転校生はおにぎり王子 〜恋の悩みもいっちょあがり!~

成木沢 遥

文字の大きさ
18 / 55
二章 憧れの先輩は陸上部 ~後押しする、豚キムチーズ~

しおりを挟む
「じゃあこれから、豚キムチ炒めを作っていくよ! そろそろ温まってきたから!」

 隼斗君は炒め物の工程に移っていた。
 さすがに今は手伝えることはないよね……。
 隣で黙って見ておくことにしよう。

「まず豚肉を炒めます。今回は豚バラ肉を使っていくよ!」

 ジュワッという音が、家庭科室中に響く。
 食欲をそそる音だなぁ……隼斗君は菜箸でリズミカルに炒めている。
 ゴマ油の香りも漂ってきた……これだけでも美味しそうだ。
 隼斗君は何も言わずに塩コショウを追加して、香ばしい色になるまでフライパンを振った。

「よし、良い感じだ。じゃあ、キムチを追加するよ!」

 相変わらずの手際の良さ。
 キムチはちょっと多めにボウルに入っている。
 余すことなく、全部フライパンの中に入れた。

「キムチってご飯に合うよねぇ……男の子はみんな豚キムチ炒めが大好きなんだよ」

 隼斗君が言うんだから間違いない。
 私もアイ美ちゃんも「そうなんだー」と声を揃えた。

 豚肉とキムチがフライパンの中で綺麗にフュージョンしていく。
 ああ……これだけでも、ご飯何杯でもいけそうだ。
 キムチの水分がなくなってきたところで、隼斗君は一旦火を止めた。

「ここで甘めの味噌を投入して……」

 スプーン一杯分くらいの味噌を入れて、また火をつけた。
 今回は弱火だ。

「六原さん、ちょっと混ぜるように炒めてくれない? 白ゴマ取ってくる!」

 菜箸を受け取って、言われた通りに混ぜ合わせる。
 アイ美ちゃんはメモを書くのをやめて、味噌と混ざり合う様子を見ていた。

「あったよ! 白ゴマ追加しまーす!」

 隼斗君はひとつまみの白ゴマを回すように入れた。私は隼斗君に菜箸を返す。
 あ、もうご飯のチンが終わっているはずだ。

「あちち……よし、ほかほかだわ」

 電子レンジの中から熱を帯びた丼を取り出し、ラップを外す。
 蒸気が一斉に浮かび上がってくると、お米の良い香りがしてきた。

「こっちも完成だ! 六原さん、ご飯持ってきて!」
「あ、はい!」

 ベストタイミングだ……今ちょうど持っていこうとしたところ。
 そのままキッチンまで運ぶ。

「そしたらこの豚キムチ炒めを……このご飯の中に……」

 隼斗君はフライパンを持ち上げて、ほかほかご飯の中に全部入れた。

「え、入れちゃうの?」

 思わず声を漏らしてしまった。
 アイ美ちゃんも私と同じように驚いている。
 おにぎりの中に入れるんじゃないのか……混ぜご飯にするんだ……。

「そうそう! 混ぜご飯の方が味がガツンとくるからね! スポーツ男子にはピッタリさ!」

 隼斗君はしゃもじで豪快に混ぜ合わせていった。
 ご飯が豚キムチ色に染まっていったら、完成。
 いよいよ握り始めるみたいだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

転生妃は後宮学園でのんびりしたい~冷徹皇帝の胃袋掴んだら、なぜか溺愛ルート始まりました!?~

☆ほしい
児童書・童話
平凡な女子高生だった私・茉莉(まり)は、交通事故に遭い、目覚めると中華風異世界・彩雲国の後宮に住む“嫌われ者の妃”・麗霞(れいか)に転生していた! 麗霞は毒婦だと噂され、冷徹非情で有名な若き皇帝・暁からは見向きもされない最悪の状況。面倒な権力争いを避け、前世の知識を活かして、後宮の学園で美味しいお菓子でも作りのんびり過ごしたい…そう思っていたのに、気まぐれに献上した「プリン」が、甘いものに興味がないはずの皇帝の胃袋を掴んでしまった! 「…面白い。明日もこれを作れ」 それをきっかけに、なぜか暁がわからの好感度が急上昇! 嫉妬する他の妃たちからの嫌がらせも、持ち前の雑草魂と現代知識で次々解決! 平穏なスローライフを目指す、転生妃の爽快成り上がり後宮ファンタジー!

大人にナイショの秘密基地

湖ノ上茶屋
児童書・童話
ある日届いた不思議な封筒。それは、子ども専用ホテルの招待状だった。このことを大人にナイショにして、十時までに眠れば、そのホテルへ行けるという。ぼくは言われたとおりに寝てみた。すると、どういうわけか、本当にホテルについた!ぼくはチェックインしたときに渡された鍵――ピィピィや友だちと夜な夜な遊んでいるうちに、とんでもないことに巻き込まれたことに気づいて――!

マジカル・ミッション

碧月あめり
児童書・童話
 小学五年生の涼葉は千年以上も昔からの魔女の血を引く時風家の子孫。現代に万能な魔法を使える者はいないが、その名残で、時風の家に生まれた子どもたちはみんな十一歳になると必ず不思議な能力がひとつ宿る。 どんな能力が宿るかは人によってさまざまで、十一歳になってみなければわからない。 十一歳になった涼葉に宿った能力は、誰かが《落としたもの》の記憶が映像になって見えるというもの。 その能力で、涼葉はメガネで顔を隠した陰キャな転校生・花宮翼が不審な行動をするのを見てしまう。怪しく思った涼葉は、動物に関する能力を持った兄の櫂斗、近くにいるケガ人を察知できるいとこの美空、ウソを見抜くことができるいとこの天とともに花宮を探ることになる。

処理中です...