メールマガジン

福袋買いませんか?

ドリームブッククラブにエントリーしています。 高校受験を控えた正吾は塾の帰り道、不思議な露天商で福袋を買った。値段はなんと全財産!その中身とは一体?
発行者名 くうーたんたん
発行部数8部
発行周期不定期
カテゴリ 小説
バックナンバー すべて公開

ログインするとメールマガジンを購読できます。

ログイン 新規ユーザー登録
う~寒い!コンビニのおでんでも買って帰るか・・・。

塾帰りの正吾は冷たい手をポケットに突っ込み、今月分の小遣いの残りを数え出した。触った小銭は4つだけだ。

どれどれいくらかなぁ。なぁんだ350円か。
「これじゃあ大したネタは買えないじゃんか」

正吾が鼻をすすりながら小銭をポケットにしまおうとすると、
「お兄ちゃん、福袋買わない?」と変なオヤジが声をかけてきた。

一体どこから声がするのかと周りをキョロキョロ見渡すと、薄暗い街灯の下でボロボロのブルーシートを広げた上に幾つかの紙袋が並んでいるのが目に入った。うわぁ…変なのに捕まっちゃったなぁ。

正吾の嫌そうな顔など気にしないのかオヤジは大きな声で
「ほら、兄ちゃん兄ちゃんこっちおいで!」

と遠慮なく声をかけてくるではないか。仕方なく近寄って行くと、その並んでいる紙袋に福袋の文字が入っているのに気がついた。

「福袋じゃんか・・・おじさん、これデパートの売れ残り?」
オヤジは呆れた顔で
「そんな物と一緒にしないでくれ!これはな、正真正銘の福袋なんだ。お前さんには俺が見えるんだろ?だったらこれを買う資格があるってことだ」

正吾は寒さで垂れてくる鼻水をすすりながら
「で?これいくらなの?」

と聞いてみた。
「今、お前さんが持ってる全財産だ」

正吾はニッカリ笑った。
「俺、350円しか持ってないんだけど?」

「え!?たったそれだけ?今までで一番安い値段だな」
オヤジはがっかりした顔つきだ。

「別にいいんだぜ。他の奴に買ってもらえよ俺、今まで福袋なん

買ったことないしな。要らないもん入ってたって邪魔になるだけ

し。じゃあね!おじさん」
正吾がそう言った途端

「よし!売った、持ってけ泥棒」

とオヤジはヤケクソ気味に叫びをあげた。
引っ掛かった引っ掛かった!俺って買い物上手じゃん。

「はい、じゃあ350円ね」

正吾はオヤジの手に小銭を置いた。ん?顔に似合わずすべすべのお肌だなぁ。正吾は首を傾げた。
「さぁ坊っちゃん!どれにするんだい?」
 正吾が紙袋の隙間から中をのぞこうとすると
「ちょっとちょっと!ダメだよぉ、福袋ってのは中が何だかわからないから楽しみなんだ。勘でえらびな、勘で!」
 チェッちょっとくらい、いいじゃんか・・・。
 正吾が迷っていると一番はじの袋が一瞬カサカサと音をたてた。
「なんだこれ?今動いたぞ…」
 オヤジは嬉しそうに
「ハハアンきっとあんたに買ってもらいたがっているんだよ。それにするかい?」

