239 / 286
第5章 天空塔ダンジョン編
EX35 皇帝と博士の話・Ⅱ
しおりを挟む
ヴォルフォニア帝国の帝都。
大陸の北端にあるこの大都市にも、地震が発生していた。
「陛下、お怪我は!?」
「問題ない」
駆け寄ってきた家臣に向け、そう答える。
そう大きな揺れではなかった。
彼には、護衛の兵士がすぐさま駆けつけ、崩落物を警戒してくれた。
怪我などしようもない。
それよりも。
「帝都に被害は出ていないか? 宮殿内は?」
「はっ。これから調査をいたしますが、大きな被害は発生していない模様です」
「そうか……」
ならばいい、と息をついたそのときだ。
――ドゴオオオオオン!
と大砲でも撃ち込まれたかのような大音声が響き渡る。
宮殿の奥にある離れの方角だ。
「ライレンシア!」
皇帝――フィルシオール十七世は慌てふためいて玉座の間を飛び出す。
追いかける家臣を無視して、回廊を抜け、離れへ。
広大な内庭に建てられた、石造の離れ。
ライレンシア博士の研究室となっているその建物が崩壊していた。
上半分が吹き飛んで、周囲に瓦礫となっていた。
下半分が残った建物からは煙が立ち昇っている。
「ライレンシア! 無事か!」
普段の泰然自若とした態度からは想像もつかない取り乱しぶりで駆け寄る。
自ら瓦礫を避けようと手を伸ばす。
「危険です、陛下! ここは我らが!」
兵士たちが急いで皇帝の前に立ち、撤去作業を始める。
「うう……」
と、建物の壁の向こうから声が聞こえた。
「ライレンシア!」
「陛下……逃げて、ください……」
「馬鹿を言うな! 今助ける!」
「いえ……私は平気ですから……それよりも、このままでは――がぁあ!」
「ライレンシア! どうした!?」
苦しげな声に、フィルシオールはますます平生を失う。
「早くしろ! 彼女を――」
だが、彼が最後まで言い切るより早く。
――ドガアアアアアアアアアン!
建物の残り下半分が突然吹き飛んだ。
「陛下!」
兵士がフィルシオールを庇う。
その一人が石塊をまともに受け、吹っ飛んでいった。
「なっ……!」
内庭の地面に倒れたフィルシオールは愕然としてその姿を目にした。
全壊した研究室の建物の上空に、ライレンシアが浮いていた。
否――それがライレンシアだと、彼はすぐには気づけなかった。
元の彼女は典型的なエルフの外見だった。
白い透き通るような肌に、絹のような金色の髪。
両眼は澄んだ空のような青色。
しかし今や彼女はその全てを失い、代わりにまるで違う姿を獲得していた。
あらゆる光を飲み込むような闇色の肌。
大量の血を吸ったかのような赤色の髪。
人の欲を掻き立てるような黄金色の両眼。
そんな姿の存在をこれまで見たこともないはずなのに。
フィルシオールは、自然とその言葉を口にしていた。
「……魔族?」
大陸の北端にあるこの大都市にも、地震が発生していた。
「陛下、お怪我は!?」
「問題ない」
駆け寄ってきた家臣に向け、そう答える。
そう大きな揺れではなかった。
彼には、護衛の兵士がすぐさま駆けつけ、崩落物を警戒してくれた。
怪我などしようもない。
それよりも。
「帝都に被害は出ていないか? 宮殿内は?」
「はっ。これから調査をいたしますが、大きな被害は発生していない模様です」
「そうか……」
ならばいい、と息をついたそのときだ。
――ドゴオオオオオン!
と大砲でも撃ち込まれたかのような大音声が響き渡る。
宮殿の奥にある離れの方角だ。
「ライレンシア!」
皇帝――フィルシオール十七世は慌てふためいて玉座の間を飛び出す。
追いかける家臣を無視して、回廊を抜け、離れへ。
広大な内庭に建てられた、石造の離れ。
ライレンシア博士の研究室となっているその建物が崩壊していた。
上半分が吹き飛んで、周囲に瓦礫となっていた。
下半分が残った建物からは煙が立ち昇っている。
「ライレンシア! 無事か!」
普段の泰然自若とした態度からは想像もつかない取り乱しぶりで駆け寄る。
自ら瓦礫を避けようと手を伸ばす。
「危険です、陛下! ここは我らが!」
兵士たちが急いで皇帝の前に立ち、撤去作業を始める。
「うう……」
と、建物の壁の向こうから声が聞こえた。
「ライレンシア!」
「陛下……逃げて、ください……」
「馬鹿を言うな! 今助ける!」
「いえ……私は平気ですから……それよりも、このままでは――がぁあ!」
「ライレンシア! どうした!?」
苦しげな声に、フィルシオールはますます平生を失う。
「早くしろ! 彼女を――」
だが、彼が最後まで言い切るより早く。
――ドガアアアアアアアアアン!
建物の残り下半分が突然吹き飛んだ。
「陛下!」
兵士がフィルシオールを庇う。
その一人が石塊をまともに受け、吹っ飛んでいった。
「なっ……!」
内庭の地面に倒れたフィルシオールは愕然としてその姿を目にした。
全壊した研究室の建物の上空に、ライレンシアが浮いていた。
否――それがライレンシアだと、彼はすぐには気づけなかった。
元の彼女は典型的なエルフの外見だった。
白い透き通るような肌に、絹のような金色の髪。
両眼は澄んだ空のような青色。
しかし今や彼女はその全てを失い、代わりにまるで違う姿を獲得していた。
あらゆる光を飲み込むような闇色の肌。
大量の血を吸ったかのような赤色の髪。
人の欲を掻き立てるような黄金色の両眼。
そんな姿の存在をこれまで見たこともないはずなのに。
フィルシオールは、自然とその言葉を口にしていた。
「……魔族?」
0
あなたにおすすめの小説
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m
おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。
お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる