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第2章:侵食
第18話 郷土史家・三田村耕介氏からの電話
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忘れられた日本の足跡
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突然の電話:三田村先生からの「警告」
カテゴリ: フィールドワーク , 赤坂田市
投稿日時: 2025年10月6日 23:15
こんばんは。久坂部です。
前回の記事「反転する世界」を公開してから、私のPCの不調は、残念ながら改善していません。今も、時折モニタの端がゼリーのように歪み、文字が裏返ります。もはや、これが単なる故障や私の幻覚ではないことを、認めざるを得ないようです。
そして昨夜、私のスマートフォンに、一本の電話がありました。
ディスプレイに表示された名前は、あの日、私を「与太話だ」と一蹴した、郷土史家の三田村耕介先生でした。
予想だにしない人物からの着信に、私は戸惑いながらも、通話ボタンを押すと同時に、咄嗟に録音を開始していました。
彼の声は、怒りに満ちていました。しかし、それ以上に、私は彼の声の奥にある「恐怖」を、はっきりと感じ取りました。
【以下は、昨夜の三田村先生との通話記録の文字起こしです。】
---
音声記録:通話録音 20251005_2240.mp3 の文字起こし
発信者: 三田村耕介
時刻: 2025年10月5日 午後10時40分
【記録開始】
久坂部: ……もしもし、久坂部です。
三田村: [電話の向こうから、荒い息遣いと共に、怒気を含んだ声が響く] 久坂部君かね!?
久坂部: み、三田村先生…? どうかされたんですか?
三田村: どうかされた、ではない! 君は一体、自分のブログで何を書いているのか分かっているのか!
久坂部: 私のブログを…読んでくださっているのですか。
三田村: くだらんオカルト話で、いたずらに人々の不安を煽り立てて! 君は、自分が何に触れているのか、全く理解しておらん! PCが反転しただあ? [声が上ずる] 君は疲れているんだ! 自分の妄想を、さも事実のように書き連ねるのは今すぐやめろ!
久坂部: 妄想ではありません。現に、私の身には…。
三田村: [私の言葉を遮って、声を荒げる] あの土地のことは、そっとしておけばいいんだ! 昔からそう決まっている! 井戸だの鏡だの…そんなものに触れた者は、ろくなことにならん!
[私は、彼のその言葉にハッとした。記録にないと断言したはずの彼が、なぜ「井戸」や「鏡」に触れることの危険性を知っているのか。]
久坂部: 先生。あなたは、やはり何かご存知なんですね? 「ろくなことにならない」とは、一体どういう…。
三田村: 知らん! 私は何も知らん! いいか、君が見ているのは全て幻覚だ! いい加減に目を覚ませ! そして、これ以上、あの土地をかき乱すな! すぐにブログを閉鎖しろ! いいな!
久坂部: しかし、吉岡さんのことも…。
三田村: 知らんと言っているだろう!!
