文字の大きさ
大
中
小
1 / 24
大学生 編
センパイくんと、コウハイくん
「あっ、あの人、オオカミのアルファだよ。確か、狼谷って人」
「えっ、本当だ、めっちゃイケメン! お近づきになりたいなあ」
「無理でしょ、だってあんたイタチのベータじゃん」
「いいじゃん、夢ぐらい見たって。あんただって、ネコのベータでしょ。ホント夢がないなあ。いいなあ、ああいうアルファと付き合えたら、めっちゃ羨ましがられるんだろうなあ」
「そりゃそうでしょ。アルファの中でも肉食なんだから。……あ、でも一緒にいる男の人、草食のベータじゃない?」
「本当だあ、いいなあ。友達だとしても、アルファの近くにいれて」
「あっ、もう講義の時間だ」
「あの人、どの講義取るんだろう~」
そうだろう、そうだろう。
オレは、大学の構内で、少し遠い所にいる女子二人の会話を聞き流しながら、オレの後ろにいる奴をちらりと振り返った。
「なに? センパイ」
オレより頭一つ分でかいそいつは、欠伸をしながら、振り返ったオレを見た。
少し明るめの灰色の髪、緑に煌めく瞳、そして何より、造作の整った少し堀の深い顔立ち。
雰囲気のある目立つイケメン、というのはこいつのような奴を言うのだろう。
「いや、相変わらずモテるんだなあと思って」
あきれたようなオレの言葉に、そいつはふっと鼻だけで笑った。その仕草さえサマになる精悍な男前さに、オレは改めて溜息を吐いた。
こいつの名前は、狼谷 凛旺。
この世界の勝ち組である、アルファさまだ。
しかも、肉食、草食に分かれる種別でも、勝ち組の肉食、オオカミ獣人である。
つまり、勝ち組オブ勝ち組、モテるのが確約された人生イージーモード野郎なのである。実家も太い。羨まし過ぎる。
一方、センパイと呼ばれたオレは、本当に一年先に生まれただけの、平凡オブ平凡野郎、どこにでもいる草食オメガだ。
名前は、宇佐木 寧。
顔だって普通、成績だって普通、実家も普通。
大学に100人はいるようなオレと、大学でも一握りしかいない上位層のこいつが、なぜ一緒に居るのかというと……。
「そういやセンパイ、昨日のアニメ見た? 新しく仲間になった、ライオンの魔法少女がバッタバタと敵をなぎ倒したシーン、めっちゃ作画良くなかった!」
「見た! ライオンだから、肉弾戦でいくのかと思ったら、意表をついて魔法で戦ってたよな。あのエフェクトめっちゃかっこよかった」
「だよな、だよな」
そう。
オレたちは俗にいう、オタクなのであった。
こんな顔の良い、声も良い奴から繰り出される、魔法少女という単語。
中々、最初は慣れなかったが、今ではアニメ研究会の同好の士として、また可愛い後輩として仲良くやっている、と思う。
「やっぱり、センパイが一番わかってくれるわー。他のアニ研の奴ら、ネコちゃんかわいー、とかパンツ見えたとか、そいうのばっかりだもん。もっと大きい所見て欲しいよなあ」
「……パンツはオレも探した」
「マジかよセンパイ、げんめつだわ~」
「いいや、お前も一時停止して見たに違いない。オレにはわかる」
構内をてくてく一緒に歩きながら普通に話をしていたと思っていたのだが、ふと、会話が途切れた。
なんだと思って振り返ると、狼谷が、本当によくわからない、という顔でキョトンとしていた。そして、口を開いて、
「なんで、二次元でパンツ見たいの? 見せてもらえば良いじゃん」
のたまったのは、勝ち組のセリフ。
そして、アニ研でこれまで言われた事がおそらく無いセリフだった。
オレは、こいつのモテ人生に思いをはせずにはいられなかった。
思わず、頭が痛いように額に手を当ててしまった。
「おまえ、それは……さすがに、モテない奴に殺されるぞ」
「なんで?」
グフっと胸を刺されたような仕草をすると、狼谷は、慌てたようにオレを見た。
良い奴だ、良い奴ではあるんだが、生まれてこのかた女子にモテた事が無い獣人には、キツイセリフだというのが本当にわからないようだった。
「あ、でも、ウサギはいらないかなぁ。あいつら、勝手に見せてこようとするし、気持ち悪ぃ」
そして、今度は本当に胸の奥に言葉のナイフが刺さった。
ぐっと、言葉に詰まるのを悟られ無いように、また前を向いた。
「お前、さすがにそれは、偏見じゃないのか。今の世の中、種別で差別すると、怒られるぞ」
そして、何事もなかったかのように歩きだす。狼谷も、一緒に歩きだした。
「そうかなあ。オレ、ウサギ嫌いだからわからん」
オレは、それには何も言えずに、無言で歩く事しかできなかった。
だって、オレは、こいつが嫌いなウサギ獣人だからーー。
感想 0
あなたにおすすめの小説
親に虐げられてきたβが、Ωと偽ってαと婚約してしまった話
さるやま◆瑞希(受け)語り
□アキ(攻め)語り
攻め→→→→←←受け
眞鍋秋人(攻め)
優秀なα。真鍋家の次期当主。本質は狡くて狡猾だが、それを上手く隠して好青年を演じている。瑞希にはアキさんと呼ばれている。
高宮瑞希(受け)
Ωと偽っている平凡なβ。幼少期の経験からか自己肯定感が低く、自分に自信がない。自己犠牲的。
有栖蕾
花の精のように美しいと名高い美少年のΩ。アキさんの元婚約者(と言っても、正式な婚約関係になく、幼少期の口約束程度)であり、アキさんのことをまだ好いている。瑞希のことを秋人の婚約者として紹介され、許せない相手になった。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
【完結】イケメンのクラスメイトと二人組になったらめちゃくちゃ執着されてた
時「はい、じゃあ二人組作って」──あまり人付き合いが得意ではない夏稀(なつき)にとってそれは地獄の言葉。
けれど高校ではちがう。なぜなら新しくできた友達と『二人組』協定を結んだから。
もう二人組なんて怖くないと思っていた矢先、その友達が風邪で欠席。
ほかに組む相手が見つからず、先生と組むことも覚悟する夏稀だったが、そこで声をかけてきたのは美形の転校生──緒川聖夜(おがわ・きよや)だった。
「俺と二人組にならない?」
その一言をきっかけに聖夜は夏稀との距離を急速に縮めてきて──。
執着美形攻め×平凡受けのちょっと不穏な学園BL。
約九万字、全三十話+αの物語です。
異世界オークションで売られた俺、落札したのは昔助けた狼でした
うんとこどっこいしょ異世界の闇オークションで商品として目覚めた青年・アキラ。
獣人族たちに値踏みされ、競りにかけられる恐怖の中、彼を千枚の金貨で落札したのは、銀灰色の髪を持つ狼の獣人・ロウだった。
怯えるアキラに、ロウは思いがけない言葉を告げる。
「やっと会えた。お前は俺の命の恩人だ」
戸惑うアキラの脳裏に蘇るのは、かつて雨の日に助けた一匹の子狼との記憶。
獣人世界を舞台に、命の恩人であるアキラと、一途に想い続けた狼獣人が紡ぐ、執着と溺愛の異世界BLロマンス。
第一章 完結
第二章 完結
第三章 完結
αからΩになった俺が幸せを掴むまで
なの柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。
10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。
義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。
アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。
義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が…
義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。
そんな海里が本当の幸せを掴むまで…
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。