ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第十三章

第八話 お前誰だ?

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 トミトを食べながら、痩せほそった男がこちらに歩いてきた。

 こいつ、今俺の名を口にしたような。でも、俺はこいつのことなんて知らないぞ。

 ペテンの時みたいに一方的に知っているパターンか?

「本当に使えないモンスターだ。御伽噺おとぎばなしに出てくるほど怪物なら、リュシアンを残忍な方法でぶっ倒してくれると思ったのに」

 ガリの男がホラゾンウルフの死骸を踏みつける。その瞬間、モンスターの腐った肉は簡単に千切れやつの足は体内に沈んでいく。

「ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 僕の足が汚れる!」

 腐った肉体に足が沈み、男は驚愕の表情を浮かべながら声を上げる。

 そりゃ、腐った肉に力を入れたらそうなるだろう。こいつ、バカだな。

 まぁ、この男がホラゾンウルフを町に連れ出した張本人だと分かった以上、野放しにする訳にはいかない。

 得物で攻撃する訳にはいかない。ここはテレーゼに協力してあの男の動きを封じよう。

「くそう。くそう。くそう。僕の足が汚れたじゃないか! これも全てお前のせいだ! リュシアン!」

「なんで俺のせいなんだよ。自業自得じゃないか。そもそもお前誰だよ。俺は人に恨みを持たれるようなことをした覚えはないのだが?」

 正直に答えると、男は細めていた目を大きく見開かせる。

「僕のことを覚えていないだと! それにあれだけ僕を民衆の前で恥を掻かせておいて、無自覚とかふざけるなよ!」

 痩せ細っている男は声を上げ、睨み付けるかのように目を細める。

 この男を民衆の前で恥をかかせた? 言動からして貴族ぽいけど、俺の知っている貴族はユリヤの義理の姉であるヴィクトーリアだけだぞ。

 首を傾げながらも男をジッと見る。

 金髪の髪に細い目、それに貴族を思わせるような言動…………もしかして。

「チャプスなのか?」

「王子をつけろよ! 愚民が! 僕はお前を許さないからな! あんな薄暗くてジメジメしたところに閉じ込めやがって!」

「いや、それは自業自得だろう。これまでの行いが悪かったからあんな結果になったんだよ。それにお前を閉じ込めたのは俺ではなく、レンナルト王様じゃないか」

「うるさい! うるさい! うるさい! 全てはお前のせいだ! 見ろ! この体を! まともに食事がもらえないせいでこんなに痩せてしまったぞ!」

「痩せてよかったじゃないか。あのままでは糖尿病になっていたぞ。糖尿病は完全には治らない病気らしいからな」

「全然良くねぇよ! 危うく餓死しそうになったんだぞ!」

 本人確認のために悪いと思いつつも揶揄からかってしまったけど、この反応は確かにチャプスで間違いない。

「リュシアンさん、あの人ってもしかして」

 離れて様子を伺っていたユリヤたちが俺のところに駆け寄る。

「ああ、チャプス王子だ」

「うっわ、丸々太ったブタが、ガリブタになっている。あれはあれでキモいわね」

「あの人がわたくしの元婚約者だった人ですの。もう彼との縁談は絶対に拒絶ですわね」

「僕が牢獄に閉じ込められている間に、また女を増やしたのかよ」

 チャプスが悔しそうに歯嚙みする。

 変な言い方をするなよ。エリーザ姫は同じ職場の仲間として一緒にいるだけなんだから。

「人聞きの悪いことを言うなよ。彼女は同じハンターの仲間だ。とにかくお前が俺のことを恨んでいることは分かった。だけど今はそんなことはどうでもいい。モンスターを使って町を襲撃した以上、お前を野放しにしておくわけにはいかない。ここで捉えさせてもらう。テレーゼ頼んだ」

「任せて、せっかく牢から出られたみたいだけど、また豚小屋に逆戻りね」

 チャプスを捕らえようと、テレーゼが息を吸って口をすぼめたその時。

「誰か捕まるかよ! ここは戦略的撤退だ!」

 チャプス王子が懐から球体を取り出す。

 あれはまさか。

「あばよ! 次は絶対にお前をざまぁしてやるからな!」

 取り出した球体を彼は地面に投げつけた。

「みんな目を瞑るんだ!」

 声を上げて叫んだと同時に俺は両の瞼を閉じる。

 やつが地面に投げつけたのはフラッシュ玉だ。球体から放たれる光を見ると、一時的に盲目となって視界が奪われてしまう。

 心の中で三秒ほど数えて瞼を開けると、チャプスの姿がどこにも見当たらなかった。

 逃げられてしまったか。まぁいい。やつは俺に逆恨みをしている。俺の方から探さなくても、やつの方から来てくれるんだ。なら、ムリに追いかけて探す必要はない。

「みんなは大丈夫か」

「はい、視力に問題はありません」

「あたしも大丈夫よ」

「わたくしも目に異常は感じられませんわ」

 俺の警告が間に合ったようでホッとする。

「とりあえず、ホラゾンウルフの死体を処分しよう」

 柄に嵌めてある属性玉に意識を集中させると、目の前に火球が現れる。出現した火の玉をモンスターに当て、亡骸を焼却した。

 ホラゾンウルフはゾンビモンスターだ。だから素材として使える箇所がほとんどない。腐敗臭を周辺に撒き散らすだけなので、早期に焼却するのがいい。

「うーん、あれ? ここは? どこ?」

 ユリヤに預けていたエレーヌさんが目を覚ましたようで、焦点の合っていない目を彷徨わせながらポツリと呟く。

「エレーヌさん気分は大丈夫ですか?」

「リュシアン君。ええ、大丈夫よ」

「エレーヌさん、落ち着いてからでいいので、この町に何が起きたのか話してくれませんか?」

「ええ、分かったわ」

 目覚めたばかりのエレーヌさんを地面に立たせ、彼女の口が開くのを待つ。

「そう、あれはリュシアン君たちが天空龍スリシオの依頼を受けて町を出たその後――」
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