【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい

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10.伝わる想い

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「ラディアス…あなた…まさか…」

「母上こそ…何も…?」

アザリア夫人とラディアスは、お互いに顔を見合わせて呆然としていた。

「あ、あの…」

その様子をミルゼは不安げに眺めている。

「ミルゼ、すまない…」

「ラディアス様、いいのです。二年間はきちんと公爵家の人間として、精一杯頑張りますから。」

顔面蒼白で謝るラディアスに、ミルゼはやっぱりと察し、胸が痛んだ。
今は受け入れるしかないとミルゼは思った。
しかし、その瞬間、ラディアスとアザリア夫人が叫んだ。

「「違うっっっ!!!」」

その声の大きさに、ミルゼは一緒何が起こっているのか、理解出来なかった。
ラディアスもアザリア夫人も、必死な顔をしている。

「えっ!?」

「ミルゼ、違うんだ!君は、この先もずっと俺の妻だ。俺は、ミルゼを、君を望んで結婚したんだ!!」

「そうよ、ミルゼ。リリスなんて望んでないわ。ミルゼをこの家の子にしたかったのよ!先代からの意向で、あの時はチェルニエがごねるから、仕方なくラディアスとリリスを婚約させたふうにしたけど、私達はミルゼを最初から望んでいたのよ!!」

ミルゼは二人の勢いと事実に驚き、眩暈がして倒れ込んでしまった。
自分が望まれて結婚したとは、露ほどにも思わないミルゼは、真逆のことを言われ、思考が停止したのだ。

それを見たラディアスが、ミルゼを抱きかかえ、アザリア夫人に言った。

「母上、この話はミルゼが落ち着いたら話しましょう。俺も母上も、お互いが話しているだろうと思い込んでいたようです。」

「そうね…確かに…今はミルゼを休ませましょう。ラディアス、頼んだわよ。」

ラディアスは宝物を運ぶようにミルゼを抱いて、寝室に戻った。
ミルゼをベッドに寝かせると、ぼんやりした目でラディアスを見ている。

「ミルゼ、すまない。肝心な話を全くしていなかったな。」

「私はずっとラディアス様のお傍に居てもいいのですか…?」

「ああ、もちろんだ。俺はもう、ミルゼの居ない生活なんて考えられない。」

「私、ラディアス様に愛していますと言っていいのですか…?」

ラディアスは驚きと喜びを隠せず、真っ赤な顔でミルゼを見つめた。

「ミルゼは…俺を…愛して…る…?」

「はい、愛しています。例え、公爵夫人として、リリスよりもマシだからと思われていて結婚してくださったとしても。以前からパーティのエスコートをしてくださり、優しくてあたたかくて、ラディアス様が好きでした。そして、公爵家に来て、ラディアス様のおかげで、私は毎日幸せです。ラディアス様を愛しています。」

こんなに話すミルゼを初めて見て、しかも自分を愛していると言うミルゼに、ラディアスは泣きそうになったが我慢した。
そして、ラディアスはミルゼを強く抱き締めて、きっぱり言った。

「公爵夫人としてのミルゼを求めているのではないよ。ミルゼだから居て欲しいんだ。俺はミルゼを愛しているから妻にしたんだ。」

ラディアスがミルゼの顔を覗き込むと、ミルゼは目に涙を浮かべ、体も微かに震えている。

「ラディアス様が…私を…愛してる…?」

「ああ、愛しているよ。誰よりも、君だけを愛している。」

「初めて聞きました…」

ラディアスは、はっとして顔が青ざめた。

「俺は自分の気持ちすら、伝えていなかったな…すまない!本当にすまない!!母上からも事情を聞いていて、ミルゼに俺の気持ちが伝わっていると思い込んでいた。」

「嬉しい…ラディアス様…私、嬉しくて幸せです…」

泣き笑いのミルゼが愛おしくて、ラディアスはミルゼの涙を唇で拭った。
あたたかくて、しょっぱくて、でも愛おしかった。

「愛してる。これからは、毎日伝えるよ。ミルゼ、愛してる。」

「ラディアス様、私も愛しています。」

ラディアスはミルゼに優しく口付け、指先は耳朶を触った。
くすぐったいと身を捩るミルゼが可愛くて、体が昂るのを感じた。
でも、今は己の欲望ではなく、ミルゼを安心させることの方が重要だ。
順を追って話そうとラディアスは思った。

「ミルゼ、もう体は大丈夫?」

「はい、落ち着きました。さっきはごめんなさい。」

「なら、今から話をしていいか?その方がミルゼも心が落ち着くだろう?」

耳まで熱くなる程に赤面したミルゼは、こくりと頷いた。
自分が知らなかったこと、不安だったことをラディアスの口から聞きたいと、ミルゼは切に願った。
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