転生してから、まともな街を見るの初めてじゃねえかな!
馬車はぐんぐん城壁に近づいて――行かずに、だいぶ手前で止まった。
あ、あれ……?
「さ、この辺でいいだろ」
〈えっと……街の中まで行ってくれないの?〉
「はぁ? なに言ってんだ?」
馭者は訝しそうな目を向けてくる。
クラクラが苦笑しながら言う。
「あれだけの規模の街は入る際に検査がある。馬車はその手前で客を下ろす決まりだ」
〈検査?〉
マズいな。リビングアーマーの俺は身の証なんか立てられないぞ。
「と言っても、バリガンガルドは冒険者が多く集う街。簡単なものだ」
〈ふぅん……〉
「せいぜい、顔の検分と、立ち入る目的を聞かれるくらいだな」
なぁんだ、それなら全然問題――大ありじゃねえか!
「あ……」
クラクラも気づいたみたいで、気まずそうな顔をする。
「リビタン、顔ない」
ロロコははっきり言わなくていいから!
どうするんだよ……。
「んじゃ、俺は運送用の城門に行くから」
〈あ、はい。ありがとうございました〉
「なぁに、こっちも今夜の飲み代ができて助かったぜ」
馬車は走り去って行った。
取り残される俺たち。
えー、どうすればいいの、俺?
◆◇◆◇◆
で、こうなりました。
「二人か」
門番の兵士が俺たちを見て言う。
「クララ・クラリッサ・リーゼナッハ・フリエルノーラだ」
「ロロコ」
クラクラとロロコは自分の名前を名乗る。
「目的は?」
「二人とも、冒険者ギルドへの登録だ」
「種族はエルフと人犬族で合っているか?」
「相違ない」
「……で、その鎧は?」
と、門番は、怪訝そうな顔で、クラクラを見る。
そう、今、俺はクラクラに着られてる状態だった。
こうすれば、俺はリビングアーマーではなくただの鎧。
ただの鎧には審査も何もないだろう。
ただ、問題は、サイズがちょっと大きいこと。
実は、この方法を思いついた時、ロロコが「自分が着る」と言い出した。
でも、さすがにそれはサイズ的に不自然すぎるのでクラクラが着ることになったのだ。
まあ、クラクラでもだいぶ不自然なんだけど。
現に、門番にも不審がられてるし。
「だいぶ大きいようだが……大丈夫なのか?」
不審っつーか、心配されてるな……。
「こ、これは、父の形見である」
クラクラが言う。
何か訊かれたときに答えるよう用意していた作り話だ。
「可能ならば、鍛冶屋で打ち直してもらおうと考えている」
「それなら、西のはずれにあるアルメルの道具屋に行ってみるといいかもしれないな」
「そうか……情報、感謝する」
会話はそれで終わり、俺たちは門から街に入った。
ふー……。
なんとか乗り切ったな。
っていうかさ。
考えてみたら、馬車に乗るときも、こうすれば一人分浮いたんじゃねえかな!
今度からそうしよう……。
犬耳っ娘のロロコ。
エルフのクラクラ。
三人は森の中を抜ける街道に出た。
ロロコが馬車の音を聞きつけたのだ。
その音のとおり街道を走ってくる馬車があった。
馬車の音を鳴らして人をおびき寄せるモンスターとかではないようだ。
よかった……。
馭者が、手を振る俺たちを見て、止まってくれた。
〈バリガンガルドまで行きたいんですが〉
「なんだ、お前ら、冒険者か?」
〈え、ええ。さっきまでダンジョンに潜ってたんですが……〉
「出るとこでも間違えたか?」
〈まあ、そんなところです〉
馭者は笑いながら後ろを指す。
「最低料金は一人5ヴォルフォンだが、2ヴォルフォンでいいよ。あとすぐだからな」
ヴォ、ヴォルフォン……?
「ヴォルフォニア帝国の通貨単位だ。1ヴォルフォンは銅貨1枚だが……」
クラクラが小声で教えてくれた。
銅貨……銅貨!
