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第二幕
2-1・健康
しおりを挟む神様というものについて、最近よく考える。
然乎さんは自分のことを神様だという。
俺はそれを信じているわけではない。むしろ、変なことを言う女子高生だなとさえ思っている。
だが、なら、神様とはいったい何なのだろうかとも、最近は思い始めていた。
日本は。そもそも、神様という存在についての認識が曖昧だ。
先日、然乎さんに連れられて行ったおでかけは非常に興味深かった。
その中で訪れた二カ所の神社。
神様と自称するぐらいなのだから、然乎さんと何か関係がある場所なのかと尋ねれば、そういうわけではないという。
両方、手を合わせ目を閉じていたので、何かお願い事をしたのかと帰り道で訊ねてみたら、彼女は、
「いいえ。願い事をしたわけではありません。ただ、ご挨拶を少し」
そんな風に言っていた。
ご挨拶。それもまた、彼女が神様だからなのだろうか。わからない。
わからないことだらけだった。でも。
「願い事、かぁ……」
俺は、それについてを前より真剣に考えるようになっていた。
「麻菊? どうしたんだ、珍しい」
仕事中だというのに、あまりに俺がぼんやりとしてしまっていたからだろうか。上司に声をかけられて、俺は慌てて謝った。
「あ、部長! すみません、少し考え事をしてしまって……」
「ん? どうしたんだ、本当に珍しいじゃないか。ま、たまにはそういうこともあるだろう。だが、仕事中だからな。ほどほどにしておけよ」
普段、真面目に仕事してきたからこそだろうか。上司は怒るでもなく寛容に許し、そんな風に声までかけてくれた。
上司の方こそ珍しい。
いつも俺を、ありもしない仕事で休日に呼び出したりするくせに。
だからもしかしたら魔が差したのかもしれない。
「あの、部長。もし、願い事が一つ何か叶うなら、部長なら何を願いますか?」
気付けばそんなことを口に出していた。
「なんだなんだ、いきなりだな。願い事? 願い事、ねぇ……」
今日は余程、機嫌がいいのだろうか。どう考えてもぶしつけだったと思われる俺の質問を、上司は咎めず、剰え真剣に考え始めてさえくれる。
「その願い事、というのは何でもいいのか?」
「そうですね、えーっと……人に迷惑がかかることや、金銭が絡むこと以外、ですかね……」
「制約があるのか。うーん、そうだなぁ……」
一応と最低限だけ口に出せば、一瞬、眉を寄せはしたものの、上司は引き続きしばし考えて。
「あ~~……そうだな。健康かなぁ……」
そう、結論を出したようだった。
「健康、ですか?」
「そうだ。俺ももう若くはないからな。寄る年波には勝てないんだよ。でも、病気で苦しみたくなんてないし、健康で長生きしたいから、それだな、うん」
聞き返すとそんな風に続けてくる。なるほど、と、俺はどこかで納得した。
なるほど、確かに。健康は大事だ。
俺も病気で苦しみたくない。
「なるほど、確かに健康は大事ですね。お応え頂いてありがとうございます、変なことを聞いてしまってすみません」
「いいよ、たまにはな」
礼を言うと、上司は構わないと手を振って仕事に戻っていった。俺も気持ちを入れ替え、机に向き直る。
そう言えば然乎さんが言っていた条件に、そう言ったものは含まれていただろうか。思い返してみるが、記憶にない。
願い事には条件があって、それなりに多かったせいで全部は覚えきれていなかった。
今度、彼女と会った時に訊ねてみようと俺は思った。
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