バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美

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夏休みの予定

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 家へと帰宅した僕は、自室のベッドに倒れ込む。
 天井を見上げる。
 水野さんに、あぁ言われたけど……。
 自分の気持ちに、嘘はつきたくない。
 僕が好きなのは――
 白瀬さんだ。
 それは、変わらない。
 そんなことを思っていると、スマホがヴヴッと鳴る。
 携帯の画面を見ると――
 白瀬さんからのLINEだった。

 【LINE】

 白瀬『有馬っち! 明日もテスト頑張ろ!』

 メッセージと一緒に、スタンプ。
 ガッツポーズしているスズミのスタンプ。
 僕は、少し笑って――

 有馬『そうですね! 早く終わらせて、夏休み楽しみましょう!』

 返信する。
 すぐに、既読がつく。

 白瀬『うん! 楽しみだね!』

 何気ない、やり取り。
 でも――
 嬉しい。
 僕は、ベッドから起き上がる。
 勉強机に座って、参考書を出す。
 今学期の期末テストで、満足いく結果を出して――
 夏休みを、楽しむぞ。
 脳裏に過ぎるのは、白瀬さんの微笑む顔。
 司くんたちみんなの姿。
 思い描く、理想の夏休み。
 その為にも――
 僕は、テストに全力を出す。

 ※

「疲れたー!」

 背伸びをして、須藤さんが言った。
 全教科のテストが全部終わり、僕たちは須藤さんの周りに集まっていた。
 解放感。
 終わった、という安堵。
 でも――
 まだ、結果は出てない。
 ドキドキと、ワクワク。
 そんな気持ちが、混ざり合っている。

「ねぇ、司~。テストも終わったことだしさ、みんなで祝勝会やんなーい?」

 須藤さんは、おっとりとした様子で言う。
 すると、それを聞いていた白瀬さんが――

「いいね! それ!」

 と言う。
 白瀬さんがそう言ったのを皮切りに、その場にいた誰もが須藤さんの言葉に賛同した。

「僕も賛成!」

 光くんが、手を上げる。

「良いな、祝勝会」

 海斗くんも、頷く。
 
「有馬、夏休み始まったら、俺らでBBQやるけど、来る?」 

 司くんが、そう言う。
 BBQ……。
 バーベキュー。
 みんなで、肉を焼いて食べる。
 それって――
 すごく、楽しそう。
 すると、白瀬さんが僕の元に歩み寄る。

「ねぇ、有馬っち。BBQついでに、プールにも入るから――」

 白瀬さんが、ニヤリと笑う。

「私の水着、見れるかもよ?!」

「――ッ!?」

 な、何言ってるんだ、この人!?
 み、水着!?
 その時、僕の頭に浮かぶのは――
 須藤さん、有村さん、白瀬さんの3人の水着姿。
 ビキニ。
 いや、ワンピース?
 どっちだろう。
 いや、そもそも――
 想像しちゃダメだ!
 でも――

「――行く」

 気づいたら、答えていた。

「有馬、アンタ、今さっき凄くキモイ顔してたよ」

 有村さんの、敵意に近い視線が僕を見つめる。
 か、顔に出てたのか!?
 まさか、鼻の下が伸びてたり!?
 や、やばい。
 僕は、慌てて顔を手で覆う。

「まぁ、BBQの話も詳しくしたいから、とりまファミレスでも行こー」

 須藤さんが、そう言う。
 みんなは、うなづいた。

「おう、行くか」

 司くんが、立ち上がる。

「有馬っちも来るよね?」

 白瀬さんが、僕を見る。

「は、はい……」

 僕は、まだ顔が熱いまま――
 答えた。

 ※

 ファミレスに行くのは、分かっていた……。
 でも――
 
「どうして、僕のバイト先になるんですか?」

 僕は、ため息をつく。
 それを聞いた白瀬さんが、ニヤケ顔をする。

「なに? 見られたくないものでもあるのー?」

 エッチな本を見つける前の母親か!!
 そんなツッコミを思いつつ、僕は再びため息をついた。

「お待たせいたしました。こちら、お冷です」

 聞き馴染みのある声とともに、テーブルに置かれる氷の入った水。
 ふと、視線を上げると――
 その店員さんは、水野さんだった。

「蓮くん、楽しそうだね!」

 水野さんが、俯いている僕に囁く。
 すると、隣にいた光くんが驚きながら――

「有馬の知り合いなんですか?」

「はい! 知り合いというか、マイベストフレンド! みたいな?」

 水野さんが、満面の笑みで言う。
 それを聞いていた――
 特に、有村さんと司くん。
 そして、白瀬さんが――
 僕を、問いつめる。

「有馬、彼女か!? 俺、聞いてないぞ!?」

 司くんが、興奮気味に言う。

「有馬、アンタ、私達以外にも女友達いたんだ……」

 有村さんが、少し冷たい目で見る。

「有馬っち!?」

 白瀬さんが、驚いた顔をしている。
 ま、待って!
 これは誤解だ!

