文字の大きさ
大
中
小
114 / 171
第6部
第114話
寝室からミュオンの悲鳴があがると、ハイロは目の前に立つ亮介に「どけ」と短く注意をうながした。それから、有無を云わさず扉へ腕をのばすと、ガチャッではなく、バンッと、勢いよく開放し、室内の状況を確認した。
「ミュオンさん、無事っ?」
ハイロの脇から顔をだして叫ぶ亮介の目に飛びこんできた光景は、全裸の精霊がベッドの上でもつれ合っていた。ハイロはジェミャの乱入に気を留めたが、すぐさまミュオンの枕もとへ歩み寄り、具合を確認した。
「おい、だいじょうぶか」
『……あ、……はい。わたしは、なんともありません』
ハイロの登場により、内心ホッとしたミュオンは、ジェミャを押し返して起きあがると、たのもしい腕に背中を支えてもらった。裸身であることに意識がおよばないようすにつき、亮介は視線をジェミャのほうへ移した。出逢ったときから衣服を身につけない地の精霊は、ベッドから床へおりると、腰に手を当て、『そいつの卵細胞は、受精しているぞ』と断言する。
「それってつまり……、おめでたってこと?」
『水の精霊には、原始卵胞の機能があるようだ。両性体に子宮があるとはかぎらないが、特有の分泌液が開口部の奥に溜まっている。それに、この甘ったるいにおい、まちがいない。妊娠確実だ』
ジェミャは、自分の右手の内側をペロリと舐めて云う。ミュオンが悲鳴をあげた理由は、ジェミャの指が体内領域へ挿入された瞬間の、不快な刺激によるものだった。見た目は雄性のミュオンだが、ハイロと性交をくり返した結果、妊娠の初期段階へ移行していた。経過を見まもるだけの立場となったハイロは、掛け布団を引き寄せ、ミュオンの肩へあてがった。
「す、すごい。やったね、ミュオンさん。おめでとう、ふたりとも!」
亮介は心の底から祝福したが、にわかに信じられないミュオンは、自らの腹部をさすり、目を細めた。
『わたしが出産なんて、本当に可能なのでしょうか……。異種族の胎児がこの身に宿るなんて、夢のような話です……』
「そう云わず、どうか無事に産んでくれ。ようやく、おれたちは子を授かったんだ。よろこばしいことだと思わないか」
『……そう……ですね。……わたしがもっと、しっかりしなければ』
ハイロに念を押されるミュオンの瞳は、無意識にうるんでいた。やがて誕生する新たな生命には、名前が必要である。ミュオンとハイロは、暗黙の了解で亮介の顔を見据えた。
★つづく
感想 0
あなたにおすすめの小説
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
勇者に捨てられた俺のヒーラー(♂)が、世界一可愛い
いちみりヒビキ最弱モブ青年・レンが出会ったのは、銀髪ショートボブの儚げの青年ヒーラー・カオル。
健気で天然、守ってあげたくなるのに色気は凶器級。世話焼きなレンは毎日距離を詰められ、気づけば守護欲MAXのスパダリ化。
星空の下での初キス、密着修行、両片想いのすれ違い――。
だが現れた勇者は、カオルを侮辱し価値を否定する。その瞬間、モブ攻めレンはブチ切れた。
「その言葉、取り消せ」
これは、最弱攻めが愛する美人受けのために勇者をぶっ飛ばし、溺愛覚醒する異世界BL。
ざまぁあり、甘々あり、最後はてえてえのハッピーエンドです。
※完全健全です。安心してお読み頂けます。
◾️AI活用
・表紙(AIイラスト)
・会話テンポの調整と文章校正
・タイトル案、概要案など
◾️各話リスト
1 召喚された美青年
2 世話焼きモブ青年と健気ヒーラー
3 密着イベント連発
4 星空の下、初めてのキス
5 勇者一行、来村
6 モブ、勇者に喧嘩を売る
7 絶望、それでも立て
8 愛でぶっ倒す勇者戦
9 お前しか見えてねえ
10 手を繋いで、世界へ
異世界転生してBL漫画描いてたら幼馴染に迫られた
はちも異世界転生した元腐男子の伯爵家三男。
病弱設定をうまく使って、半引きこもり生活を満喫中。
趣味と実益を兼ねて、こっそりBL漫画を描いていたら──
なぜか誠実一直線な爽やか騎士の幼馴染にバレた!?
「……おまえ、俺にこうされたいのか?」
そんなわけあるかーーーっ!!
描く側だったはずの自分が、
誤解と好意と立場の違いにじわじわ追い詰められていく。
引きこもり腐男子貴族のオタ活ライフは、
王子と騎士に目をつけられ、
いつの間にか“逃げ場のない現実”へ発展中!?
誠実一直線騎士 × 流され系オタク
異世界・身分差・勘違いから始まる
リアル発展型BLコメディ。
※基本的に月・木の20時更新予定です。
俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜
陽七 葵 主人公オリヴァーの妹ノエルは五歳の時に前世の記憶を思い出す。
この世界はノエルの知り得る世界ではなかったが、ピンク髪で光魔法が使えるオリヴァーのことを、きっとこの世界の『主人公』だ。『勇者』になるべきだと主張した。
そして一番の問題はノエルがBL好きだということ。ノエルはオリヴァーと幼馴染(男)の関係を恋愛関係だと勘違い。勘違いは勘違いを生みノエルの頭の中はどんどんバラの世界に……。ノエルの餌食になった幼馴染や訳あり王子達をも巻き込みながらいざ、冒険の旅へと出発!
ノエルの絵は周囲に誤解を生むし、転生者ならではの知識……はあまり活かされないが、何故かノエルの言うことは全て現実に……。
友情から始まった恋。終始BLの危機が待ち受けているオリヴァー。はたしてその貞操は守られるのか!?
オリヴァーの冒険、そして逆ハーレムの行く末はいかに……異世界転生に巻き込まれた、コメディ&BL満載成り上がりファンタジーどうぞ宜しくお願いします。
※初めの方は冒険メインなところが多いですが、第5章辺りからBL一気にきます。最後はBLてんこ盛りです※
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえのんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。