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四章 先生の恋にもおにぎりを ~胃袋を掴む、カルボナーラ風ベーコンエッグ~
⑪
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田尻先生も自信がついたことだし、そろそろ帰ろうかなと思っていた時、田尻先生の口から予想外な言葉が飛び出した。
「そういえばサヤちゃん、お母様からお話聞いたけど……」
「え、お話?」
「ええ。何でも、転校する予定なんだって?」
え……?
お母さん、田尻先生に話しちゃったの……?
空気が固まる。
「……先生、それ、どういうこと?」
隼斗君が小さい声で聞く。
まだその言葉の意味を、理解できていないみたいだ。
「お父様のお仕事の都合で、北海道の学校に転校してしまう可能性があるって話だけど……」
田尻先生の視線が私に注がれる。
私の話す番になった。
もうこれ以上……はぐらかすことはできない。
正直に話さないと……。
「……まだ決まったわけじゃないけど、たぶん、転校になっちゃう……と思う」
隼斗君はキッチンに立ちながら、俯いた。
肩が小刻みに震えている。
ゆっくりと口を開けて、いつものような元気な声と正反対な、重くて小さい声で話し出した。
「……六原さん、それ、本当?」
もう、嘘はつけない。
おそるおそる、弱々しい声で「うん」と返事した。
「……どうして黙ってたの?」
「だ、だって……せっかく日本一のおにぎりを作るって約束したのに、もう少ししたら転校しちゃうだなんて、言えなくて……」
隼斗君は何も言わなくなった。
隼斗君のお父さんは、重くなった空気を変えようと、明るい声で話に入ってくれる。
「なんだ……サヤちゃん転校しちゃうのか……それは寂しくなるなぁ」
隼斗君の背中に手を当てて、悲しいけど仕方ないといった、優しい表情を見せてくれた。
田尻先生もそれに続く。
「本当に、残念よ。でもサヤちゃんだったらどこに行っても大丈夫だと思うわ。きっとすぐに友達できるわよ」
「……あ、ありがとうございます」
二人の言葉はすごく嬉しいけど……悲しんでくれている隼斗君の顔を見ると、素直には喜べない。
隼斗君に「ごめんね」と頭を下げて言った。
すると隼斗君は肩をプルプルと震えさせながら、もう一度小さな声を出した。
「一緒に日本一のおにぎりを作るって、約束したのに……どうして……」
泣きそうな顔のまま、お店を飛び出す。
私が「隼斗君!」と叫んでも、隼斗君は止まってくれない。
隼斗君が飛び出していった後、少しシーンとする。
田尻先生の「私がこんな話したから……」という自分を責めるような言葉で、また話が始まった。
次はお父さんが困り顔で言葉にしてくれた。
「ごめんねサヤちゃん、隼斗のことは気にしないで。そのうち戻ってくるから」
「……私の方こそごめんなさい」
「サヤちゃんは何も悪くないよ。これはしょうがないことなんだ。隼斗もわかってるとは思うんだけど……受け入れられないんだろうな……」
田尻先生が「仲良しコンビだったもんね」と呟く。
ますます、転校したくなくなった。
ここまで隼斗君の想いが強いとは……。
でも、そうだよね。
日本一のおにぎりを作る約束、したもんね。
申し訳ない気持ちに包みこまれ、モヤモヤしながら自分の家に帰る。
ちょっと待ってみたけど、結局隼斗君はすぐに帰ってこなかった。
どうしよう……隼斗君を傷つけちゃった……。
明日謝ったら許してくれるかなぁ。
……私だって、転校したくない。
でも、隼斗君のお父さんが言っていたように、これはしょうがないこと。
あぁ……明日学校に行くの、気まずいな。
「そういえばサヤちゃん、お母様からお話聞いたけど……」
「え、お話?」
「ええ。何でも、転校する予定なんだって?」
え……?
お母さん、田尻先生に話しちゃったの……?
空気が固まる。
「……先生、それ、どういうこと?」
隼斗君が小さい声で聞く。
まだその言葉の意味を、理解できていないみたいだ。
「お父様のお仕事の都合で、北海道の学校に転校してしまう可能性があるって話だけど……」
田尻先生の視線が私に注がれる。
私の話す番になった。
もうこれ以上……はぐらかすことはできない。
正直に話さないと……。
「……まだ決まったわけじゃないけど、たぶん、転校になっちゃう……と思う」
隼斗君はキッチンに立ちながら、俯いた。
肩が小刻みに震えている。
ゆっくりと口を開けて、いつものような元気な声と正反対な、重くて小さい声で話し出した。
「……六原さん、それ、本当?」
もう、嘘はつけない。
おそるおそる、弱々しい声で「うん」と返事した。
「……どうして黙ってたの?」
「だ、だって……せっかく日本一のおにぎりを作るって約束したのに、もう少ししたら転校しちゃうだなんて、言えなくて……」
隼斗君は何も言わなくなった。
隼斗君のお父さんは、重くなった空気を変えようと、明るい声で話に入ってくれる。
「なんだ……サヤちゃん転校しちゃうのか……それは寂しくなるなぁ」
隼斗君の背中に手を当てて、悲しいけど仕方ないといった、優しい表情を見せてくれた。
田尻先生もそれに続く。
「本当に、残念よ。でもサヤちゃんだったらどこに行っても大丈夫だと思うわ。きっとすぐに友達できるわよ」
「……あ、ありがとうございます」
二人の言葉はすごく嬉しいけど……悲しんでくれている隼斗君の顔を見ると、素直には喜べない。
隼斗君に「ごめんね」と頭を下げて言った。
すると隼斗君は肩をプルプルと震えさせながら、もう一度小さな声を出した。
「一緒に日本一のおにぎりを作るって、約束したのに……どうして……」
泣きそうな顔のまま、お店を飛び出す。
私が「隼斗君!」と叫んでも、隼斗君は止まってくれない。
隼斗君が飛び出していった後、少しシーンとする。
田尻先生の「私がこんな話したから……」という自分を責めるような言葉で、また話が始まった。
次はお父さんが困り顔で言葉にしてくれた。
「ごめんねサヤちゃん、隼斗のことは気にしないで。そのうち戻ってくるから」
「……私の方こそごめんなさい」
「サヤちゃんは何も悪くないよ。これはしょうがないことなんだ。隼斗もわかってるとは思うんだけど……受け入れられないんだろうな……」
田尻先生が「仲良しコンビだったもんね」と呟く。
ますます、転校したくなくなった。
ここまで隼斗君の想いが強いとは……。
でも、そうだよね。
日本一のおにぎりを作る約束、したもんね。
申し訳ない気持ちに包みこまれ、モヤモヤしながら自分の家に帰る。
ちょっと待ってみたけど、結局隼斗君はすぐに帰ってこなかった。
どうしよう……隼斗君を傷つけちゃった……。
明日謝ったら許してくれるかなぁ。
……私だって、転校したくない。
でも、隼斗君のお父さんが言っていたように、これはしょうがないこと。
あぁ……明日学校に行くの、気まずいな。
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