96 / 286
第2章 バリガンガルド編
EX13 商人と秘書と保護国管理官の話
しおりを挟む
「エド様」
森の中を歩いていたエド・チェインハルトの横にクーネアが現れた。
まるで虚空から突然湧いて出たような不自然な出現だった。
この世界には転移魔法などというものは存在しない。
にもかかわらず、彼女の出現は、そういった魔法を使ったとしか思えないものだった。
しかし、エドはクーネアの出現に驚くことなく答える。
「どうだった、首尾は?」
「はい、滞りなく」
クーネアは眼鏡を持ち上げながら頷く。
「フリエルノーラ国は、ガレンシア公国との仲介をチェインハルト商会に委託することに同意いたしました。魔鉱石の採掘事業についても商会主導で行えます」
「ふむ、素晴らしい」
エドはパンと手を打ち合わせる。
「クーネア。君のおかげで商会は信じられないペースで発展している。有能な部下というのは何者にも変えがたいものだね」
「恐縮です」
エドの褒め言葉にも、表情を緩ませることなく頭を下げるクーネア。
「しかしエド様の遠大な計画を思えば、まだまだ物足りません」
「焦りは禁物だよ、クーネア」
エドは苦笑する。
「なにしろ規模は大きく、同時に緻密さも要求される。『魔王復活』という事業のためには失敗は許されない。急ぐことより、失敗の芽を潰すことを優先せねば。この輩のようなね」
そう言って、エドは足元に倒れている男を軽く蹴る。
「うぎっ!」
その男――ガレンシア公国保護国管理官ギルバートは悲鳴を上げた。
「な、なんなんですか貴方がたは!? 私をこのような目に遭わせて、公国が黙っていると思いますか? 公国の背後にはヴォルフォニア帝国もいるのですよ? 帝国と事を構えれば、いかな大商会といえど……ぎゃ!」
ふたたび蹴りつけられ悲鳴を上げるギルバート。
「馬鹿な方だ……帝国が貴方のような馬鹿一人を気にかけるわけがないでしょう。有能な人材ならまだしも、私欲で姫を手に入れようとする色ボケなど」
「どう排除しようかと考えておりましたが、ちょうどよかったですね。まさかドラゴンが吹き飛ばしてくれるとは」
クーネアの言葉に頷き、エドはギルバートの襟首を掴んで起こす。
「ええ……行方不明、ということで誰も気にしないでしょう」
「ぐっ……わ、私をどうするつもりだ!」
「死んでいただきます。と言っても直接手を下すのは、私は好きではないのでね」
そう告げると、エドはいつもはめている手袋を脱いで、右手のひらにある『なにか』をギルバートに見せた。
「な!? なんだ、それは……それは……あ、が、ぐ、うぉおおおおおおお!」
その『なにか』を見るなり、ギルバートは恐怖に顔を痙攣らせる。
目を血走らせ、頭を振り回し――
――やがて彼は泡を吹いて絶命した。
エドは手袋をはめなおすと、何事もなかったように歩き出す。
「次の用事はなんだったかな」
「はい。ヴォルフォニア帝国の騎士団長ガイアン様と面会の予定です」
そんな会話を交わしながら歩いていく二人。
次の瞬間。
その姿はかき消え、森には樹々のざわめきと動物たちの鳴き声だけが残った。
森の中を歩いていたエド・チェインハルトの横にクーネアが現れた。
まるで虚空から突然湧いて出たような不自然な出現だった。
この世界には転移魔法などというものは存在しない。
にもかかわらず、彼女の出現は、そういった魔法を使ったとしか思えないものだった。
しかし、エドはクーネアの出現に驚くことなく答える。
「どうだった、首尾は?」
「はい、滞りなく」
クーネアは眼鏡を持ち上げながら頷く。
「フリエルノーラ国は、ガレンシア公国との仲介をチェインハルト商会に委託することに同意いたしました。魔鉱石の採掘事業についても商会主導で行えます」
「ふむ、素晴らしい」
エドはパンと手を打ち合わせる。
「クーネア。君のおかげで商会は信じられないペースで発展している。有能な部下というのは何者にも変えがたいものだね」
「恐縮です」
エドの褒め言葉にも、表情を緩ませることなく頭を下げるクーネア。
「しかしエド様の遠大な計画を思えば、まだまだ物足りません」
「焦りは禁物だよ、クーネア」
エドは苦笑する。
「なにしろ規模は大きく、同時に緻密さも要求される。『魔王復活』という事業のためには失敗は許されない。急ぐことより、失敗の芽を潰すことを優先せねば。この輩のようなね」
そう言って、エドは足元に倒れている男を軽く蹴る。
「うぎっ!」
その男――ガレンシア公国保護国管理官ギルバートは悲鳴を上げた。
「な、なんなんですか貴方がたは!? 私をこのような目に遭わせて、公国が黙っていると思いますか? 公国の背後にはヴォルフォニア帝国もいるのですよ? 帝国と事を構えれば、いかな大商会といえど……ぎゃ!」
ふたたび蹴りつけられ悲鳴を上げるギルバート。
「馬鹿な方だ……帝国が貴方のような馬鹿一人を気にかけるわけがないでしょう。有能な人材ならまだしも、私欲で姫を手に入れようとする色ボケなど」
「どう排除しようかと考えておりましたが、ちょうどよかったですね。まさかドラゴンが吹き飛ばしてくれるとは」
クーネアの言葉に頷き、エドはギルバートの襟首を掴んで起こす。
「ええ……行方不明、ということで誰も気にしないでしょう」
「ぐっ……わ、私をどうするつもりだ!」
「死んでいただきます。と言っても直接手を下すのは、私は好きではないのでね」
そう告げると、エドはいつもはめている手袋を脱いで、右手のひらにある『なにか』をギルバートに見せた。
「な!? なんだ、それは……それは……あ、が、ぐ、うぉおおおおおおお!」
その『なにか』を見るなり、ギルバートは恐怖に顔を痙攣らせる。
目を血走らせ、頭を振り回し――
――やがて彼は泡を吹いて絶命した。
エドは手袋をはめなおすと、何事もなかったように歩き出す。
「次の用事はなんだったかな」
「はい。ヴォルフォニア帝国の騎士団長ガイアン様と面会の予定です」
そんな会話を交わしながら歩いていく二人。
次の瞬間。
その姿はかき消え、森には樹々のざわめきと動物たちの鳴き声だけが残った。
0
あなたにおすすめの小説
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m
おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。
お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる