一目惚れならぬ一聴き惚れ

ぺんぺんぐさ

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俺、結城湊太は他の人よりも大抵の事が良くできた。

 小さい頃から周りの子供より勉強などで周りよりよく出来た。運動はあまり得意ではなかったがそれでも人並み以上には出来た。
 俺は音楽に興味があったらしく、爺ちゃんが若い頃チェロしていたので教えてもらったりしていたので吹奏楽にも興味があり部活にも入ろうと決めていた。
中学では弦楽器はコントラバスしか使わないらしく背の低めな俺には少し無理があったので、中学からはからオーボエをやり始めた。始めは先輩や先生に褒めてもらえて嬉しかったし楽しかった。ソロコンとかにも出たりして楽しかった。

…でも段々難しい曲を練習していると先輩からは「私よりできるもんね」同級生からは「人より上手く出来るからってそんな曲して…私たちに対する当てつけ?」と言われるようになった。
 少し嫌味を言われるぐらいなら俺も気にしなかったが、それが毎日続くとさすがに堪えるらしい。
 
   ある日なにかの糸が切れたみたいになんで俺はこんなに言われなきゃいけないんだ、と楽器を吹くのは好きだったが部活は辞めた。
 先生にも一応止められたが「辞める理由が分からない、あんなに上手なのに」と言われた。
 この人も俺の上辺しか見てなかったんだ。周りの先輩や同級生と上手くいっていないことも分かってくれてなかったんだ…他の奴らとなにも変わらない。
 俺って結構メンタル弱かったんだなぁ…。

 部を辞めてから俺はすることもなかった。
それもそうだ、今まで休みの日も練習していたんだ、俺は親に楽器を買って貰っていたので家でも吹くことは出来るがまだ吹く気にはなれない。
 でも未練がましく毎日ケースを開け手入れをしている自分がいる。
 その事を知ってか知らずか分からないが幼馴染の悠真が今月末にある清光高校の演奏会に行こうと言われた、なんでも従姉妹が通っていて演奏会に来ないかと言われたらしい。

「それぐらい1人で行けるだろ」

「演奏会とか1人で行くの気まずいじゃん…湊太が一緒に来てくれたら気が楽だし…」

「え~めんどくさい」

「でも湊太まだ志望校決まってないらしいじゃん、おばさんも言ってたよ?決まってないのにオープンキャンパスにも行かないで家にずっと居るって聞いたけど…」

 こいつ…痛いところをついてくる…悠真は俺の母さんと仲がいいので大抵の事は知っていることが多い。母さんめ…

「確かに決まってないけど…」

「じゃあ一緒に行こうよ、湊太吹奏楽好きだったじゃん。従姉妹にさ湊太のこと話したら是非来て欲しいって、ここの人達とは違うと思うよ?」

「でも……」

「今回だけだから!」

 こうなってくると悠真はしつこいからな…オープンキャンパスに行こうと言われているわけでは無いし行くだけ行ったら悠真も満足するだろ。
 
「分かった…今回だけだからな」

「まじ!?ありがとう!詳しいことは帰りながら教えるよ」


 話を聞いてみると清光高校は凄いらしい。
 吹部はまだ創部して8年程だがコンクールなどでも結構良い成績を残している。部員も多く演奏会もよく開いているらしい。

 興味は多少出てきたが、まだ吹奏楽をやる気にはやっぱりなれなかった。

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