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1話:ストーカー級の1ヶ月連続プロポーズに、うさぎ獣人はこう答える。
「君を一生幸せにする。」
ありきたりだけど、だからこそ使われ続ける定番のフレーズ。
相手の為に全てを費やし、相手の為に生きるという意思を表す言葉。
この言葉を聞いて嫌な気持ちになる人はいないだろう。
俺も、そう思ってた。
まぁ、俺は男だからどちらかというと言いたいって方だけど、悪い言葉だとは思っていなかった。
そう、1ヶ月間連続ででかい花束と共にこの言葉を聞き続ける事になる、その前までは。
◇
「何度来たって返事が変わるわけねえだろ!」
仕事前の準備時間、店の扉の前で俺は目の前の花束を持った銀髪男に向かって、いつも通り声を張り上げる。
こんな大声、朝から近所迷惑になるかもかもしれないがこればっかりは許してほしい。これは、この1ヶ月間毎日の様に告げられるこの言葉と渡される花束に心の底から辟易している俺の心の叫びだから。
180は超えている男の半身を隠すサイズの花束は、うさぎ獣人の俺にとっては殆ど全身が隠れるくらいの大きさで、毎回処理に困っては近所のガキ共や奥さん方に配っていても持て余すものだ。
なぜなら毎日こいつは現れ、律儀に違う花の乗ったこれを渡してくるから。
ここ1週間は周囲の奴らもまだ花が元気だからいらないとか言って断ってくるから俺は仕方なく傘立てを流用したりして花瓶を増設してなんとか処理している。
うちは道具屋だってのに最近じゃ花屋と間違えられてブーケの依頼まで来る始末だ。営業妨害も甚だしい。
「また明日も来るね。良い1日を、トア」
俺の言葉が聞こえてないかのように花束を押し付けて帰る男の名前はシグ。1ヶ月間毎朝押しかけてくる暇人のような行動をしているこいつが王家お抱えの天才宮廷魔術師だというから人は見かけによらない。
宮廷魔術師は、国のなんか面倒な事件とか、でかい災害とかをなんとかさせられるめちゃくちゃ凄い役職らしいけど、そんな奴の趣味が場末の道具屋での公開プロポーズだってんだから世も末だ。
俺がこいつと出会ったのは約1ヶ月前、たまたまうちで扱っていた商品が大ヒットしてしまい、王家への献上命令が出た為、生まれて初めて城の中に入った時だった。
店長である親父からこういう時はきちっとして行けって言われて着慣れない正装で城を歩いていたら迷ってしまい、焦って階段から転げ落ちそうになった時に俺を受け止めたのがこいつだった。
それに関しては感謝してるが、城から帰った翌日、名乗ってもいない俺の元にこいつが来た時にはシンプルに王家の情報漏洩リスクの心配をした。
◇
そんなわけで、国の諸々の要である宮廷魔術師様の迷惑行為に辟易していた俺は、気の迷いで1番しては行けない行動をとってしまった。
やばい行為ってのは往々にして思いついた時は稀代の名案に思えるから怖いよな。
「君を幸せにする。だから俺と付き合ってほしい」
いつものように同じ言葉をかけてくるシグを見上げた俺は、若干のノイローゼも入ってたと思うがその言葉を口にしてしまった。
「いいぜ」
「………!!!!トア、本当?嬉しい!」
突然視界が花で埋まった。
いや、花束を持ったままシグが俺を抱き上げたから花に顔が押し付けられたらしい。
(こいつの笑顔初めて見たかも)
このやばい行動がなけりゃ、彫像の様に綺麗だと思っていた面で幸せそうに目を細めたシグが俺に顔を寄せる。あまりの喜びように若干の罪悪感が生まれるが、俺は抱き返すことはせずそのままにしていた。
「そろそろ降ろせ。お前今日も仕事あるんだろ?」
そのまま結構な時間が経ったが、ほっとくと一生このままな気がするほど動かないシグが怖くなって俺は声をかける。
シグは数秒俺を強く抱きしめたのち、丁寧に地面に下ろした。
「夜、また来るね。待っていて、トア」
そう言ってでけえ花束を置いて店の扉を閉めるシグを見送って俺は計画を脳内で反芻する。
俺がシグの告白を受け入れたのは投げやりになったからじゃない。
穏やかなやつが多いうさぎ獣人の中で喧嘩っ早い短気野郎と有名な俺でも、流石に人生を棒に振るような真似はしない。
シグは俺に告白してる。
だから俺の事が好きってのは事実なんだろう。
うさぎ獣人は男も女も可愛いと言われることが多い種族だ。最初はこの薄茶のショートヘアと顔立ちから女と勘違いしてんのかと思ったが、俺の声を聞いても態度を変えなかったことからそこはシグにとってハードルではないらしい。
ここまで聞くと、告白を受けたって事は俺にも脈があるみたいだがそれはない。
これはあくまで毎朝の迷惑行為をやめさせるための第一歩だ。
シグと俺はあの時が初対面だ。だからきっと一目惚れされたんだろう。俺はここに目をつけている。
一目惚れってのは最初が1番楽しくてだんだん幻滅していくもんだ。顔しか知らねえ相手に自分の理想を重ねた恋愛ごっこ。
だが実際に付き合って、理想と違う行動をしたらそれは幻想を崩す爆弾になる。
どうせシグは俺をふわふわした呑気で可愛いうさぎちゃんだと思ってるだろうから、その真逆な態度を取れば夢は覚めて勝手にいなくなるだろう。
俺は世間のうさぎ獣人とは真逆をいく性格だからそうなる日は遠くない。
そうすればこの面倒な花束処理ともおさらばだ。
俺はこの密かな野望をうちに秘め、用意していた即席の花瓶に花をぶち込む。