と言ってきた。なんだか不気味だなぁ。
正吾がその袋を持ち上げると、中からなんともいえない良い薫

がしてきた。
なんだか花畑にいるみたいだ・・・。ア~幸せな気分になってきたぞ。

「よし!これに決めた」
オヤジは

「まいどありがとうございます!」と満面の笑みで福袋を正吾に

した。

「あっそうそう忘れるとこだった・・・これこれ!」

赤いポチ袋には入りの文字が書いてある。中には何も書いていない白い札が一枚入っていた。

「なんだ、ただの紙切れじゃん。金券でも入ってるのかと思ったよ」
オヤジは渋い顔をして

「350円しか払わんといて金券なんか期待したらいかんよ。だ

なこれはそんなもんよりず~っと、ず~っと価値があるもんなんだ

いいかい・・・この紙に願い事を一つだけ書くんだ。そうすれば絶対願いはかなう」

正吾は

「ハイハイ、そりゃあ凄い!じゃあよ~く考えないとね」

と軽くいなした。
「信じてないな?本当に本当なんだぞ。まぁいいさ、そのうちわかるだろ。じゃあな坊主」
 正吾は結構大きなその紙袋をぶら下げ、家に帰って行った。

「ただいま~!あ~腹減った。今日のメシなに~?」
エプロン姿の母、ユカリがおたまでカレーをよそっていた。

「今日はあんたの大好きなカツカレーだよ。もう出来上がるから手を洗っておいで」

「んん?正吾、どうしたのその福袋。」
正吾は洗面所から顔を出して答えた。

「ああそれね、屋台で買ったんだ」

ユカリは眉を寄せて正吾を睨んだ。

「ま~た騙されたんじゃないの?この前は眠ってる間に頭がよくなる機械なんて買ってきて、今度は大丈夫なの?」

正吾は自信なさそうに
「まぁ350円だからさ。あんまり期待はしてないけど寒空の中いい歳したオヤジがいくらでもいいから買ってくれっていうんだぜ。可哀想になっちゃってさ」

それを聞いてユカリもさすがに同情したのか
「正吾は優しいからね・・・ま、しょうがないか」

と諦め顔だ。

「一体なにが入ってるのかしらね~。早速開けてみましょうよ!」正吾はユカリに急かされながら紙袋を閉じているホチキスの芯を

バリバリと外した。
「・・・なあに?これ。」

福袋の中には缶詰めが一つ入っていた。よくあるみかんの絵が書いてあるアレだ。

「どっからどうみてもみかんの缶詰めだよな、でもまぁ俺これ結構好きなんだよね。母ちゃん缶切りくれ!部屋で食うから皿もね」

正吾は自分の部屋に入ると、丸い小さなこたつに脚を突っ込んだ。
「しかし、しけた福袋だよなぁ。これ一個だけかよ」

正吾は福袋の中をもう一度のぞいてみた。やはり何にも入っていない。仕方なく正吾は缶切りの歯を缶詰に食い込ませた。
「よ~し開いたぞ」
 ギザギザになったアルミの蓋をこじ開けて逆さまにした。
「あれ?おっかしいな~!出て来ない」
 缶詰の底をポンポン叩くと何かカラフルな色彩がポトッと皿に落ちてきた。
「なんだぁ?」
 正吾はフォークでそれを転がすと
「うぎゃ!痛いではないか。」

なんとそれは着物姿の小さな女の子であった。
「う、うわぁ!なんだこれ?人形か!?」

皿の上で仁王立ちになっているその小さな女の子に正吾の目は釘付けになった。
「はぁ?何言っとるんじゃこの人間は。弁財天、つまりあんたたちの言うところの神様じゃぞ」

正吾は開いた口が塞がらないでいると
「おまえ!私を選んだなんてラッキーじゃぞ。これからのおまえの人生はまさにエキサイティングじゃ!」

ガハハと笑う彼女を横目に正吾は途方にくれていた





 正吾はつぶやいた。
「弁財天ってなんの神様だっけ?」

その小さな女の子はプリプリ怒り出した。
「お前、そんなことも知らんのか!妾はな、音楽の神じゃ。これをみよ」
 なにやらウクレレみたいな物を小脇に抱えている。
「うわ~!ちょっとそれ見せてよ。昔の琵琶ってやつ?」
 正吾はそのおもちゃみたいな楽器をつまんでよくみると
「なんだこれ?アコースティックギターじゃん!」
 弁天はフフフと笑い
「当たり前じゃ、今はいったい何世紀じゃとおもっとる」
「スゲーな弁ちゃん、カッコいいよ」
 弁天は胸をはって当たり前じゃ!とおおえばりしている。
「ところで、その弁財天様がなんで俺なんかのとこにきたわけ?」            

