【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい

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7.思い遣り

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しばらくしてラディアスが帰宅した。
ミルゼは急いで出迎えると、ラディアスは、皇都で流行りのスイーツ店の箱を持っていた。

「お帰りなさいませ、ラディアス様。」

「ミルゼ、ただいま。お土産だよ。母上に庭園を案内するように言われたから、ガゼボでお茶にしないか?」

「ありがとうございます。嬉しいです。もし良ければ、お義母様もお誘いしませんか?」

ラディアスは意外というような顔をしたが、即座に断った。

「母上は出掛けられたよ。それに、母上と三人でお茶とか勘弁してくれよ。それでなくても…」

ラディアスは言葉を濁し、やれやれといった顔をした。
そんなラディアスを見ながら、お土産を買ってきてくれたラディアスの思い遣りに感謝した。
それから二人はエマにお茶を準備させ、ガゼボでのんびりと話をした。

「ラディアス様、このブルーベリーや無花果のタルト、美味しいです!食べ過ぎてしまいそう…」

嬉しさと困惑を交互に表情に出すミルゼが可愛らしくて、ラディアスは癒された。

「好きなだけ食べろ。ミルゼが美味しそうに食べてくれるなら、また買って来てやる。一緒にスイーツ店に行くのもいいな!ミルゼは痩せ過ぎだ。………胸以外は……」

「ラディアス様!何を…」

閨事を思い出して、ラディアスが顔を赤らめた。

「すまない…」

釣られて赤くなったミルゼは、慌てて話題を変えた。

「き、今日は、と、とても、良いお天気ですね。薔薇が綺麗。」

「そ、そうだな。この薔薇は我が家の自慢なんだ。他家の薔薇よりも色合いが美しいと言われるしな。」

「確かに!赤と表現するには深みがあって緋色といった方が似合うかもしれませんね。」

「え…赤は赤じゃないのか…?って母上に言ったら『ラディアスには分からないわよ』って言われそうだな。ははっ。」

「ふふ、ラディアス様ったら。」

ラディアスは落ち着きを取り戻し、少し照れたように笑った。

「そう言えば、母上と仲良く話していたようだが、大丈夫だったか?なかなか厳しい人だから、ちょっと心配したのだが。」

「大奥様とお呼びしたら叱られました。」

「何!?ミルゼを叱っただと?」

ラディアスは椅子から立ち上がらんばかりに一瞬険しい顔をした。

「あっ、違うのです。『おかあさま』と呼びなさいって。嬉しかったです。優しいお顔で仰ってくださって…」

「なぁんだ、ほっとした。てっきりガミガミ言われたかと思ったよ。まあ、あれでも理不尽なことは言わない人だから、何があったら相談するといい。」

ラディアスは、アザリア夫人を実は尊敬し愛しているのだなと、その表情から察した。

「はい、そうさせていただきます。ドレスについても、プレゼントしたいと仰ってくださって…私は、あまりドレスを持っていないので、明日ラディアス様と出掛けるようにと…ラディアス様のご予定も伺わず、申し訳ありません。」

「大丈夫だよ。俺もタキシードを作りたいと思っていたし、ミルゼのドレスと色調を合わせたドレスを作ろうか。」

「お義母様は、ラディアス様の色を入れるようにと…」

「誰の妻か、はっきり示すドレスやアクセサリーを用意しよう。デザインはミルゼの好きな物を選んでくれ。妻の為なら金に糸目は付けない。」

ラディアスは本気のようだが、ミルゼのドレスはリリスには着られない。
せめてアクセサリーならば、何れリリスも使える筈とミルゼは思った。

(無駄になるような出費は、いくら公爵家でも控えなければ。特に私しか使えないような物は…)

ラディアスもアザリア夫人も二年の話をしない。
きっと二人はミルゼを思い遣ってくれているのだと感じている。
だからこそ、ミルゼは迷惑を掛けないように振る舞わねばと思うのだった。
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