【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい

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17.義父の帰宅

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公爵家主催のパーティの話が出てから、ラディアスとミルゼは精力的に準備をしていた。
食材や飲み物、ちょっとした記念品に至るまで、今までの資料を参考に二人で選定した。

そんな時、突然ハディウスが帰宅した。

「アザリア、久しぶり!」

玄関を入ると、すぐにハディウスは、真っ直ぐアザリア夫人に近付いて、強く抱き締め口付けをした。
角度を変えた何度目かの口付けの後、ジタバタしていたアザリア夫人は、やっとハディウスを押し除けて言った。

「ちょっ、ハディ!ラディアスとミルゼが見ているじゃない。おやめなさい。」

「何だよぅ、せっかく久しぶりに愛しい妻に会えたのに!アザリア、愛してるよ!!」

「何だか…ラディアス様、そっくり…」

小さく呟いたミルゼの言葉に、アザリア夫人とラディアスは赤面し、エマは背中を向けてぷるぷるしていた。
ハディウス本人は、けろっとして笑っている。

「ミルゼだね?結婚式では、すぐに失礼してしまってすまない。急ぎの仕事があってね。その代わりと言っちゃ何だが、土産をたくさん買ってきたからな!」

ハディウスは、豪快に笑ってミルゼにハグをしてきた。
ミルゼは、ラディアス以外の男性とハグなどしたことがないので、あわあわしていたら、ラディアスが引き剥がした。

「父上、俺の妻ですから!」

ガシッとラディアスに抱き締められ、ミルゼは呆然としていた。

「ほらほら、ミルゼがびっくりしてるじゃない。エマ、応接室にお茶を用意してもらえるかしら。落ち着いて話しましょう。」

アザリア夫人のひと声で、皆、大人しく応接室に移動し、ソファに座る。
そこでミルゼは正気に戻り、ハディウスに挨拶をした。

「先程は申し訳ありません。お帰りなさいませ、お義父様。」

「いやー、こちらこそ、すまない。ラディアスの想いがやっと叶って来てくれた嫁さんに失礼だったな。驚かせて、すまん。ミルゼ、どうだ?公爵家は。」

「はい、皆さん良くしてくださって、大変ありがたいです。」

「ラディアスは優しくしてるか?」

「とっても優しくしてくださっています。」

ラディアスが隣で、ふふふんと得意げな顔したので、ミルゼは微笑ましく思った。

「それで、ハディ、ちょうど皆揃っているから、セルジオ侯爵のお話をしてもらえる?ミルゼもいいかしら?」

ミルゼは一瞬ビクッとなったが、ラディアスが腰を抱いて落ち着かせると、ハディウスをじっと見つめた。

「まず、セルジオは元気だ。そして、今までのミルゼへの接し方や、結婚式に顔だけ出して、話せなかったことを申し訳ないと言っていた。どうしてもチェルニエが居る場に居たくなかったそうだ。その事情は知ってるか?ミルゼ…」

「はい、お義母様やラディアス様に伺いました。父の事情もある程度は理解したつもりです。」

「そうか。ミルゼ、つらかったな…過ぎた時は戻せないが、これから先を正すことは出来る。その為に、我が家は全面的に協力する。」

「ありがとうございます。よろしくお願い致します。」

ミルゼは、皆が真剣に向き合ってくれていることに感謝した。

「それで、ハディ。リリスとレオポルトは誰の子なの?」

核心を突くアザリア夫人の質問に、ハディウスは苦虫を潰したような顔をした。

「セルジオの子ではない。二人ともラギラス商会のレオナルド・ラギラスの子だ。セルジオはパーティで薬を盛られ、リリスを身籠ったと言われ、侯爵家に帰宅した時もまた同じ薬を盛られ、レオポルトはその時の子だと…二回も同じ手に引っ掛かり、一時期は自害まで考えていたよ。」

「ハディ、その薬というのは媚薬?それとも睡眠薬?」

「強い睡眠薬だ。丸一日は目が覚めない。だから、正直子どもが作れる状態ではないだろう。簡単に言えば、勃たないって話だ。」

ミルゼが顔を赤らめると、アザリア夫人がハディウスを叱る。

「ハディ!そこまで言わなくていいから。」

「すまない。でも、実際のところ、そうなんだから…」

ラディアスはミルゼをよしよしと撫でて、ハディウスとアザリア夫人の話を聞いている。

「セルジオは、チェルニエとレオナルド、それにラギラス商会相手に、裁判を起こそうと思っている。証拠や証言は揃って、裁判所に提出するだけだ。あとラギラス商会は違法な薬物の取引をしている証拠も押さえた。ミルゼを我が家で保護出来るまで、セルジオは待っていたんだ。」

「父が…?」

「そうだ。ミルゼを放置して酷い父親だと思っただろうが、セルジオなりにミルゼの安全を考えていたんだよ。だから、侯爵家に居た時、身体的な虐待は無かっただろう?家庭教師も一流の講師を付けた。そして、ラディアスとリリスの婚約という口約束で、侯爵家と我が家の行き来を可能にした。それは全てミルゼの為だったんだよ。」

「そんなに前から…?」

「ああ、十年以上掛かった。遅くなってすまない。でも、なかなか尻尾を出さなくてな…ミルゼとラディアスの結婚で焦ったチェルニエが、やっと尻尾を出したんだ。セルジオに使った薬をラディアスに使って、リリスと既成事実を作るつもりだったらしい。」

アザリアの顔付きが一変し、怒りに震えている。
ミルゼは青ざめ、ラディアスも拳を握りしめた。

「ハディ、裁判は勝てるんでしょうね?負けたら、影に始末させるわよ?」

「もちろん勝つさ。」

ハディウスは、ニヤリと笑った。
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