弁天は腕組して答えた。

「お前が神に選ばれた男だからじゃ。そうでなくては天照大神様が見えるわけがないからのぅ」

「えっ!?それって・・・まさかあの露店のオヤジ?」

弁天は深いため息をつき
「あれは仮のお姿じゃ!どんな姿であろうと慈悲深きお方じゃ、なんせたった350円で妾を売ったのだからな」

正吾はクフフと笑い
「それでこれからどうするの?」

と聞いた。
「正吾、お前を立派な天才にしてやる!それが妾の使命じゃ」
 正吾は思い切りのけ反った。
「なんだよそれ~。俺はなんの取り柄もないよ!運動も嫌いだし、勉強だって下から数えたほうが早いくらいの成績だしさ。ましてルックスなんか平々凡々でしょ?」

弁ちゃんはじっくりと正吾の全身を見回した。
「そうじゃな、背は普通だけど脚が短いのぅ。顔は・・・なんでそんなにぽっちゃりしておるのかのぅ?もう少しこう・・・キリッとせんかのぅ」 

ブチブチいいながらも最後はきっちり宣言した
「とにかく!何かあるはずじゃ。神をも惹き付ける何かが・・・。まずはそれを探す事じゃな」

正吾は勝手にしろとばかりにコタツに潜りこんだ。
「よし!明日はお前の学校での様子を見よう。そうすればきっと何かわかるはずじゃ」
 正吾はその言葉を聞いて跳ね起きた。
「ええっ!?そんなの無理、絶対無理だからね!」
 弁天はグフフと笑って
「心配せんでもよい。どうせ他の人間には見えんのだからな・・・それにしても明日が楽しみじゃ!」
 そう言うとコタツの中に潜っていった。





「起きろ!起きろと言うに」

正吾はペチペチほっぺたを叩く弁天を振り払った。
「う~ん。なんだよ煩い虫だなぁ」
「ム、ムシじゃとお~!?かくなるうえはいたしかたあるまい、見よ神の力を!」

弁天は正吾の耳もとでその小さなアコースティックギターをかき鳴らした。ベンベケベケベケベン!キュィィィ~ン!!さすがの正吾も跳ね起きた。
「なんだ!何がおきたんだ?」
 キョロキョロする正吾に弁天は訴えた。
「腹が減ったぞ!ちゃんと神にお供え物をせんかい」
 まだ寝惚けまなこの正吾はつぶやいた。
「ええっ?神様も飯食うのかよ」
「あたり前じゃ!酒と肴でよい」

仕方なく正吾はキッチンから料理用の日本酒とおせちの残りのかまぼこを持ってきた。
「おお!来たか来たか」

正吾は喜ぶ弁天の顔をマジマジと見た。
お猪口に吸い付きチュウチュウ音をたててうまそうに呑んでいる。

「か…可愛い!弁ちゃん、普通サイズならアイドルも夢じゃないかも?」
 弁天はかまぼこのピンクの部分にかぶりつきながら
「そうじゃ、妾は天界のアイドルじゃぞ。ようわかったのぅ」

と、しれっとしている。
「はぁ~神様の世界って一体どんなかね?想像つかないや」
 弁天はそんな正吾に
「お前もはよう朝げを済ませて来い。学校に遅れるぞ!」

と言うとまたかまぼこにかぶりついた。




「弁ちゃん、隠れてたほうがいいんじゃない?」
 弁天は正吾の肩に腰掛け、気持ちよさそうに脚をブラブラさせていた。
「どうせ他の人間には見えんのだから気にするな」
「そっちが気にしなくても俺が気になるんだよな・・・」
 弁天は正吾の耳たぶを引っ張り
 何か言ったか?とにらんでいる。

