魔性少女カスミちゃん~隣の刹那君は私に惚れない~

三一五六(サイコロ)

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八性 終わりの始まり

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「俺はあの日、天国を見て地獄を見た。正直、カスミを信用しすぎていたのが悪かったのだと思う」
「何が言いたい?」
「だから、目の前にあったカスミの女体に心から惚れていた。カスミの心の中など知りもせずに……」

 おそらく、話は童貞を卒業した日のことだろう。
 私は天国しか見せてないはずなんだけどな……。
 別に痛いことはしていないし、妊娠するかもしれないという恐怖も避妊によって未然に防いでいる。
 心当たりがあるとしたら、お金を全て貰って何も言わずに帰ったことか、マナがいるにも関わらず、私と浮気をしたこと。この二つだろう。
 でも、このホテルを見る限りお金には困ってなさそうだ。じゃあ、浮気?
 いや、浮気はどう考えても大志君が悪い。これで殺すとか逆ギレにも程がある。

「俺はそんなことは聞いていない。何をされたのかを聞いている」
「じゃあ、結論から言う。俺はこの女――カスミに父を殺された」

 それを横で耳にした私の脳内は真っ白になった。
 私が大志君の父を殺す? そんなことはあり得ない。てか、していない。
 まず殺す理由も、殺す時間もなかった。
 それどころか顔も知らない。

「そ、そんなこと……私は殺ってない」
「まだとぼける気なのか? 俺の父を殺すことは、お前にしかできなかったんだぞ!」
「何を、何を持ってそんな意味不明なことが言えるの?」

 本当に何を言っているのか分からない。
 とぼける? この状況でとぼける余裕なんかまずない。
 それに私にしかできないって何?

「スマホ……」
「スマホがどうしたの?」

 本当に何? 財布について聞かれるなら分かるけど、スマホって……。
 それに、まずパスワードがあるから何もできない。

「スマホで俺の父に場所と時間を書いたメールを送っただろ!」
「そ、そんなの送ってない。ほら、パスワードあるし……」
「は? そんなの俺の近くにいたんだから、俺がパスワードを打っているのを見て記憶したんだろ?」
「……してない! 本当にしてない!」
「よくそんな次々と嘘をつけるな。お前、俺の手に何があるか分かってる?」
「い、痛い。やめて……」

 私の髪を引っ張り、拳銃を顔に押し当てる。

「おい、約束と違うぞ。拳銃を下ろせ」
「チッ、少し脅しただけだ。そう焦るな」

 マジで死ぬ! 本当に死ぬ!
 拳銃から火薬の匂いがしたって! それだけ近かった、いや、当たってたって!

「話を続けてくれ」
「言われなくてもそうする。てか、ここまで言えば大体分かるだろ? 場所と時間を送ったのだから、後はその時間に父が見える場所に行き、頭をスナイパーライフルで撃ち抜いたんだよ。なぁ、カスミそうだろ?」
「だから、私は殺してない」
「それに俺のスマホの充電が無くなるギリギリにするという小細工までして。金が一円もなくてラブホから出れない俺がマナに助けを求めたら、充電が丁度無くなったよ」
「お金は約束通り貰ったけど、スマホは知らない」
「スマホは全否定かよ。俺はその小細工のせいで、偽装メールも父が死んだことを知るのも遅くなったんだぞ!」

 全ての話を聞いたが、確かに私にしかできないことだ。
 あの場にいた私が疑われる、いや、犯人にされてもおかしくない。
 だけど、何を言われても私はやってないのだから否定しかできない。

「でも、何で警察にそのことを言わなかった? 言ったら裁判になって白黒ハッキリしただろ」
「それじゃダメだ。裁判だったら、無罪になる可能性も有罪になっても死刑にならない場合が多い。だから、確実に殺せるこの方法にしたんだ!」

 死なない可能性があるから自分で殺す。
 確かに他を頼るより、そっちの方が絶対にスッキリするだろう。
 でも、何もしていない私からしたら、たまったもんじゃない。

「まぁ、そういうことだ。お前への質問の答えはこれでいいか?」
「俺の質問の答えはそれでいいが、君の父の死についての答えは間違っている」
「何が言いたい?」
「だから、君の推理みたいなのは一部分だけ間違っている」

 輝琉は何を言っているのだろうか?
 この大志君の推理に出てきたのは私と大志君だけ。
 内容が間違っているなど、私達二人にしか分からない。
 それにスマホの中には証拠のメールが残っているはずだ。
 一体何を根拠に輝琉はこんなことを言っているのだろうか?

「それがどうした? もし間違っていたとしても、それは一部分だろ? 数学の問題と同じだ。途中の計算が間違っていても答えが正解なら関係ない」
「いや、その考え方ではダメだ。推理は漢字だ。もし、漢字を書き間違えたとしたら、その漢字は違う漢字か存在しない漢字になる。だから、関係はある」

 何で数学と漢字を例にして考えたの?
 まぁ、分かりやすいからいいけど。

「じゃあ、一部分って何だ?」

 大志君の声と共に風は止み、輝琉の顔が夕日に照らされる。

「それは……カスミじゃなくて俺だ」
『パンッ!』

 銃声を聞き、止んだ風はまた吹き出す。

「悪い。思わず暴発してしまったよ。お前はカスミの身代わりになろうとでも?」
「カスミのために売るほど、俺の命は軽くない」

 って、ことは本当に輝琉が……。

「だが、不可能なことが多すぎる。お前があの部屋に忍び込んでいたとでも言いたいのか?」
「いや、俺はあの場にはいない」

 ふぅー、良かった。ヤってるところを見られなくて……。
 何を考えているんだ、私は! そんなことはどうでもいいのに。

「じゃあ何? カスミがスマホでメールをして、殺したのはお前なのか?」
「だから、君の推理のカスミは全て俺。一度で理解しろ」
「それなら、質問だ! スマホの偽装メールはどう説明する気だ?」

 そこが一番の謎だろう。
 あの場にいなくて、偽装メールを送るなど幽体離脱でもしたのだろうか?
 いや、双子の兄弟の漫才じゃないんだし、流石に無理か。
 じゃあ、輝琉は一体どうやって……。

「簡単さ。お前のスマホを……乗っ取っただけだ」
「だ、だが、それでは偽装メールは分かっても充電は――」
「それは……ウイルス。電話した瞬間に充電が無くなるように設定しておいた。だから、充電がギリギリだったのはたまたまだ」

 確かに今の時代ならあってもおかしくない。
 いや、これだけスマホが普及している時代だ。乗っ取りやウイルスはされてもおかしくない、される可能性は高いものだと、頭に入れておくことなのかもしれない。
 だが、自分のスマホが実際に乗っ取られ、ウイルスに感染しているなど考えないだろう。
 それに今回のために大志君は警察官に偽装メールのことを言っていない。
 だから、大志君のスマホは調べられることがなかったから、ウイルスに気づけなかったのだろう。

「……クッ、クソ! お前が……お前が父を殺した犯人かぁ!」
「ああ、そうだ。だから、カスミを解放してくれ」

 やっと、私の誤解が解けた。
 これで私もこの恐怖から解放され……

「残念ながら、それは無理だ! お前を殺すまでは解放しない」

 ……ることはなかった。
 そらそうなるか。けど、私が死ぬ確率は下がったと思う。

「じゃあ、殺り合うか?」
「いいのか? カスミがどうなっても?」
「チッ、俺を殺すなら早く殺れよ」
 ヤバい、本当にこのままじゃ殺し合いに……。
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