一途なエリート騎士の指先はご多忙。もはや暴走は時間の問題か?

はなまる

文字の大きさ
8 / 58

7-2シエルの唇は魅惑的

しおりを挟む

 ボルクはシエルと口づけをしてしばし我を忘れた。

 もっと触れてみたい。この柔肌に触れたら彼女はどんな反応をするのだろうと想像するだけでビリビリとした電流のようなものが彼を刺激していた。


 口づけが激しくなるがシエルもそれを拒みはしなかった。

 そのうち彼女の乳房にボルクの身体が触れた。

 薄い寝間着越しの乳房の柔らかさは、ボルクの硬い筋肉に触れると先の尖りが硬くなった。


 それを感じ取ったボルクの雄は破裂しそうなほど高ぶってしまう。

 無意識にシエルの脚の間にそれを押し付けた。沸き上がった劣情に理性はあまりに無意味だった。

 だが、シエルがそんな動作に怯えて勢いよくぎゅっと股をすぼめたせいでボルクの股間にギリと痛みが走った。

 おかげで一気に熱が冷めた。

 ボルクは急いでシエルから離れる。


 こんな気持ちになってはいけない。彼女を求めてはいけない。

 でも、自分はどうしようもなく彼女を欲していると確信するが、そんな事などおくびにも出さないようにして言った。

 「すみません。つい、私もハチミツが好きなので。さあ、少しは食事が食べれそうですか?」

 ボルクは何を言ってるんだと自分をあざ笑う。


 「だからってこんな事…もしかしてボルク私があの噂通りの女だって…」

 「ばかな事を言わないで下さい。シエル姫は純真で無垢な方だと知っています」

 「じゃあ、キスも初めてだって知ってたの?」

 シエルはそう言って俯く。

 私ったら、な、何を言って…

 「そんなつもりでは…あなたの初めてを奪ってしまって…申し訳ありません」

 彼は申し訳なさそうに頭を下げる。

 「違うの。あなたに奪われてうれしかったから…だからそんな事言わないで」

 ボルクの気まずそうな瞳が上向いた。紺碧色の瞳が見開かれて輝きを増した。


 「コホン。とにかくこんなことは二度としません。さあ、食事が冷めてしまいますので」

 彼はすでに夢の世界から現実の世界に戻ってしまったらしい。

 シエルもこれ以上いけない事だと分かっている。だから彼が言った事は正しい事だと。

 はっきりと。


 「ええ、そうね。食べてみようかしら」 

 食べてみようかしらだなんて…何だかおかしくなる。

 だってこんな時何て言えばいいのかもわからないもの。

 シエルはどうしていいかわからないままボルクが何かを始めた。



 ボルクは何もなかったかのように急いでシエルが座れるようベッドの背もたれに枕やクッションを置く。

 「さあ、これでいいでしょう。これを膝の上に置いて下さい」

 「えっ?あぁ、ええ」

 シエルは背もたれに寄りかかるとテキパキしたボルクからトレイを受け取る。


 ボルクはスープをさじですくうとシエルの口元に運ぼうとしたが。

 「だ、大丈夫よ。自分で食べれそうだから」

 急いでさじを受け取るとスープを掬って飲んでみる。

 痛かった喉もお茶がきいたのかスープが飲み込めた。

 「ボルク、飲めそうよ。このスープおいしいわ」

 「そうですか…良かった」

 少し残念そうに言うボルクの指は親指と薬指が摺りあわされている。

 えっ?何?恥ずかしいでもないし、言いにくいこともないわよね。

 彼の心理が読み取れない。

 でも、怒っているわけではない。

 シエルは食べ始めてみるとお腹が空いていたのかスープもお粥もすべて食べれた。


 最期に薬を飲むと彼の表情がほっとした顔に変わる。

 そしてすぐにいつもの騎士隊長の顔に戻ってしまった。

 シエルの隣でてきぱきと食べ終わったトレイを片付けている。

 ボルクあなたにもっと近づきたいのに、もうバリヤーを張ってしまうのね。



 「食べれたじゃないですか。良かった。また休みますか?」

 「ええ、そうね。もう少ししたら着替えがしたいとべルールに伝えて下さい」

 「ですが今はもう少しお休みになられた方がいいかと」

 「ええ、そうね。休むからウィスコンティン様もう下がってちょうだい」


 「はいわかりました。でもひとりで起き上がってはいけません。もし倒れたりしたら大変ですので」

 「じゃあ、どうすれば?あっ、そうでした。べルールもアマルも熱が出たんですよね?ふたりは大丈夫ですか?」

 「はい、シエル姫と同じ流行り病だそうです。薬ももらったし同じ食事を持っていくように言ってありますので。後で様子を見て来ます」



