愛して愛して壊れるくらい

塚口悠良

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3話

3-3

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 応えてはいけない。そんな言い回しで。これもきっとハルトにとっては残酷な言葉だ。分かってる。でも、こんな風にしか伝えられない。伝えてはいけない。申し訳なさと苦しさで胸が締め付けられる。ハルトは今、どんな顔をしているのか。そう思って隣を見ると、目を見開いて驚きに震えているのが分かってしまった。その顔があどけなくて、可愛らしくて、思わず笑みがこぼれた。
「っ、な、に……笑ってんだよ」
「すみません。だって、あんまりかわいい顔してるから」
「アンタなぁ……!」
 タックルみたいに抱きつかれて、そのままベッドに引き倒される。乱暴なそれもじゃれ合いにしかならなくてケラケラと笑っていると、真剣な表情をしたハルトに見つめられる。
「オレ、待てるよ」
「え?」
「アンタがマネージャーじゃなくなるときか、オレがアイドル辞めるときか、わかんねえけど。待てるよオレ」
「あ、なた……本気で?」
「本気に決まってんじゃん。ま、それはそれとしてセックスはしたいけど」
「それって別に待ててないだろ!」
 突拍子もないことを言うハルトに思わず大きな声で抗議をしたけれど、ハルトは全くもってふざけた様子が無い。
「今の今までこういう関係だったんだ。今更なんも変わんないだろ」
「だ、だとして! こんな関係長くは続けられないでしょう! バレたときのリスクが」
「リスクか。だったらいっそ公表しちゃう?」
「バカ言え! あなた曲がりなりにもアイドルなんですよ!?」
 本気で言っているのが分かるからこそ頭が痛い。どう説得すればいいのかも正直分からないのが困りどころだった。
「ね、マネージャー。アンタだってもうオレとのセックスなしで生活できないっしょ?」
「自惚れるな。私は別に……」
「へぇ?」
 にやついたハルトの手が後頭部に回ってぐっと引き寄せられる。抵抗する間もなく唇が重なって、ゆったりと合わせられる。
「ん……ふ……ぅ……」
 下唇を柔く食まれ、薄く口を開くと、舌が侵入してくる。絡め取るように動いた舌に合わせるので精一杯で、小さく息を乱す。
「なんか……あまい」
「んぅ……♡ ぅ……♡」
 ハルトとの初めてのキスに胸が高鳴って高揚する。ハルトの言う通り唾液が甘く感じて、もっと欲しくなっていってしまう。このままじゃ気持ちよさにかまけて流されてしまう。そんなことでいいのだろうか。
「な、また難しいこと考えてんだろ」
 内緒話をするみたいに潜めた声でそう言われ、ハルトに視線を合わせる。嬉しそうに笑んだ瞳にもうなんでも許してしまいそうだ。
「オレのことだけ考えてよ」
「そ、そういうわけには……」
「もう、仕方ないなぁ」
 楽しそうに笑ったハルトに顎をすくい上げられて、また唇が重なる。合わさった舌からくちゅりと水音が鳴って羞恥心を煽る。こすり合わせていた舌が離れ、歯列をなぞる。一本一本確かめるように動く舌にもどかしい気持ちになりながら唸ると吐息だけで笑ったハルトが口蓋をくすぐってくる。今までの柔らかな気持ちよさとは違う快感に思わず身体が跳ねてしまった。
「はふっ……♡ う……♡ ぅ……♡」
「ん……きもち……?」
「う……ん……♡ き、もち……♡」
 口の中がこんなにも気持ちいいなんて知らなかった。未知の快感を教え込まれて脳が溶けていく感覚がする。どうしよう。このまま流されていていいんだろうか。でも、もっと気持ちいいの、ほしい。
「付き合わなくていいからさ、オレときもちいことだけしよ? ケイスケ」
「う……ん……♡ する……♡」
 滅多に呼ばれない名前を呼ばれてしまったのが決め手になって、冷静な自分はどこかに消えてしまった。もしかしたらそんなもの最初からいなかったのかもしれないけれど。

 何度も何度もキスを重ねながらハルトの手が胸へ伸びる。女性と違ってなんの膨らみもないそこに手を這わせてくすぐるように触れられる。特段なにを感じるでもない胸への刺激に首をかしげていると、中心をゆるくつまんでくる。
「ここ、気持ちよくない?」
「え、あんまり……?」
 小さな突起をつまんでこりこりと刺激されるけれど、少しくすぐったいくらいで快感とは結びつかない。素直にそれを伝えると、ハルトは口角を上げて頷いた。何をするつもりなのかと不思議に思っていると、ローションを突然胸にぶちまけてきた。
「うわっ! ちょ、何するんです!?」
「あーごめんごめん」
 全く悪いと思っていなさそうな言葉に眉尻を吊り上げるけれど、滑りがよくなった胸元への感覚に全ての意識を持っていかれることになった。
「ひっ……!」
 冷たさで勃ち上がった乳首をローションの滑りを借りて刺激され、先程と全然違う感覚に苛まれる。少しくすぐったいくらいだったのがどうしてか緩い快感を連れてきていて困惑してしまう。
「え、な……なんで……!」
「あーあーこれで気持ちよくなるんだ? なんかほんと心配になるわ」
 ぬるぬる、こりこり、と刺激され、もどかしい快感に身を捩る。気持ちいい、けれど、足りない。もっと激しい刺激を知ってしまっているからこそ、こんなものでは満足できなくなってしまっていた。もっと強い刺激が欲しくて太ももをこすり合わせていると、それを目ざとく見咎められてしまう。
「してほしいこと、あるなら言いなよ。もじもじしてないでさ」
 合わせた脚を開かれ、力を込めてもどかしさを誤魔化すことすらできなくなってしまった。ハルトは未だに楽しそうに人の胸を弄り回しているし、すぐに飽きて触ってくれるなんてことは望めそうにもない。
「……っ、足らない、から……、下も、触って」
「下? 下って?」
「っ、ハルト……!」
 わざとらしくすっとぼけられて思わず泣きが入る。恥ずかしいことを言わされるのはいつまで経ってもなれない。
「おねがい……! いじわる、しないで……!」
「あーもう……マジで可愛いね」
 唇に一つ軽いキスを落とされ、期待で勃ち上がった中心に触れられる。待ちに待った快感に腰を揺らした。
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