「おはよう町田君、今日は早いのね」
正吾の前の席の佐山チカが話しかけてきた。

「お・・・おはよう」
正吾が伏し目がちに小声で言うのを見ていた弁天は机の上にどっかり腰をおろし
「もっと大きな声でハキハキと!」

とけしかけた。

「あ~もうひとり母ちゃんが増えた気分だ」

と正吾がつぶやくのに

「母ちゃんではない。トレーナーじゃ!トレーナー」

と返してきた。こりゃあ面倒なもんしょいこんだかも?
「今日は授業参観じゃ!お前の秘められた才能がなんなのか見極めるぞい」
 正吾の心配をよそに弁天はなにやら楽しそうだ。

「きりーつ!礼、着席」
今日の日直が号令をかける。

「おはようございます。今日から最後の進路相談が始まりますね。今日の予定になっている人は放課後忘れないで残ってね。はい!では朝礼は以上です」

朝礼が終わるといつもの奴らが正吾の机をとりかこんだ。

「よう、正吾。今日もシケたツラしてんなぁ。ほれ、なにやってんの早く出せよアルバイト料」

正吾はズボンのポケットから500円玉を取り出すとそいつらに渡した。
「よ~し!今日は俺らがお前を守る。安心して暮らせ。じゃあな!」
 弁天はじっとその様子をみて不思議そうな顔をした。
「あれはなんじゃ?なぜあやつらに金を払う。おや、あっちでも金を払ってるやつがおるのぉ」

正吾は小声で
「いわゆるカツアゲってやつだよ。あ~あ今月のこずかいもうないよ」
 それを聞いた弁天の髪はみるみるうちに逆立ち、恐ろしい形相に変わった。
「妾は悔しいぞ!なぜ500円なのだ。妾なぞたった350円だというに。もう許さん!」
 そういうと弁天は更に小さくなり、正吾の鼻の穴に飛び込んだ。
「うわぁ!弁ちゃん何すんの!?」
 すると正吾はカクンと意識を失い、顔をあげた時には眼光するどくまるで別人のような表情に変わっていた。
「おい!おまえら、さっきの金かえせ!」
 不良達が一斉に振り返った。
「あんだとてめぇ、俺たちゃお前を守ってやってんだ報酬もらうのがあたりまえだろ!」

正吾はガハハと笑って
「おまえらみたいなへなちょこに守ってもらいたくなんかないね!せめて俺に勝ってからそう言うんだな!」

正吾はブレザーを脱ぎ捨て、不良達にとびかかって行った。
「上等だ!やってやろうじゃん」
 数分後、正吾はのびている不良たちの襟首をつかんで、廊下に放り出した。
「バカ者めらが!神に逆らうなど百万年早いわ」

正吾はガハハと笑うと、そのままばったり倒れてしまった。
弁天は慌てて正吾の鼻の穴から這い出した。
「し、しまった。正吾!こりゃしっかりせんかい・・・あ~どうも妾は短気でいかん。つい禁忌を破って憑依してしまったわい」




正吾が目を覚ましたのは保健室のベッドの上だった。

「あれ、俺どうしてここにいるわけ・・・? もしかして弁ちゃん!?」
正吾の腹の上で弁天が正座してかしこまっていた。

「すまん正吾!つい禁忌を破ってしまった」

正吾はガバッと布団をはぐと

「もしかして・・・俺の身体に憑依した?それで一体何やらかしたんだよ?」

「いやあ~すまん!ついあの不良どもを懲らしめてしまった・・・ああいう弱いものイジメするやからは神として黙ってみていられんかった」

しみじみと語る弁天の様子に正吾もそれ以上責めることはしなかった。

「まあ弁ちゃんは神様だからな・・・仕方ないか。でもさ、こんなに疲れるなんて相当エネルギーがとられちゃうんだな。こんな事たびたびあったら俺早死にしちゃうよ。あんまりやらないでね!」
 弁天は目をウルウルさせて
「正吾お前は心が広いのぉ。しかし強い男ではないな・・・なにも妾は喧嘩が強いとかそういう事を言ってるんではないぞ。負けるとわかってても間違ってると思うなら、立ち向かっていく勇気が欲しぞよ。強い男とは弱者に優しいものじゃ」
 正吾はそれを聞くと
「そうだね、俺は弱虫だよ。だけどそんなスーパーヒーロー現代じゃ流行んないんだよな。どうせ誰も守ってなんかくれないぜ?だったたら大人しく目立たないでいたほうが利口な生き方だと思わない?」