「ちょっと、水野さん!?」

 僕が彼女に助けを求める視線と声を上げるが――
 彼女は笑みを崩さず――

「では、ごゆっくり!」

 とだけ言い残して、行った。
 あぁ……。
 少しだけ、水野さんに輪を掻き乱され――
 気まずい沈黙。
 そんな中、海斗くんが言葉を発する。

「それで、BBQって、どこでやるんだっけ?」

 話を戻してくれた。
 ありがとう、海斗くん。
 その問いに、須藤さんはスマホ画面を見せながら話し出す。

「フッフッフッ! それは、ココだよ!」

 彼女が見せたのは――
 BBQが出来る施設と、そのすぐ隣にプールや温泉施設がある場所だった。
 おぉ……。
 すごく、良さそう。
 白瀬さんが言ってた水着は、これの事か……。
 また、彼女たちの水着姿が脳裏をチラつきながらも――
 僕は、その写真を見て――
 
「お金とか、お肉は、どうするんですか?」

 現実的な質問をする。

「あ! それなら、決めてあるよ!」

 須藤さんが、そう言って――
 有村さんと白瀬さんの後ろに立って――

「女子は、食料調達でお金を出して! 男子は、割り勘でお金を出す!」

 なるほど。
 ちゃんと、計画してる。
 須藤さん、意外としっかりしてる。
 そんな事を思っていると――

「へぇ~、あそこのプール」

 僕のすぐ隣に、興味津々そうな水野さんがいた。

「水野さん? 貴方は、バイト中では?」

「残念、今、私は休憩中でーす」

 僕のツッコミにカウンターをして――
 水野さんが、他の席から椅子を持ってきて、白瀬さんの隣に座る。
 ちょっと!?
 なんで座るの!?

「えっと、有馬っちのベストフレンドさんも、気になるのー?」

 須藤さんが、聞く。
 すると、水野さんは微笑みながら――

「私も、行ってみたい!」

 そう言って――

「――あ、えと! 私は、水野愛莉! あなた達とは違う高校だけど、蓮くんとは小中同じ学校です! よろしくお願いします!」

 水野さんの自己紹介が入った瞬間――
 再び、僕の方に特に女子からの視線が集まる。
 じっと、見られている。
 怖い。

「有馬~、アンタ、やっぱり……」

 有村さんが、言いかける。

「うん、これは……」

 須藤さんも、頷く。

「え!? 奏!? 香澄!?」

 白瀬さんは、困惑している。
 有村さんと須藤さんは、顔を見合わせる。
 そして――

「「彼女でしょ!?」」

 ハモった。
 ダメだ。
 話が、ややこしくなってきた。

「ち、違います! 彼女じゃないです!」

 僕は、必死に否定する。

「じゃあ、なんなの?」

 有村さんが、詰め寄る。

「ともだち……です……」

 僕は、小さく答える。

「友達ねぇ……」

 有村さんが、疑っている。

「本当です!」

「まぁまぁ、有馬がそう言ってるんだし、信じてあげようよ」

 海斗くんが、フォローしてくれる。
 ありがとう、海斗くん。
 そして――
 ふと、白瀬さんを見ると――
 彼女は、水野さんをじっと見ている。
 どこか、真剣な顔。
 白瀬さん……?

「ねぇ、水野さん」

 白瀬さんが、口を開く。

「はい?」

 水野さんが、白瀬さんを見る。

「有馬っちと、どういう関係なの?」

 白瀬さんの声が、少し低い。
 え……?
 なんだか、雰囲気が――

「関係? 友達ですよ」

 水野さんが、笑顔で答える。

「……そっか」

 白瀬さんが、小さく呟く。
 そして――
 また、スマホを見る。
 なんだろう。
 白瀬さんの様子が、少し変だ。
 気になる。

「じゃあ、BBQの日程、決めよっか」

 須藤さんが、明るく言う。
 そして――
 みんなで、夏休みの予定を話し合った。
 楽しい、話し合い。
 でも――
 僕の心は、少しモヤモヤしていた。
 白瀬さんの、あの表情。
 あれは――
 なんだったんだろう。
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