 シエルは気づく。

 「まあ、ボルクは大丈夫?私たちキスしたわ。移ったらどうしましょう」

 「心配いりません。この流行り病にはかかったことがあるのです。だから心配いりません。安心して下さい」

 ボルクの指を親指と中指で擦り合わせていて…もしかしてうれしいの?



 何が?ああ、そうか、病気が移る心配がないんですもの。

 「良かったわ。あなたに移したら何を言われるか…」

 「大丈夫です。あなたに移されるなら俺は…いや、何でもありません」

 シエルはクスッと笑った。

 ボルクもそんな彼女を見て微笑んだ。

 いつの間にかふたりの間を柔らかな空気が取り巻いていく。



 惹かれ合っているふたりの気持ちは引き合う磁石のように。

 離れたくない。

 離したくない。

 こんな事していてはいけないのに…

 互いにそんな気持ちが沸き上がっていく。



 だが、そんな空気もボルクが立ち上がり部屋を出るころには散霧していた。

 「さあシエル姫、少し休んでください。私は侍女の様子を見て来ますので」

 「ええ、お願い。ありがとうボルク」

 シエルがそう言うとボルクの顔には緊張が走り、ぎゅっとトレイを握りしめた。

 そして足早に部屋を出て行った。


 扉の外でボルクはしばらく動けなかった。

 サージェスの言った言葉が頭をよぎった。

 この旅の間だけでも楽しむんだなと、そんなこと出来るわけがない。

 彼女は清らかなままオーランド国の皇帝に差し出されなければならないんだ。

 もし俺が純潔を奪ってみろ、噂はやっぱり本当だったとシエルは間違った烙印を押されることになるんだから。

 俺はそんな事絶対にしたくはない。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

完結(R18 詰んだ。2番目の夫を迎えたら、資金0で放り出されました。

にじくす まさしよ
恋愛
R18。合わないと思われた方はバックお願いします  結婚して3年。「子供はまだいいよね」と、夫と仲睦まじく暮らしていた。  ふたり以上の夫を持つこの国で、「愛する夫だけがいい」と、ふたり目以降の夫を持たなかった主人公。そんなある日、夫から外聞が悪いから新たな夫を迎えるよう説得され、父たちの命もあり、渋々二度目の結婚をすることに。  その3ヶ月後、一番目の夫からいきなり離婚を突きつけられ、着の身着のまま家を出された。  これは、愛する夫から裏切られ、幾ばくかの慰謝料もなく持参金も返してもらえなかった無一文ポジティブ主人公の、自由で気ままな物語。 俯瞰視点あり。 仕返しあり。シリアスはありますがヒロインが切り替えが早く前向きなので、あまり落ち込まないかと。ハッピーエンド。

今宵、薔薇の園で

天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。 しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。 彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。 キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。 そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。 彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。

お見合いに代理出席したら花嫁になっちゃいました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
綾美は平日派遣の事務仕事をしているが、暇な土日に便利屋のバイトをしている。ある日、お見合いの代理出席をする為にホテルへ向かったのだが、そこにいたのは!?

【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

たまこ
恋愛
 公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。  ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。 ※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。

処理中です...