弁天はそれを聞き、一気に瞳が乾燥した。
「こいつ冷めとる・・・冷めきっとる。こいつの魂に火をつけるのは並大抵ではないのぅ」
 腕組みしてぶつくさつぶやく弁天をよそに
「あ~良く寝た!」

と正吾は大きな欠伸をしながら保健室を出ていった。





正吾は教室にもどったが、そこには誰も居なかった。
「あっ、移動教室か!今は…もう4時間目?俺ずいぶん寝ちゃったんだな」
「なんの授業じゃ?」
「音楽だよ。あっ弁ちゃんって音楽の神様だったよね?じゃあ楽しいんじゃない?俺はだいっきらいだけど」

弁天は渋い顔で正吾を見た。
「お前、音楽キライなのか?」
「うん…俺さ。人前で歌ったり、演奏したりするのが苦手なんだよ。見られてるって思うと全身固まっちゃうんだ」
「ふう~ん。じゃあ聴くのはどうじゃ?音楽を聴いて楽しい気分にならんか?」
「ああ、それは大好き!CDも沢山もってるぜ」

なるほどのぅ・・・弁天はニンマリ笑った。




「すみません。戻りました」
 ガラッと音楽室の扉を開けると、とんでもない光景が広がっていた。
「あら~。正吾君もういいの?」
 正吾はあんぐりと口を開け音楽教師の有明を見た。
 肩のあたりから若い侍の顔がギロッとこちらを見ている。
「あ、ああ・・・せ、先生こそ大丈夫ですか?」

有明はニッコリ笑って
「何言ってるの!私は見ての通りとっても元気よ。さあ、自分の席についてちょうだい」

正吾はクラスメート達に絡みついている沢山の人やら動物やら、はたまた得体のしれない妖怪みたいなものに目を奪われフラフラしながら席に着いた。
 一体これはどういうことだ?
 この事態に狼狽えている正吾に弁天が話しかけた。
「正吾、やっぱり見えちゃってるみたいじゃな」
 正吾はコックリうなずいた。小声で
「後でちゃんと説明してよね!」
 と言うと弁天はブンブン首をふった。ハァもう何があっても驚かないや。正吾は深いため息をついた。
「さあ、テストの続きをしましょう。ああ…町田君は最後にお願いね。じゃあ永瀬君、続きをどうぞ」
 ああ、そうだった!今日はアルトリコーダーのテストかぁ。あっという間に正吾の番が来た。弁天が期待をこめた眼差しで見つめている。
 リコーダーを持ち、立ち上がった。リコーダーを持つ手が小刻みに震えている。

「・・・・・」
「どうした正吾!はよう吹かんか」
「・・・・・」
「ほれ!ほれどうした?」
「…ピョロロピリー」
「す、すみません。ちょっと緊張しちゃって」

弁天は口をアングリ開けて正吾を見ている。正吾の顔はみるみるうちに真っ赤になり、うつむいてしまった。
 見かねた有明が
「正吾君、もういいわよ。まだ体調も戻ってないみたいだし」
「は、はぁすみません」

正吾は椅子に腰をおろした。


 その日の帰り道、正吾は弁天にたずねた。
「ねぇ。あれはどういう事?」
「おお、あれのぅ。あれはじゃな、妾が憑依した後遺症みたいなものじゃ」

正吾はキョトンとしている。
「後遺症?それであの見えてるものはなに?」
 弁天はめんどくさそうに答えた。
「なにって・・・みたままじゃが」
「それじゃあ分からないよ。やっぱり霊とか妖怪?」
 弁天は頭を掻きながら
「まぁそういう事じゃ」
 と言うではないか。

「心配いらんて。妾がついているからの!」

弁天はドンと正吾の胸を叩いた。