MEMOVERUS ~幻異界転生~

中島 弓夜

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第六章 コールダスク 18歳

Game Over

「門脇さん!」

コールダスクは倒れている門脇に駆け寄ろうとしたが、門脇が「来るな!」と叫んで止めようとする。
「俺はもう助からねぇ。七奈美ちゃんを連れて屋上へ逃げろ、俺が時間を稼いでやる」
「そんなことできない!」
「いいから行けっ! 俺が屋上にヘリを呼んでおいた。しばらくすれば来るはずだから、それに乗ってここから逃げちまえ」
「でも……っ!」
「俺に撃たれてぇのか、早くしろっ!」
門脇に言われ、コールダスクは唇を噛み締めながら後ろを向いて走り出した。
(じゃあな……楽しかったぜ)
門脇は手にしたライフルのマガジンを交換すると、襲い来る原生種に銃弾を浴びせまくったが、その物量には勝てず、やがて押し潰されてこの世を去った。

一方、コールダスクと七奈美は屋上へ辿り着いたが、門脇の言っていたヘリはまだ到着していない様子だった。
「まだヘリは来てないみたいだ……ここで原生種たちを食い止めなきゃ」
「後どれくらいで来るの?」
「分からない。でも門脇さんが呼んだと言ってたから、それを信じるしか……」
「あ~あ~、屋上にいる二人。私の声が聞こえるかね?」

――突然、屋上に設置されたスピーカーから高田の声が聞こえる。

「君たちはヘリを待っていると思うが、残念ながら来ることはないぞ。私たちがすでに撃ち落としたんだ」
「なにっ!?」
いさぎよく降伏したまえ、今なら命だけは助けてやる。私の創造した世界で人生を終えるんだな。寿命を迎えるまで平穏な生活を保障してやろう」
コールダスクは屋上の端から下をのぞき見ると、列を成したパトカーや警察官の中心に高田の姿を確認する。
「ああ、いたいた。こちらからも見えている。そんなところで留まっても、らちが明かないだろうに。原生種の餌食えじきになるのがオチだというのが分からないのかね?」
コールダスクは高田に言い返したいが、スピーカーにはマイクが備わっておらず、会話は一方通行である。
「ちくしょう! 万事休すってやつか」
「もう大量の原生種が目の前まで迫っているよ。戦うしか方法がない!」
「いや……ちょっと待ってくれ」
大きく深呼吸して心を落ち着かせたコールダスクは、この窮地きゅうちを打開する方法をひらめく。
「イチかバチかだけど……やってみる価値はありそうだ」
「何をするの?」
「ここから飛び降りる」
七奈美は「えっ!」と驚きの声を上げたが、その横でコールダスクは衝撃波を放つため、地脈の力を体内に溜めようと集中する。
「地面に落ちる手前で衝撃波を放てば、その反動で体が浮き上がって助かるかもしれない。それに、高田の奴はマラーニャから与えられた原初の力のことを知らないはず」
そう言うと、コールダスクは大気中にただよう熱を自らの手に吸収し、燃え上がる炎と化して日本刀にまとわせた。
「もし失敗したら……その時はすまない。また来世で会うことになるかも」
「心配ない……おまえを見つけるさ、必ずな」
「それを聞いて安心したよ」
そして、コールダスクは屋上の端にある段差を乗り越えると、下にいる高田の位置を目で確認する。
「おいおい、自殺でもする気かね? 君のイーテルヴィータが閉じてしまうぞ」
挑発する高田の言葉にも反応せず、コールダスクは極限にまで集中力を高める。

――バッ!

次の瞬間、コールダスクは日本刀を構えたまま屋上から飛び降りた。

「馬鹿なっ! 気でも狂ったのか!?」
高田は、こちらへ向かって落ちて来るコールダスクを見て狼狽うろたえる。
対して、コールダスクはグングンと加速しながら落下し、衝撃波を放つタイミングを見計らっていた。
(早くても遅くてもダメだ! 地面に落ちる直前で放たないと意味がない!)
……そして地面に激突する瞬間が近付き、コールダスクは日本刀を強く握り締めた。

「たああああああぁぁぁぁぁ―――!!」

コールダスクは高田の頭上で日本刀を振り払うと、炎が入り混じった凄まじい衝撃波が出現し、周囲の警察官を巻き込みながら、ミサイルが着弾したような大爆発が起こった。
……その爆発は、遠くから視認できるほどの威力である。
当然ながら、高田の下に集まった警察官は全員死亡し、その高田の肉体は影、形すら残ることはなかった。

(や、やったぞ……)

コールダスクは、本社ビルから数メートルほど離れた地面で倒れていた。
衝撃波を放ったタイミングが悪かったのか、落ちた時の衝撃で全身の骨にヒビが入り、本人はすでに虫の息である。
(こいつは何度か練習しないとな。へへへ……でも勝ったからいいや)
倒れたまま空を見上げると、すでに夜は明けて朝日が頬を照らしている。
「これで俺の人生は終わりか……思ったより呆気ない感じだったな~」

――そしてコールダスクはゆっくりと目を閉じ、少しだけ微笑ほほえみながら息を引き取った。
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