赤坂田市再開発記録、あるいは■■■の兆候

シマシマ

文字の大きさ
13 / 20
第2章:侵食

第13話 吉岡健二からの着信

しおりを挟む
忘れられた日本の足跡
ホーム このブログについて フィールドワーク記録 お問い合わせ

---

緊急報告:吉岡健二さんからの着信について

カテゴリ: フィールドワーク , 赤坂田市
投稿日時: 2025年9月28日 01:32


深夜に更新することをお許しください。

ですが、どうしても記録しておかなければならない、常軌を逸した出来事が起こりました。

私の思考は混乱しており、文章がまとまらないかもしれません。しかし、これは今、この瞬間に起きた、紛れもない事実です。

つい先ほど、午前1時15分頃、以前お話を伺った建設作業員の吉岡健二さんから、私のスマートフォンに着信がありました。

私は、彼の身に何か取り返しのつかないことが起きたのではないかと、強い恐怖を感じています。

以下は、私のスマートフォンに自動で録音されていた、通話記録の文字起こしです。

---

音声記録:通話録音 20250928_0115.mp3 の文字起こし

発信者: 吉岡健二
時刻: 2025年9月28日 午前1時15分

【記録開始】

[数回の着信音の後、久坂部が電話に出る音。寝ていたらしく、声が少し掠れている]

久坂部: ……もしもし…?

吉岡: [吉岡の声。呂律が回っておらず、ひどく慌てている様子。背後で、ごう、と風の音がする] く、さかべさんか…? よ、吉岡だ…!

久坂部: 吉岡さん!? どうしたんですか、こんな時間に! 今どこですか? 怪我でもされたんですか?

吉岡: 現場だ…夜勤のダチに頼んで、こっそり…この前の、例の場所、調べにきんだよ…。

久坂部: 危ないですよ! 一人でですか!? 一体何を…。

吉岡: あったんだよ…! あったんだ! あんたの言ってた通り…! [声が興奮と恐怖で上ずっている]

久坂部: 何があったんですか!? 落ち着いてください!

吉岡: へへ…変なモン見つけちまった…。掘り起こした土の下だ…。井戸だ…古い、石で組んだ、井戸の跡だ…!

[私は息を呑んだ。笹川さんの話と、吉岡さんの話が、最悪の形で繋がった瞬間だった。]

久坂部: 井戸!? 吉岡さん、すぐにそこから離れてください! 危ない!

吉岡: なんだ…? [急に声のトーンが変わる] 水ん中…なんか、光って…うわっ! なんだこれ、足が…! 引っ張…!

[ここで、激しい水音。「ガボッ!」という、何か重いものが水中に引きずり込まれるようなおぞましい音。吉岡の、短く、喉が潰れたような悲鳴。]

久坂部: 吉岡さん!? 吉岡さん!!

[数秒間、水がごぼごぼと泡立つような音と、風の音だけが続き、その後、通話が一方的に途切れる電子音。]

【記録終了】

---

私はすぐに吉岡さんに何度もかけ直しましたが、彼の電話が応答することはありませんでした。

ただの悪戯電話だとは思えません。彼の声は、本物の恐怖に満ちていました。

どうすればいいのか分かりません。警察に電話すべきでしょうか。しかし、一体何と説明すればいい? 「井戸に引きずり込まれる音を聞いた」と、誰が信じてくれるというのでしょうか。

今はただ、この記録を公開することしかできません。

吉岡さんの身に、何か取り返しのつかないことが起きたとしか、私には思えません。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

残酷喜劇 短編集

ドルドレオン
ホラー
残酷喜劇、開幕。 短編集。人間の闇。 おぞましさ。 笑いが見えるか、悲惨さが見えるか。

処理中です...