[彼は金切り声のような叫び声を上げ、一方的に通話は切れた。ツー、ツー、という無機質な音が、私の耳に虚しく響いた。]
【記録終了】
---
電話が切れた後も、私はしばらくスマートホンを握りしめたまま、動くことができませんでした。
三田村先生の剣幕は、異常でした。しかし、それは私を論破しようとする学者の怒りではありませんでした。パニックに陥った人間が、恐怖から逃れるために、目の前の存在を必死で排除しようとする叫び声でした。
そして、彼の言葉。
「そっとしておけばいい」「昔からそう決まっている」。
それは、記録がないから無視する、という学者の態度ではありません。
危険性を知る者が、意図的に真実を隠蔽しようとする者の言葉です。
三田村先生は、知っているのです。この土地の何を、なぜ、そっとしておかなければならないのかを。そして、それを破った者に何が起きるのかも。吉岡さんのように。そして、今の私のように。
彼の電話は、私を脅し、調査をやめさせるためのものだったのでしょう。
しかし、その効果は全くの逆でした。
私は、彼の恐怖の正体を、絶対に突き止めなければならない。
たとえ、その先に、彼と同じ恐怖が待っているのだとしても。
(久坂部 誠)
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突然の電話:三田村先生からの「警告」
カテゴリ: フィールドワーク , 赤坂田市
投稿日時: 2025年10月6日 23:15
こんばんは。久坂部です。
前回の記事「反転する世界」を公開してから、私のPCの不調は、残念ながら改善していません。今も、時折モニタの端がゼリーのように歪み、文字が裏返ります。もはや、これが単なる故障や私の幻覚ではないことを、認めざるを得ないようです。
そして昨夜、私のスマートフォンに、一本の電話がありました。
ディスプレイに表示された名前は、あの日、私を「与太話だ」と一蹴した、郷土史家の三田村耕介先生でした。
予想だにしない人物からの着信に、私は戸惑いながらも、通話ボタンを押すと同時に、咄嗟に録音を開始していました。
彼の声は、怒りに満ちていました。しかし、それ以上に、私は彼の声の奥にある「恐怖」を、はっきりと感じ取りました。
【以下は、昨夜の三田村先生との通話記録の文字起こしです。】
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音声記録:通話録音 20251005_2240.mp3 の文字起こし
発信者: 三田村耕介
時刻: 2025年10月5日 午後10時40分
【記録開始】
久坂部: ……もしもし、久坂部です。
三田村: [電話の向こうから、荒い息遣いと共に、怒気を含んだ声が響く] 久坂部君かね!?
久坂部: み、三田村先生…? どうかされたんですか?
三田村: どうかされた、ではない! 君は一体、自分のブログで何を書いているのか分かっているのか!
久坂部: 私のブログを…読んでくださっているのですか。
三田村: くだらんオカルト話で、いたずらに人々の不安を煽り立てて! 君は、自分が何に触れているのか、全く理解しておらん! PCが反転しただあ? [声が上ずる] 君は疲れているんだ! 自分の妄想を、さも事実のように書き連ねるのは今すぐやめろ!
久坂部: 妄想ではありません。現に、私の身には…。
三田村: [私の言葉を遮って、声を荒げる] あの土地のことは、そっとしておけばいいんだ! 昔からそう決まっている! 井戸だの鏡だの…そんなものに触れた者は、ろくなことにならん!
[私は、彼のその言葉にハッとした。記録にないと断言したはずの彼が、なぜ「井戸」や「鏡」に触れることの危険性を知っているのか。]
久坂部: 先生。あなたは、やはり何かご存知なんですね? 「ろくなことにならない」とは、一体どういう…。
三田村: 知らん! 私は何も知らん! いいか、君が見ているのは全て幻覚だ! いい加減に目を覚ませ! そして、これ以上、あの土地をかき乱すな! すぐにブログを閉鎖しろ! いいな!
久坂部: しかし、吉岡さんのことも…。
三田村: 知らんと言っているだろう!!
[彼は金切り声のような叫び声を上げ、一方的に通話は切れた。ツー、ツー、という無機質な音が、私の耳に虚しく響いた。]
【記録終了】
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電話が切れた後も、私はしばらくスマートホンを握りしめたまま、動くことができませんでした。
三田村先生の剣幕は、異常でした。しかし、それは私を論破しようとする学者の怒りではありませんでした。パニックに陥った人間が、恐怖から逃れるために、目の前の存在を必死で排除しようとする叫び声でした。
そして、彼の言葉。
「そっとしておけばいい」「昔からそう決まっている」。
それは、記録がないから無視する、という学者の態度ではありません。
危険性を知る者が、意図的に真実を隠蔽しようとする者の言葉です。
三田村先生は、知っているのです。この土地の何を、なぜ、そっとしておかなければならないのかを。そして、それを破った者に何が起きるのかも。吉岡さんのように。そして、今の私のように。
彼の電話は、私を脅し、調査をやめさせるためのものだったのでしょう。
しかし、その効果は全くの逆でした。
私は、彼の恐怖の正体を、絶対に突き止めなければならない。
たとえ、その先に、彼と同じ恐怖が待っているのだとしても。
(久坂部 誠)
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※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
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