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18.作戦会議と護衛騎士
しおりを挟むハディウスの帰宅により、事態が大きく動くことになり、今後の展開を予測し、作戦を練ることになった。
「まず、公爵家主催のパーティは、予定通り行う。招待客は、高位貴族と我が家の事業関連の者達だ。毎年持ち回りで行うパーティというだけでなく、今回はラディアスとミルゼを次期公爵夫妻として、事業家へお披露目も兼ねる。」
「ハディ、まさかそこに、チェルニエとラギラス商会のレオナルドを呼ぶの?」
ハディウスは頷き、話を続ける。
「ああ。二人は必ずパーティで接触する。そこを押さえる。既に、我が家の影達がラギラス商会とフィレンツェ侯爵家に潜入しているんだよ。一人は見習い会計士、もう一人はリリスの侍女としてな。ミルゼが侯爵家を出てから、チェルニエとレオナルドは油断したのか、侯爵家では好き勝手やってるようだ。」
ミルゼは悔しそうに俯くが、ラディアスはミルゼの背中を撫でて、大丈夫だと頷く。
「そして、パーティには、セルジオも極秘に参加する。セルジオはギリギリまで、ミルゼに無関心な父親を演じて、チェルニエを欺くつもりだ。問題は、ラディアスに薬を盛ろうとしているタイミングだ。恐らくパーティの中盤以降、主催者としての挨拶回りがひと通り済んでからだろう。ラディアスを囮にして捕まえるのが一番確実なんだが…」
その瞬間、ミルゼが立ち上がって叫んだ。
「そんなこといけません!ラディアス様を囮になんて絶対にダメです!!」
アザリアもラディアスも、ミルゼが叫ぶ姿など見たことがないので驚いている。
そして、ハディウスは、ふっと笑った。
「ミルゼ、ラディアスの妻になってくれて、ありがとうな。そんなにラディアスが大切が?」
「あ、当たり前じゃないですか!ラディアス様に何かあったら、私…わた、し…」
泣き出すミルゼを愛おしく抱き締めたラディアスは、覚悟を決めた。
「父上、俺が囮になります。リリスの誘惑に乗ったように見せ掛けて。もうこれで終わりにしましょう。」
「ラディアス様!!」
必死に止めるミルゼの瞳を、ラディアスは真っ直ぐ見た。
「大丈夫だ、ミルゼ。公爵家総出でチェルニエ達を嵌めてやる。父上とセルジオ侯爵がここまでしてくれたんだぞ?仕上げは俺がやるよ。」
「でも!ラディアス様が!!」
涙が溢れるミルゼをアザリア夫人が立ち上がって抱き締める。
「ミルゼ、ラディアスを、ハディを、セルジオ侯爵を信じましょう。そして、ミルゼの過去は一掃し、皆で幸せになりましょうよ。ねっ?ミルゼ…」
「おかあさま…ううっ…皆さん、何で、そこまで…うぅ…」
小さく蹲るミルゼに、その場に居た全員が言った。
「「「家族だから!」」」
ぴったり揃った声に、ハディウスもアザリア夫人もラディアスも笑い出す。
その明るい笑い声にミルゼも微笑む。
泣いていたのは、部屋の隅に居たエマだけだった。
そして、エマも決意し、ハディウスに声を掛ける。
「大旦那様!私、エマは剣術の心得がございます。パーティの間、専属侍女ではなく、専属護衛としてミルゼ奥様をお守りしてもよろしいでしょうか?差し出がましいということは心得ております。しかし、ミルゼ奥様をお守りすれば、ラディアス旦那様が動きやすくなると思います。」
「おお、そうだったな、エマ。今では、すっかり侍女だが、そなたの剣術はなかなかのものだった。跳ねっ返りの女騎士が今では侍女だった。あははは!いいぞ、是非ともそなたに任せよう。」
「ありがとうございます。」
エマはミルゼの前に跪いた。
「ミルゼ奥様、私、エマは騎士として奥様を命を賭けてお守りすることを誓います。どうかお傍に居ることをお許しください。」
「エ、マ…?」
「大旦那様に拾っていただいたご恩を是非とも返させてください!」
ミルゼはエマを抱き締めて、また泣いた。
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