俺、銅貨は30枚持ってるんだよな。
洞窟ダンジョンに入ったばっかりのころ、冒険書と一緒に、白骨死体から頂戴した。
まったく使う機会がないから忘れてたぜ。
ってわけで、馭者に乗車賃を支払って、幌馬車に乗せてもらう。
馬車には木箱がたくさん積んであった。
客はいないみたいだな。
「悪いな。帰りは乗客がいなかったもんで、荷物を積めるだけ積んだんだ」
なるほど。
ただ戻るだけより、荷物を運んで送料を稼いだ方がいいもんな。
「壊れものはねえから、箱の上に適当に座ってくれ」
言われて、座ろうとしたら、メキッ……と音がした。
「リビタンは、やめた方がいい」
〈そうみたいだな……〉
仕方がないので、俺だけは木箱をずらして、床に直接座った。
◆◇◆◇◆
数時間、馬車に揺られた。
途中、ロロコとクラクラは仮眠を取っていた。
馭者が絶対安全な人とは限らないけど、俺が寝る必要がないからね。
しかし、この揺れでよく寝られるよな。
俺、身体が人間だったら絶対酔ってたぞ……。
ってわけで、森を抜けると、城壁が見えてきた。
おお!
俺、この世界に転生してから、まともな街を見るの初めてじゃねえかな!
馬車はぐんぐん城壁に近づいて――行かずに、だいぶ手前で止まった。
あ、あれ……?
「さ、この辺でいいだろ」
〈えっと……街の中まで行ってくれないの?〉
「はぁ? なに言ってんだ?」
馭者は訝しそうな目を向けてくる。
クラクラが苦笑しながら言う。
「あれだけの規模の街は入る際に検査がある。馬車はその手前で客を下ろす決まりだ」
〈検査?〉
マズいな。リビングアーマーの俺は身の証なんか立てられないぞ。
「と言っても、バリガンガルドは冒険者が多く集う街。簡単なものだ」
〈ふぅん……〉
「せいぜい、顔の検分と、立ち入る目的を聞かれるくらいだな」
なぁんだ、それなら全然問題――大ありじゃねえか!
「あ……」
クラクラも気づいたみたいで、気まずそうな顔をする。
「リビタン、顔ない」
ロロコははっきり言わなくていいから!
どうするんだよ……。
「んじゃ、俺は運送用の城門に行くから」
〈あ、はい。ありがとうございました〉
「なぁに、こっちも今夜の飲み代ができて助かったぜ」
馬車は走り去って行った。
取り残される俺たち。
えー、どうすればいいの、俺?
◆◇◆◇◆
で、こうなりました。
「二人か」
門番の兵士が俺たちを見て言う。
「クララ・クラリッサ・リーゼナッハ・フリエルノーラだ」
「ロロコ」
クラクラとロロコは自分の名前を名乗る。
「目的は?」
「二人とも、冒険者ギルドへの登録だ」
「種族はエルフと人犬族で合っているか?」
「相違ない」
「……で、その鎧は?」
と、門番は、怪訝そうな顔で、クラクラを見る。
そう、今、俺はクラクラに着られてる状態だった。
こうすれば、俺はリビングアーマーではなくただの鎧。
ただの鎧には審査も何もないだろう。
ただ、問題は、サイズがちょっと大きいこと。
実は、この方法を思いついた時、ロロコが「自分が着る」と言い出した。
でも、さすがにそれはサイズ的に不自然すぎるのでクラクラが着ることになったのだ。
まあ、クラクラでもだいぶ不自然なんだけど。
現に、門番にも不審がられてるし。
「だいぶ大きいようだが……大丈夫なのか?」
不審っつーか、心配されてるな……。
「こ、これは、父の形見である」
クラクラが言う。
何か訊かれたときに答えるよう用意していた作り話だ。
「可能ならば、鍛冶屋で打ち直してもらおうと考えている」
「それなら、西のはずれにあるアルメルの道具屋に行ってみるといいかもしれないな」
「そうか……情報、感謝する」
会話はそれで終わり、俺たちは門から街に入った。
ふー……。
なんとか乗り切ったな。
っていうかさ。
考えてみたら、馬車に乗るときも、こうすれば一人分浮いたんじゃねえかな!
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