シグから告げられる別れの言葉が今から楽しみだった。
ありきたりだけど、だからこそ使われ続ける定番のフレーズ。
相手の為に全てを費やし、相手の為に生きるという意思を表す言葉。
この言葉を聞いて嫌な気持ちになる人はいないだろう。
俺も、そう思ってた。
まぁ、俺は男だからどちらかというと言いたいって方だけど、悪い言葉だとは思っていなかった。
そう、1ヶ月間連続ででかい花束と共にこの言葉を聞き続ける事になる、その前までは。
◇
「何度来たって返事が変わるわけねえだろ!」
仕事前の準備時間、店の扉の前で俺は目の前の花束を持った銀髪男に向かって、いつも通り声を張り上げる。
こんな大声、朝から近所迷惑になるかもかもしれないがこればっかりは許してほしい。これは、この1ヶ月間毎日の様に告げられるこの言葉と渡される花束に心の底から辟易している俺の心の叫びだから。
180は超えている男の半身を隠すサイズの花束は、うさぎ獣人の俺にとっては殆ど全身が隠れるくらいの大きさで、毎回処理に困っては近所のガキ共や奥さん方に配っていても持て余すものだ。
なぜなら毎日こいつは現れ、律儀に違う花の乗ったこれを渡してくるから。
ここ1週間は周囲の奴らもまだ花が元気だからいらないとか言って断ってくるから俺は仕方なく傘立てを流用したりして花瓶を増設してなんとか処理している。
うちは道具屋だってのに最近じゃ花屋と間違えられてブーケの依頼まで来る始末だ。営業妨害も甚だしい。
「また明日も来るね。良い1日を、トア」
俺の言葉が聞こえてないかのように花束を押し付けて帰る男の名前はシグ。1ヶ月間毎朝押しかけてくる暇人のような行動をしているこいつが王家お抱えの天才宮廷魔術師だというから人は見かけによらない。
宮廷魔術師は、国のなんか面倒な事件とか、でかい災害とかをなんとかさせられるめちゃくちゃ凄い役職らしいけど、そんな奴の趣味が場末の道具屋での公開プロポーズだってんだから世も末だ。
俺がこいつと出会ったのは約1ヶ月前、たまたまうちで扱っていた商品が大ヒットしてしまい、王家への献上命令が出た為、生まれて初めて城の中に入った時だった。
店長である親父からこういう時はきちっとして行けって言われて着慣れない正装で城を歩いていたら迷ってしまい、焦って階段から転げ落ちそうになった時に俺を受け止めたのがこいつだった。
それに関しては感謝してるが、城から帰った翌日、名乗ってもいない俺の元にこいつが来た時にはシンプルに王家の情報漏洩リスクの心配をした。
◇
そんなわけで、国の諸々の要である宮廷魔術師様の迷惑行為に辟易していた俺は、気の迷いで1番しては行けない行動をとってしまった。
やばい行為ってのは往々にして思いついた時は稀代の名案に思えるから怖いよな。
「君を幸せにする。だから俺と付き合ってほしい」
いつものように同じ言葉をかけてくるシグを見上げた俺は、若干のノイローゼも入ってたと思うがその言葉を口にしてしまった。
「いいぜ」
「………!!!!トア、本当?嬉しい!」
突然視界が花で埋まった。
いや、花束を持ったままシグが俺を抱き上げたから花に顔が押し付けられたらしい。
(こいつの笑顔初めて見たかも)
このやばい行動がなけりゃ、彫像の様に綺麗だと思っていた面で幸せそうに目を細めたシグが俺に顔を寄せる。あまりの喜びように若干の罪悪感が生まれるが、俺は抱き返すことはせずそのままにしていた。
「そろそろ降ろせ。お前今日も仕事あるんだろ?」
そのまま結構な時間が経ったが、ほっとくと一生このままな気がするほど動かないシグが怖くなって俺は声をかける。
シグは数秒俺を強く抱きしめたのち、丁寧に地面に下ろした。
「夜、また来るね。待っていて、トア」
そう言ってでけえ花束を置いて店の扉を閉めるシグを見送って俺は計画を脳内で反芻する。
俺がシグの告白を受け入れたのは投げやりになったからじゃない。
穏やかなやつが多いうさぎ獣人の中で喧嘩っ早い短気野郎と有名な俺でも、流石に人生を棒に振るような真似はしない。
シグは俺に告白してる。
だから俺の事が好きってのは事実なんだろう。
うさぎ獣人は男も女も可愛いと言われることが多い種族だ。最初はこの薄茶のショートヘアと顔立ちから女と勘違いしてんのかと思ったが、俺の声を聞いても態度を変えなかったことからそこはシグにとってハードルではないらしい。
ここまで聞くと、告白を受けたって事は俺にも脈があるみたいだがそれはない。
これはあくまで毎朝の迷惑行為をやめさせるための第一歩だ。
シグと俺はあの時が初対面だ。だからきっと一目惚れされたんだろう。俺はここに目をつけている。
一目惚れってのは最初が1番楽しくてだんだん幻滅していくもんだ。顔しか知らねえ相手に自分の理想を重ねた恋愛ごっこ。
だが実際に付き合って、理想と違う行動をしたらそれは幻想を崩す爆弾になる。
どうせシグは俺をふわふわした呑気で可愛いうさぎちゃんだと思ってるだろうから、その真逆な態度を取れば夢は覚めて勝手にいなくなるだろう。
俺は世間のうさぎ獣人とは真逆をいく性格だからそうなる日は遠くない。
そうすればこの面倒な花束処理ともおさらばだ。
俺はこの密かな野望をうちに秘め、用意していた即席の花瓶に花をぶち込む。
シグから告げられる別れの言葉が今から楽しみだった。
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